褒賞金
アトラさんに一昨日のことを一通り説明し、防音魔法を解除した後、十分ほど経ってからカルミナとイセリ―は帰ってきた。かれこれ二十分から三十分程いなかったが、ボクとアトラさんは前もって何も聞かないでおくと決めていたため、その後は夕食を食べ、
翌日以降も、同じような日々が続いた。午前は座学、午後は鍛錬を行い、ぶっ倒れている三人を
夜は夕食を食べ、眠くなるまで話をしてから眠りにつく。一つ違うとすれば、カルミナとイセリ―が途中でいなくなることがないくらいだ。やはり、ゴブリンに関係があるのだろう。だが、まだそれについて話してくれる様子はなさそうだ。もう少し好感度を上げる必要があるのかもしれない。
ゴブリンの
また、ピクシルから色々と話を聞くことも出来た。ここでそれらを軽く
まずは魔力についてだ。魔力は量子に似た物質で、魔力器官を通してエネルギーを与えると、それを振動数と結合という二つの要素に振り分け、その組み合わせで魔法として発現する現象が決まるそうだ。
妖精と精霊の違いはその
次に聞いたのは、ピクシルの過去だ。四千年以上生きていると言っていたし、面白そうだと思ったのが理由だ。追い出された理由としては、魔法の練習中に誤って
興味が湧いた人の中に転移者がいたそうだが、その人について聞いても、少しの間黙って考え込んだ
また、この世界の文明レベルも聞いた。世界中を旅していたそうなので、その中で世界の文明レベルがどのくらいか見ているだろうから、教えてもらおうと思ってのことだ。
結論から言うと、少なくとも
その次の日は、プロティアの索敵魔法について聞いた。ピクシルが言うには、プロティアの索敵は
この世界にはいくつかの索敵魔法があるそうだが、
もう一つは、透視索敵だ。文字通り、周囲の物体を透 《とう》
だが、プロティアの索敵はこのどちらにも属さない。
プロティアの索敵は魔力振動と呼ばれる技術の応用らしい。しかも、使える人はかなり限られている。
魔力振動というのは、自然魔力――文字通り、自然に存在する魔力全体――に
そんな体質エロゲの世界でもない限り役に立たねぇだろ、と思っていた超敏感だったが、まさかの
最後に、時空魔法について聞いた。主に聞いたのは、
そうこうしているうちに、一週間が経過した。ボクは今、校長室に呼び出されている。
何かやらかしたかとビクビクしながら向かうと、そこには校長であるBランク冒険者のイレディルと領主のフォギプトスが談話していた。予想外の組み合わせに一瞬思考が停止したが、領主がいるということで魔災についてだと推測がついた。
「来たか、プロティア」
ノックして「失礼します」と声をかけて入ったにも
「すまない、いきなり呼び出してしまい」
「い、いえ……昼休憩なので、特に問題はありませんが」
昼食を終えてすぐ、ボクを探していたフルドムに行くように言われたのだ。いつもは昼休憩中は軽く運動をして、
「今日呼び出したのは他でもない。君への
「わ、わざわざ領主様がですか?」
てっきり配下の騎士やメイドが届けに来ると思っていたから、ついそう質問してしまった。気付いた時にはもう遅い。というか、何回同じミスをするんだボクは。
「なに、今回はイレディルとの話も
ついでというわけか。そういう事なら、変に気にする必要も無いだろう。もし、領主がまた出てくるようなやらかしをしてしまったとしたら、と考えてしまったが、
「これが今回の私とギルドからの褒賞金、及び私からの謝礼金、額は二十五万エイグだ。褒賞金が私とギルドそれぞれ十万、謝礼金が五万だ」
エイグ、というのは、この国でのお金の単位だ。円と比較するとどのくらいか、と言われると分からないが。そうだ、こういう時のピクシルじゃないか。
――ヘイ、ピクシル。パンって何エイグ?
『何かしら、ちょっと
つまり、一エイグ十円といったところか。てことは、今回もらったのは二十五万かける十で、二百五十万円か。え、冒険者ってそんなにもらえるものなのか?
予想外の金額に、疑問が
そんな考察をしていると、フォギプトスが上着の内側に右手を入れて、
「あ、ありがとうございます」
「ああ」
受け取ったお金をどうしようかと迷うが、スカートのポケットには入らないし、仕方なくそのまま持っておく。
もう用済みかな、と思い部屋を後にしようと一歩
「もう一つ、お前に話しておくことがある」
「え、あ、はい、なんでしょう!?」
もう一歩下がろうとした足を慌てて戻し、背筋を伸ばして次の言葉を待つ。
「今後、先日のような魔災が起こらないとも限らない。出来る限り我が騎士達で対処はするが、抑えられない場合もあるだろう。そうなった時は、冒険者ギルドと学園に援助を
「ああ、なるほど……そういうことなら、喜んで」
プロティアの「みんなを助けて」という願いを叶えるためにも、この話はありがたいことこの上ない。それに、実戦は実力を伸ばすのにもってこいの場所だし。断る理由はない。
「そうか、助かる。話は済んだ、行ってくれて構わない」
「あ、はい、失礼しました」
一礼してから、校長室を出て静かに扉を閉める。こっそり聞き耳を立ててみると、他の生徒の
昼休みの終了時間も差し
そんなことを考えながら、修練場に着いた。既にほとんどの生徒が集まっており、アトラさん達もひとまとまりになって準備運動をしていた。三人の姿を見て、身近な
「プロティア、遅かったね~。いつも一番なのに」
「うん、ちょっと校長室に呼ばれてたんだよ」
「えぇ!? 何やらかしたの!?」
「
「先日の件の褒賞金でしょう? 学園の前に我が家の馬車が停まっていますので」
そう言って、アトラさんが校門に目をやる。
「あれ領主様のなんですか!?」
カルミナが若干
「そういえばプロティア、褒賞金っていくらくらいもらったの?」
怯えはどこに行ったのやら、両手を
「二十五万エイグだよ」
「二十五万!?」
カルミナが本来なら修練場全体に余裕で響き渡っているだろう声で、ボクの返答を繰り返す。イセリ―が横から小突いたことで、ハッとやらかしたことを気付くが、大丈夫と
「その、本当なのですか?」
「はい。ギルドから十万、領主様から十五万頂きました」
「
アトラさんから見ても、奮発しているようだ。ボクとしてはありがたいが、財政的には大丈夫なのか心配になる。多分大丈夫だと信じよう。
「はい、この話はここまで。先生も来たし」
防音魔法を解除する。それとほぼ同時に、フルドムが集合の号令をかけた。さあ、今日も地獄の鍛錬が始まる。
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