冒険者学園1
翌朝、ボクとアトラさんはフェルメウス家の馬車に乗って学園へと戻った。あの後も色々と
学園に戻って最初の仕事は、
「何事も無かったから良かったものの……二人は学園内でも期待されている。あまり勝手なことをして、周りに迷惑をかけないように気を付けてくれ」
「「はい」」
フルドムの部屋を後にし、
「お帰りなさい」
「ただいま帰りましたわ。イセリーさん、午後の鍛錬が終わった後で、昨日の授業内容を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい、喜んで」
イセリーはアトラさんとの交流に慣れてきたのか、入学式の日の緊張は鳴りを
「プロティアさん、私達も準備をしておきましょう」
「あ、はい、そですね」
ボクは自分のロッカーの前に移動し、扉を開ける。赤や白が多いロッカーの中に黒の
「今日の授業は何だったかしら」
アトラさんが
「今日は魔物、魔法、植物です」
背後でイセリーが答える。ちゃんと覚えているあたり、印象通り真面目さが
表紙には科目の名前が書かれているだけで、それ以外のものは何も無い。背表紙や裏表紙も同様だ。
この眠気の中、座学なんて耐えられるのだろうか、と少し心配にはなるが、前世では数日
座学は基本午前中のみ行うため、科目は一日三つだ。一コマ三十分で、休憩が十分、それを一科目二コマ行うため計六コマが一日の授業コマ数だ。その後昼食と昼休憩が
教科書を自分が使っているベッドに置く。そうこうしているうちに時間が過ぎ、食堂が開く時間が差し迫ってきた。カルミナの寝息は変わらずゆっくりとしていて、ノンレム睡眠の
「そろそろ起こさないと」
教科書を開いて予習をしていたイセリ―が呟き、教科書を重ねて置いて二段ベッドの
「ミナ、そろそろ起きなさい」
うにゅ、と
「早く起きないと、乱暴に起こすわよ」
起きないと乱暴に起こされるのか、気を付けよう。そう思っていると、もぞもぞと
「……はっ、今何時!?」
「きゃっ」
カルミナがガバッと起き上がり、ぶつかりそうになって後ろに
「あ、ありがとう、プロティア……大丈夫?」
「あ、うん、平気だよ。そっちも、怪我は無い?」
「うん、大丈夫……」
イセリーが立ち上がってボクの上から離れ、軽くなった体を起こす。一度深呼吸をして、倒れた
「えっと……二人とも、大丈夫?」
カルミナが恐る恐る、二段ベッドの上の段から覗き込みながら尋ねてくる。
「大丈夫よ。寝起きとはいえ、もう少し
「うん、そうだね……ちょっとお手洗いに行ってくるね」
ベッドから降り、
「……昔は、こんなこと無かったのに」
イセリーが小さく呟く。その後も僅かに口が動いていたが、何を言ったかまでは聞き取れなかった。
「カルミナさんは、昔は朝に強かったのですか?」
イセリ―の呟きに対してボクが聞くのを
「はい。私は元々朝に強い方なのですが、カルミナはいつも私より早く起きていました。でも、ここ数年で少しずつ朝起きるのが遅くなっていっているんです」
カルミナの性格的に、
「多分、ミナの怠け癖が出ているだけだと思うので、気にしないでください」
イセリ―が苦笑を浮かべて茶化すように言うので、アトラさんもそれ以上は踏み込まなかった。
数分するとカルミナが部屋に戻ってきた。
「いやー、イセリ―が落ちた時は
ニカっというオノマトペが似合いそうな、白い歯を見せた満面の笑みからは、さっきまでの
「大丈夫そうですわね」
「はい。ちょっと焦りましたけど、この二人にとってはよくあることなのかもしれませんね」
横を見て、
着替えを終えたカルミナが自分のロッカーから教科書を取り出す横で、イセリーがカルミナの髪を梳かすのに使っていた櫛を片付ける。まだ左右にちょんと跳ねているアホ毛があるが、あれはもう諦めたのだろうか。でも確か、一昨日初めて会った時もあったような気がする。もしかしたら、そういう
「準備できたよ~!」
「あなたが一番最後でしょ」
教科書をイセリ―と並べて下段のベッドに置き、ムフンと鼻から息を吐きながら腰に両手を当てて自慢げにするカルミナにイセリ―が間髪入れずに突っ込みを入れる。えへへ~、と頬をぽりぽり
「それじゃあ、朝食を食べに行きましょうか。それとプロティアさん、あなたにはいろいろと聞きたいことがありますので、夜までに覚悟を決めておいてくださいね」
「へっ?」
アトラさんに唐突に振られ、
「えと、まあ、話すのはいいんですけど……二人にも話して大丈夫ですか? 一応、まだ
「お二人ともそう簡単に人に話すようなことはしないでしょう。それに、ルームメイトなのですから、
既に隠し事だらけな為に素直に返事しにくいが、「ソデスネ」と
「では行きましょう」
アトラさんが部屋を出て行くのに続いて、「あっさごっはんっは~なっんだっろな~」と歌うカルミナ、少し
今度の学園生活は、楽しく過ごせるといいな。プロティアのためにも。
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