転生3
「……思い出した」
頭の中に
頭はまだ痛む。恐らく、一度に十数年分、記憶がある程度消去されていたとしても十年近い量の記憶が流れ込んだのだ。意識を
ふらつきながらもなんとか立ち上がり、足元に落ちている
服装は、
「ティア、大丈夫……?」
聞き慣れたような、そうでないような声と言語が、僕の
「あ、えっと……」
振り返りつつ、この世界の言語をプロティアの記憶を
「うん、大丈夫みたい。ちょっと、この戦いを終わらせてくるね」
プロティアの発声方法、イントネーション、動きを出来る限り再現しながら、ユキナに答える。ユキナが頷くのを見て、体に影響されたのか、少し安心感を抱きながら扉の方に向く。
足元に二体の緑の死体が転がっていた。種族名はゴブリン。そう、ゲームやラノベでおなじみのゴブリンだ。発音も、見た目もそのままだ。先程も言ったが、もちろんこの世界の言語は地球上のものとは違う。ゴブリンの由来である中世ラテン語やギリシア語なんかとも別だ。なのに、ゴブリンという名前。偶然とは思えない。推測だが、僕より前に地球人がこの世界に転生しており、命名に
「魔法か……」
小さく呟きながら、何も持っていない左手の
どうやら、魔法を使うためにこの世界でも詠唱が必要らしい。だが、プロティアの記憶にある詠唱はほんの少しだ。それに、僕が目覚める前、プロティアはエネルギー切れになっていた。恐らく、
今になっていろいろと疑問が浮かぶが、何ともなさそうなので一旦置いておく。
詠唱を唱えてもよさそうだが、異世界転生と言えば無詠唱で魔法を使って俺TUEEEEをするのが定番だ。もし僕にもそれが
試しに、掌の上に炎があるイメージをしてみる。火が生じる原理は、簡単なもので言えば、
掌の上には空気しかないが、そこで高速の燃焼反応が起きているイメージを原子レベルで行う。簡単なのは水素と酸素、もしくは炭素と酸素だろう。メタンなどの有機物でもいいが、ここは念のため
二秒ほど強くイメージしていると、
さらに炎の
ゴブリンに触れたところで、さらに炎を大きくイメージする。すると、即座にイメージ通り炎は大きくなり、ゴブリン全体を包んだ。一分も経たないうちに死体は
火球へと戻して、炎を手元へと移動させる。同じ
「便利だな、魔法」
イメージでここまで使えるのだ。練習さえすれば、なんでもできるかもしれない。
ゴブリンの
「じゃ、行ってくるね。ユキはここで待っててね。絶対、守るから」
プロティアと約束したんだ。絶対に守り抜く。
固く決意をしながら、「頑張ってね」と見送るユキナを置いて、一歩踏み出す。そして、二歩目を出そうとしたとき、左足で右の
「ぬわぁっ!」
何とか顔がつく前に
「ティア、本当に大丈夫!?」
後ろでユキナが悲鳴に近い声で呼びかけてくる。
「だ、ダイジョブダイジョブ。あはは、ちょっと
立ち上がりながらユキナへとそう返す。
「……体格が急に変わるとバランスがとりにくくなること、
身長はおよそ四、五十センチ近く
扉の外れたアーチを
その少し離れたところでは、タンクが攻撃をいなし、バランスを崩したホブ・ゴブリンにもう一人の剣士が片手直剣で
その周囲には、同じ
「僕も手伝おう。ホブ・ゴブリンは一旦置いといて、雑魚を倒すか……いや、一体ずつやっても回復されるのか。やるとすれば、回復が追い付かないくらい一度に倒すか、
一番楽なのは、大規模な魔法で
先ほどと同じように、左手に炎を作り出す。そして、上空へ
「もっと、もっと大きく……!」
大きさの限界はイメージしない。とにかく、ただ大きくすることに魔力と意識を
「おい、プロティア! お前、それを森に打ち込む気か!?」
ホブ・ゴブリンと
「やべ、でかすぎ……!」
恐らく、まだ大きくすることが出来るだろう。だが、これをゴブリンへと打ち込めば、森へと
「プロティアの魔法、かなり強そうだな……いやいや、そんなこと言ってる場合じゃない」
このまま打ち込むのはやめておこう。何か変形を
「巨大な炎……ゲームだと、こういうのは
脳内で龍のイメージをする。トカゲのような頭に、長い
すると、火球の
そして、僕の頭上に存在するのは、さっきまで存在した火球から炎の龍へと
「これなら、多少は
と、考えてみるものの、僕は昔から命名が苦手だ。工房に引き
「プロティア、どうすればいい!?」
ホブ・ゴブリンの棍棒を大剣で受けながら、剣士が問いかけてくる。その声で
恐らく、ゴブリン達は森の中まではこの龍を撃ち込んでは来ない、と予想して、森の中に逃げるだろう。ホブ・ゴブリンは、逆に人間側に押し寄せて安全を
「
ホブ・ゴブリンのものと思われる
「魔術師の方は、中央に
僕が指示を飛ばすと、いくつかの
しかし、竜巻の影響を受けるのはゴブリンだけではない。プロティアの体は小さく、かつ体重も軽い。そのため、僕の体も僅かに竜巻に引き寄せられていた。
まずい、と思ったのも
「俺が支える。その魔法、
「はい!」
左手を振り上げ、龍へと意識を集中させる。そして、龍が地上のゴブリン、そして上空でもがいているゴブリンを巻き込んで燃やし尽くす光景をイメージする。
龍の温度は約二千度弱くらい、長さは数十メートルはいっているだろう。秒速五メートルで飛ばしても、数秒は熱を直接受けることになる。そうなれば、死なずともまともに動けないくらいの火傷は
「全てを燃やし尽くせ!
ほぼ無意識に中二くさいセリフを口にしながら、空に向けて上げた左手を振り下ろす。それに続いて、炎龍も
まずは地上を
イメージとともに、左手を動かす。炎龍はそのイメージ通りに、僅かに遅れて動き、首を上空へと
上空にいるゴブリンも
風が自然の
「ありがとうございます」
「いや、あれだけの
剣士が若干顔を下に向ける。
「いえ、僕をここまで
ユキナの時と同じように、プロティアの雰囲気を真似つつフォローを入れる。そうか、と僅かに笑顔を戻した剣士を見て
まだ
一歩、二歩とゴブリンたちへと歩みを進める。どうやら、体にはだいぶ
「おい、プロティア。あとは俺達で……」
剣士の呼びかけに、足を止めて少しだけ振り返る。
「やらせてくれませんか? もし危険だと判断したら、すぐに
「……分かった。師として、お前の成長を見届けよう」
剣士の答えを聞いて、小さく頷いてからゴブリンの方へと視線を戻す。
まず、最優先で倒すべきはウィザードだ。他のゴブリンを攻撃したところで、回復されてはジリ貧だ。幸い、プロティアの体は小さいし、筋力もある。一瞬で近付いて、ホブ・ゴブリンの攻撃を
そのため、これ以上魔法を使うと、活動限界が来てしまう可能性がある。そうなれば、お荷物まっしぐらだ。それを避けるためにも、魔法は
その場で数度
ゆっくり、深く息を吸って、
「シッ」
短く息を吐きながら地面を強く蹴った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます