転生5
――ふん、ふふ~んふんふん、ふふふんふ~ん。
ぼやけた意識の中、近いのか遠いのかも分からない場所から
鼻歌が続く中、少しずつ意識が
そこで一つの可能性に思い至り、目を開ける。
「あ、起きた」
鼻歌が止まり、可愛らしい
僕の視界には、赤い
思い至った可能性――
「君は……プロティアちゃん、だね」
「ちゃん付けなんてしなくていいですよ。私と
「一心同体……それもそうか。じゃあ、プロティア、君も敬語は使わなくていいよ。それに、日本語も無理に使わなくていい」
「日本語は私が使いたくて使ってるの。ほら、新しいものって使いたくなるから」
えへへ、とはにかみながら、プロティアが僕を見下ろしつつ頭を撫でる。
「もうちょっとお姉さん気分味わいたかったのに」
そう言ってプロティアが
表情に出ないよう
「んんっ、そのうち、機会があればな……ところで、ここはどこなんだ? 神様と話した場所とどことなく似てるけど」
真っ白で何もない空間が同じというだけで、体の痛みや、僅かに感じた
「んーと、精神世界? 頭の中? みたいな感じかな。あ、死んでないから大丈夫だよ!」
「リアルな夢の中みたいなものか。死んでないことが分かれば、十分だ」
「こんなことも出来るよ。むーん……」
超能力でも使おうとしてるのか、目を閉じて
勉強机も、ランドセルも、大量に買った本も記憶の通りだ。むしろ、記憶の通り過ぎて過去に戻ったかと
「なん……」
唐突な出来事に、そんな言葉にすらならない声しか出なかった。
「どう? 凄いでしょ。夢の中だから、なんでもできちゃうの!」
ふふん、と鼻を鳴らして薄い胸を
「ああ、凄いよ。ここまで再現するとはな……ん? こんなに髪、短かったっけ」
感心した時の
「夢の中だから何でもできる……か。僕にとって一番理想に近かったのが、この頃だったんだろうな」
だから、こうして姿が
「空翔くん、これからどうするの?」
いつのまにか学習机の前の
「プロティアは、眠りに近い状態になるんだよな」
「うん、そうみたい。どう説明したらいいのかな……こう、
魂どうのこうのは、オカルトに
「その魂とかの話って、誰かから聞いたのか?」
「んーとね、ちょっと前に神様を
なんとも子供らしい納得の仕方だ。もっとしっかり説明してもらい理解した上で判断した方が……と、インフォームド・コンセントのような考えが浮かんでくるが、恐らく今更どうすることも出来ないのだろう。思いつく方法としては、
ならば、プロティアの人生を
「そっか。で、僕がこれからどうするか、だったか。プロティアは何かしたいこと、あるか?」
「私のしたいこと? んー、そーだなー。まずは、友達と学園生活を楽しみたいかな。それで、今よりもっと強く、
みんなを守りたい、か。本当にはっきりしていない回答だ。みんなが誰を
「分かった。プロティアの願いが、僕のこれからすることだ。神様に言われた、文明を進めるってのと
「いいの? せっかくの異世界なんだし、もっと俺つえええ! ってしないの?」
「どこでそんな……僕の記憶か。まあ、そうだな。プロティアの体と僕の知識があれば、しようとしなくても出来るだろうし、そもそも昔から似たようなこと言われ続けてきたから、
「確かに」
小学校では
「私のやりたいことを代わりにやってくれるのは
やはり記憶を共有したからか、こういった考えもお見通しのようだ。こっちもプロティアの思考はある程度分かるから、お
「万が一見つけた時は、そうするよ」
見つかる可能性があるかと言えば、正直言葉にした通りないに等しいと思うが。とはいえ、プロティアがそう願っているのだ。
「あ、もう一つしたいことあった」
くるくる回る椅子を足と床の
何かよく分からない
「私、恋愛してみたい」
きゃっ、と小さく悲鳴を上げながら、耳まで赤くしたプロティアが両手で顔を
「……誰かのこと、頭から離れないくらい好きになって、お付き合いして、手なんか繋いだりして、キスして……私にはまだまだ早いけど、そのうち、え、え――なこととかもしちゃったりして……そんな恋愛がしてみたい」
一部小声過ぎて上手く聞き取れなかった部分もあったが、プロティアが指の
ただ、
「そっか……でも、そればっかりは自分でやってくれ。何とかしてプロティアが表に出てきて普通に生活できるようにする方法を見つけ出すから。その後、思う
「そんなこと、出来るの?」
少し声の張りを取り戻したプロティアが、手の
「分からない。ただ、可能性はあると思う。魔法はイメージである程度何でも出来るみたいだし、そもそも僕は魂だけをプロティアに埋め込まれたわけだ。つまり、魔法で魂を
「ほんと!?」
僕の言葉に、くりっとした
「やれるだけやってみるよ」
「ありがと! 空翔くん大好き!」
しばらく慣れないむずむずした感覚が残っていたが、唐突に意識が引っ張られるような、
「なん、だ、これ……っ」
「もう、お目覚めかぁ……もっとお話ししてたかったな」
「……体が、目覚めようとしてる、のか」
「うん」
視界はぼやけ、すでにプロティアの白い髪と肌の境目すらあやふやになってきている。声も真横にいるはずなのに遠くにいる感じがして、少し
「プロティア」
「なに?」
「いつでも、話せる、のか?」
「……分からない。もしかしたら、もうずっと話せないかも」
「んな……っ」
胸の中に生まれた寂しさが、広がっていく。プロティアの
「一つ、
声になっているのかも分からない。すでに体の感覚は、左手の温もりを
だが、僕の意識が完全に
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