第9話 パーラー・アテナの籠城戦(ニ)

『ゾンビ・ファンガスに寄生されてすぐの生物は、感染者テスタによる眼球痙攣検査、もしくは血液検査以外の感染判別が難しい。ゾンビファンガスの潜伏期にある感染者は目に見えて奇異な行動を取ることが一切ない為である。胞子感染者へ、・体液の白濁、・人心の乖離、・言語障害、・突発的な攻撃的行動など、NPC特有の症状が顕著に現れるのは、ゾンビ・ファンガス胞子に寄生された後、一週間~二週間の時間が経過してからのことである。ゾンビ・ファンガスはこの潜伏期間中に、寄生した生物の脳髄へ菌糸脳漿を形作り、肉体の制御を完全に乗っ取ったのち、その運用を開始する――』

 これはNPC狩人組合が発行している『ゾンビ・ファンガスの特性と行動』という小冊子の、ゾンビファンガス胞子に寄生された生命体の典型的な経過と症例の項に書かれている説明文だ。

 熊型に大穴を開けられたパーラー・アテナ全体に胞子・放射線観測機の警報が鳴り響いたとき、耐胞子マスクをつけていなかった団員も多かった。熊型に血を浴びせかけられた団員もたくさんいたらしい。内山さんだって、そのうちの一人だ。内山狩人団に胞子感染者が多数出たのは間違いないだろう。リサと俺だって人間かどうかもうわからない。

 何もかもが手遅れだ。

 胞子地獄の底に沈んだパーラー・アテナで破滅へのカウント・ダウンが始まった。

 押し寄せてきたNPCの群れを何とか撃退したあとだ。深沢さんの指揮で熊型の死体にワイヤーをかけて外へ引っ張り出して、除菌剤を丹念に撒いて胞子の駆除をしつつ、パーラー・アテナの応急的な修復を終えた。汚染前、深沢さん双子兄弟は大工をやっていたらしい。だからこういう作業の指示は彼の手際が良かった。

 作業が終わると内山さんが生き残った団員を――人数にして百名足らずになった団員をすべてホールへ集めて宣言した。

「今の時点で、感染者と非感染者の選別はやらねェぞ、バカヤロー」

 これは「情に負けたから感染者の検査と駆除はしない」という話ではない。「明後日、援軍に来る筈の有馬狩人団へ検疫をすべて一任する予定である」という話だ。この場にいる全員を胞子感染者疑惑としておけば当面の混乱は起こらないだろう。胞子感染者をここで駆除してしまうとパーラー・アテナを防衛する手も足りなくなる。これまで一緒に仕事をしてきた人間を駆除するのは心情的にも難しい。俺たちが生き残るために最優先にするべきことは非感染者と感染者の選別ではなくて救援が来るまで――有馬狩人団が来るまで、どうにかこのパーラー・アテナを維持することだ。俺は内山さんの判断が最適解だと思えた。その話を聞いていた他の団員も頷いた。

 しかし、その日の明け方だった。

 十人の団員がパーラー・アテナから装甲車を使って遁走した。話を聞くと逃げたのは内山狩人団が名古屋に来てから入団してきた若い連中ばかりらしい。

 彼らは恐怖に負けたのだ。

 報告を受けた内山さんは顔を曲げただけで何も言わなかった。

 パーラー・アテナに残った俺たちに動揺はなかった。ここから逃げた連中が生きて春日井新団地へたどり着けるとも思えなかったからだ。パーラー・アテナはNPCの群れに包囲されている。屋上駐車場へ出ればそれを肉眼で確認できた。この様子だと道に散らばった奴らの餌が――撤退中に力尽きた内山狩人団の団員の死体がなくなり次第、パーラー・アテナはNPCの総攻撃を受けるだろう。

 これが、俺たちを感染者として駆除するかも知れない有馬狩人団の救援を待っている内山狩人団の状況だ――。


 リサが三つめのリールを停止させたところでプレミア演出だ。

「テーテレッテテー!」

 パチスロ台がボーナス告知のファンファーレを鳴らした。

「?」

 リサが首を傾げて俺へ視線を送ってきた。

「ああ、リサ、ボーナスランプが光ってるね。それが当たったよってことだ」

 俺は横にいたリサへ言った。この前哨基地は元々パチンコ屋だ。仕切りを作って生活空間になっているホールの隅っこに放棄されていたパチスロ台が何台か設置してある。電源も入っている。前哨基地には娯楽がない。こういう気晴らしも必要だろうという配慮なのか。前哨基地を整備している最中、誰かが遊び心を出したのか。そのどちらかはわからない。とにかくホールの片隅で数台のパチスロが稼働している。夕めしを終えたリサと俺は、パチスロ台で遊んだ。リサも俺もゲームが結構好きなのだ。今のところ屋上駐車場で探照灯を頼りに周辺を警戒している連中からNPC襲撃の警告もないから暇でもある。昼のうちNPCに動きはなかった。

 まあ、これはきっと「嵐の前の静けさ」というやつだろうけど――。

 俺はそんなことを考えつつぬるい缶ビールを飲んだ。横で同じようにしているリサが飲んでいるのは缶入りのグレープフルーツジュースだ。普段、俺が仕事中に酒を飲むことなんて絶対ない。だがいざ死ぬときになって、あのビールをとっておかないで飲んでおけばよかったなと後悔したくない。だから今、飲んでいる。今日の夕めしのあとだった。指令室から箱を抱えて出てきた内山さんが団員の一人一人へ缶ビールを手渡した。団員ははっと表情を変えたが、内山さんはただ笑うばかりで何も言わなかった。

