転生4
ゴブリンとの
剣を振った時の回転が残っていたため、着地して静止した時には、ゴブリンに背を向けていた。今の
左右から一体ずつのゴブリンが棍棒を振り上げて飛び掛かってくる。一瞬のうちに位置と振りかぶり方を確認してどこに攻撃が来るかを推測し、僅かにスピードを落とす。
次は二体のゴブリンが正面に立ちはだかる。切り伏せてもいいが、もし時間がかかってはいけない。ここはスルーしよう。ゴブリンの攻撃範囲に入るまでにそう
雲に
それを見た僕は、
「っ!」
即座に状況を判断し、突っ込む
水や風魔法で対応してもよかったが、
僕の
「シッ!」
「
地面を揺らしながら近づいてくるホブ・ゴブリンを見上げつつ、まずはどうゴブリン四体を倒すかを考える。
「食らったら一たまりもないな……」
「よくも俺の娘をッ!」
ホブ・ゴブリンの言葉に、怒りの理由見つけたり。なるほど、ウィザードはこいつの娘だったのか。とはいえ、こいつらもこれまでに何人もの人を、何人もの誰かの家族を殺してきたのだ。それこそ、プロティアの母親のような。これも言ってしまえば当然の
ホブ・ゴブリンの対処をいったん後回しにして、四体のゴブリンの
ホブ・ゴブリンの右横を通り抜け、集まっているゴブリンへと駆け寄る。ゴブリンたちはすぐに反応して、僕に正面から挑んでくる。両手で左側の下段に構えた剣を、まず一体目の脇腹にほぼ水平に振るう。剣を振り切らずに手首を切り返し、正面で棍棒を振り上げるゴブリン目掛けて左斜め上方向に
息を整えつつ最初の脇腹だけを斬ったゴブリンに近づき、立ち上がろうとするところを剣で首に
ふぅ、と短く息を吐いたところで、再びホブ・ゴブリンに視線を向ける。感じる殺気は数秒前とは比べ物にならないくらいに
「後はあんただけだね」
「……せめて、お前だけは刺し違えてでも殺す」
嗄れ声はさらに
ホブ・ゴブリンが僕に向かって一歩踏み出す。
ワンテンポ遅れて、僕もホブ・ゴブリンに向けて地面を蹴る。コンマ数秒のうちに棍棒を振り上げるホブ・ゴブリンの
刃がホブ・ゴブリンの腹に当たった瞬間、まるで
振り下ろされる棍棒を右へ
「……切り傷くらいしかついてない、か」
こいつを
「剣に魔力をまとわせろ!」
大剣使い――確かトルーナーだったか――の声が飛んでくる。剣に魔力をまとわせる、といういかにも魔法のある異世界らしいアドバイスだ。
「魔力をまとわせる……」
魔力がどのようなものか、僕には正直分からない。しかし、まとわせることが出来るのであれば、
とりあえず、イメージしやすくするために魔力を原子のような
「成功、か……?」
目の前に光景に若干の
まずい、油断した、と思うのも
目を閉じて死の瞬間を待つが、
状況を理解するために目を開けると、目前には棍棒を振り下ろした体勢で
「これが、魔力をまとった剣、か」
防御体勢を
すぐに集中力を高めて、剣を振り上げつつ左半身を引いて、その攻撃を
皮膚に触れた剣は、叩き切るとも切り
まだ突き出した勢いが残っていたのか、切り離された
「ぐらああぁぁっっ!」
金属が擦れあうような
体を
背中が地面に着く直前に、背中と地面の間に空気を集めて一気に
「よっとっと」
腰辺りで生じた突風は、僕をバク
剣を構えつつ、ホブ・ゴブリンに視線を向ける。両腕を失ったホブ・ゴブリンは、その場で硬直していた。綺麗に斬られた両腕の断面からはポタ、ポタと赤黒い液体が
「……まだ、抵抗する気はあるか?」
気を抜かないよう集中力を維持しつつ、ホブ・ゴブリンに問いかける。しばらく反応はなかったが、十秒ほどすると体の向きをこちらに向けた。
「言っただろう。刺し違えてでも、お前は殺すと」
「そっか。言ったことを曲げないその
「なんだ」
「村の人たちに、生き残りはいるの?」
「いない。男は攻め入った日に皆殺しにし、ガキは
まるで戦地に住んでた市民だな、というのが僕の第一の感想だった。日本も関わった世界大戦の最中に、似たようなことがあったと記録を見た覚えがあったからだ。人間も、相手を人と思わなくなれば、人間を
「ありがとう、教えてくれて。これで、
「不可能だ。なぜなら、お前はここで死ぬからだ!」
そう言って目を見開いたホブ・ゴブリンが、腕の断面から血を
僕が止まるとほぼ同時に、背後でズーンとホブ・ゴブリンが倒れる音が響く。これで、ホブ・ゴブリンは両腕と右脚を
ホブ・ゴブリンの正面に立つと、鋭い眼光が僕を見つめる。まだ、僕を殺すという意思は
「もっと苦しめてからあんたを殺したいところだけど、
ホブ・ゴブリンの首の真横に移動して立つ。魔力を
首がなくなりデュラハンのようになった巨体は、すぐに力が抜けて地面に倒れ伏せた。両腕、右脚、首の断面から、赤黒い血が
しばらく転がった頭は少し離れたところで静止し、
「なんとか、なった……」
剣を振り下ろした体勢から上半身を起こし、一度数秒かけて深呼吸をする。剣を
――ああ、完全にガス欠だ。
そう思った時には、意識はほとんど残っていなかった。
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