三年の時を経て5
一分程で西門の前に立つ。普段と同じように、大きな門は閉じられており、その横にある
これまでそうして来たように、検問所の扉を三度叩く。すると、外開きの扉が動く。
「……ん? プロティアじゃないか。どうしたこんな時間に」
雑に生えた
「外に出して貰えませんか? 魔物が来るんです」
「……」
ギリュスルさんが、半分閉じていた目を見開いて、じっと私を見つめる。
「あ、はは、こりゃ驚いた……プロティアがそんな冗談を言うなんてな。でも、君ももう学園の生徒なんだし、そういうのはやめた方がいいぞ。ほら、早く寮に戻りな」
「冗談じゃないです! 本当に来るんです!」
「本当に来るんだとしても、それは俺たちの仕事だ。プロティアは戦わなくたっていいんだよ。まあそうだな、せめて冒険者になってから……って、おい!」
このままでは扉の鍵が掛かったままだと思い、ギリュスルが視線を
「放してください!」
「ほら、君は早く寮に戻って寝なさい。あんまり
「もう逃げてばかりは嫌なんですっ!」
体を
扉の両隣には一つずつ
走った勢いを殺しつつ、森に三フォティラス程まで近寄り、
──はずだった。
限界まで索敵範囲を広げた瞬間、薄く
「プロティア、いい加減──」
「ゴブリンが来てます。数は正確には分からないですけど……恐らく、五十はいます。でかいのも」
索敵を維持したまま、ギリュスルさんの言葉を遮って伝える。
「んな……冗談じゃ、ないんだな」
「っ……はい!」
ギリュスルさんの
「プロティア、一発魔法を打って
「に、逃げませんよ」
「ああ、この数は今ここにいる衛兵じゃ止めきれない。君の魔法が必要だ。だから、俺達で君を囲んで守りつつ、フェルメウス騎士団の本隊が来るのを待つ。
「はい!」
索敵を維持しつつ、両手を前に出す。そして、頭の中に炎のイメージを浮かべ、大きく息を吸う。
「命の
そこまで唱えると、手の先に小さな光の玉が浮かぶ。式句を唱え、魔法名を唱えずに維持すると、こうして光の玉がイメージした場所に現れるのだが、これは魔力の集合体だ、という説が有力らしい。私にはよく分からないが。
索敵の範囲内に、ゴブリンのほぼ全てが
いっその事森ごと燃えて、全滅してくれれば……と思うが、そう上手くいくとは思えなかった。
私の中に、ユキのおかげでなくなったはずの不安が
索敵と魔法の維持という、まだ慣れ切っていない状態が、強まっていく不安のせいで安定性を欠いていく。どちらかをやめれば少しは安定するだろうが、索敵をやめればタイミングを
歯をギリギリと鳴らしながら、索敵の範囲を縮める。手元の明かりが一瞬ブレるが、索敵範囲の
索敵範囲を狭めたことで、多少なり索敵と魔法が安定する。しかし、
「やらなきゃ……私が、やらなきゃ……!」
呼吸が浅くなり、心臓の動きも街を三周した後くらいまで早くなる。背中にじんわりと汗が噴き出し、頬を
「深呼吸だ。心配しなくても、プロティアは俺達が絶対に守る」
背後で衛兵さん達に指示を飛ばしながら、ギリュスルさんが私にそう語りかける。言葉に
「信じますね」
いつもより少し
せめて、五匹はやる。そう目標を立て、達成できるように魔力を更に込めて威力を底上げする。手元で
どれくらいの時間が経っただろう。無限かのように感じていたが、遂に索敵の範囲にゴブリンが侵入した。あと少しで、私は牽制の魔法を
「大丈夫……私は一人じゃない。怖がる必要なんてない!」
自分に言い聞かせるように、歯を食いしばりながら小さく言葉にする。
あと五秒、四、三、二……
「
大きく息を吸い、今までにないくらい
光の球が
吹き付ける爆風を利用して、バックステップで扉の前に移動する。扉の前に立った二秒後には、五人の
ほんの少し安心感が
「プロティアは回復をしつつ隙を見て攻撃で数を減らしてくれ。もし余裕があったら、索敵で
ウィザードタイプ、つまりは魔法が使える個体だ。ここ数日に雨が降った日は無いし、木は燃えるはずだ。だが、実際には燃えていないということは、魔法で消した可能性が高い。ギリュスルさんはそう判断したのだろう。
「分かりました」
私の応えにギリュスルさんは一度小さく
既に、最前列にいるゴブリンが、ギリュスルさんに飛び掛かろうとしていた。
「索敵」
私を囲む騎士さん達が入る範囲で、索敵を展開する。私が使う、魔力振動を利用した索敵は、生物の体内の魔力にも
絶対に逃げない。戦って、今度は大事な人達を守るんだ……!
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