 別れのさかずきになるのかも知れないな――。

 各自へきっちり一本づつの給与だったから、飲んだって酔っ払いが出るようなものでない。実際、ホールは団員の低いお喋りが聞こえるだけで静かなものだ。

 昼は散発的に鳴り響いていた銃声も今は聞こえない――。

「――?」

 ああ、リサが顔を傾けたまままだ俺を見つめていた。

「ああ、ボーナス・フラグが立つと絵柄にあるうちの赤い7を揃れるようになるんだよ。俺がやってやる」

 俺は横から手を伸ばして、リサの台のボタンを押した。7、7、と左のリールから絵柄が揃ったところで最後の7がツルンと滑って、あらやだ、揃わないわ――。

「!?」

 話が違うぞとリサの眉が強く寄った。

「ああ――」

 俺は苦笑いだ。

「?」

 リサが胡乱な視線を俺に送った。

「パチスロのボーナスには二種類あるんだよ。これはBIGビッグボーナスでなくてREGレギュラーボーナスだね。この場合は黒いREG絵柄を揃えるんだ。リサが引いたこれはハズレの当たりってとこかな――」

 気まずい俺の手を、

「!」

 リサがピッと払った。

「リサが自分でやるの?」

 俺が訊くと、

「!」

「!」

「!」

 てしっ、てしっ、てしっ、とボタンを叩いたリサはREGの絵柄をセンターラインで揃えた。

「リサは上手いな。初心者はなかなかそれを揃えられないんだよ」

 俺は笑った。

「!」

 ふんっと顎を上げたリサだ。

 ドヤ顔だった。

「ま、リサの動体視力なら余裕か――」

 俺は俺の台のレバーを叩いた。

「?」

 リサがREGボーナスを消化しながら首を捻った。

 下皿にチャラチャラとコインが落ちている。

「このゲーム機が何かって?」

 俺が訊くと、

「!」

 リサは小さく頷いた。

 俺が教えた。

「これはパチスロって言う。まあ、日本向けのスロットマシーンだな。名古屋居住区にもあっただろ、パチンコ屋、知らないか?」

「?」

「リサはパチンコ屋に行ったことないか」

「?」

「これに何の意味があるのかって話?」

「!」

「パチンコ屋では、この台から出てきたコインを換金できるんだ。たくさんコインを集めれば、それだけ多くのお金がもらえる仕組みになっている」

「?」

「まあ、使うコインを最初に金で借りるわけだから博打だよね」

「!?」

 リサがくわあっと俺を睨みつけた。「生活上でのパートナー(まあ、乱暴に言うと財布扱いだ)であるこの俺が小博打で無駄な散財をしているのではないか?」と、リサは勘ぐっているのだろう。

「いや、汚染後、俺はパチンコ屋へ行かなくなった。こんな博打は馬鹿らしいよ。どう足掻いても相手は機械なんだ。パチスロもパチンコも店側が出玉をコントロールできるんだぜ。機械を相手にお客様が四苦八苦して結局は持っている金と時間を無駄にするっていうのが、パチンコ屋の儲かる仕組みだからね――」

 俺はボヤくように言った。

「?!」

 リサは瞳をうんと細くしてまだ俺をじっと見つめていた。

「疑り深い奴だな――」

 俺は溜息を吐いて、

「今の俺は博打をやらない。パチンコ屋へ通い詰めていたのは汚染前だ。俺の学生時代だな。この台も懐かしいよ。これって一番シンプルなゲーム性のパチスロ台なんだ。どこのパチンコ屋に行っても必ず置いてあった台だな――」

「――?」

 リサは首を捻ったままレバーを叩いた。

 テロテロテロン、とウェイト音のあとでリールが回る――。

「それがいつって俺が大学生のときだよ。地方にある文系の三流大学なんてのはね、何があろうと毎日が暇で暇でさ。講義をフカして、バイトをして、パチンコ屋へ行って勝ったら友達と酒を飲むと。あの頃はそんな生活をしていた。それでも留年しなかったぜ。単位ギリギリで無事卒業――」

 俺はリールを止めながら言った。機械の内部でボーナス・フラグが立たなければ延々とコインや持ち玉が消えていく。それがパチスロやパチンコが持つ単調なゲーム性だ。それでも金がかかっていれば、ひとはこの単調さに――安易で単調な射幸心に魂を奪われる。それで生活が破綻する人間だってたくさんいる。人間の精神というものは当の本人が考えているよりも、ずっと愚かで弱いのだ――。

 ふぅん、そうなの。

 そんな態度で頷いて、一旦はパチスロ台へ視線を戻したリサが、

「!」

「!」

「!?」

 ガバッと俺へ顔を向けて二度見した。

「――えーと、リサが引っかかったのは、『俺の友達』あたりの発言なのか?」

 俺はリサと顔を見合わせて少し考えたあとでそう訊いた。

「!」

 リサが必死な形相で強く頷いた。

「俺にだって若い頃は友達がたくさんいたっての。あの頃は、かなり楽しかったぞ?」

 俺は無表情で告げた。

「?」

 リサは視線をウロウロさせた。

 すごく動揺しているようだ。

 リサのなかで俺は一体どういう人間になっているのだろう。

 上手く説明はできないけど何だかすごく心配になってきたぞ――。

「確かに学校の友達は少なかった。大学の敷地で同学年の連中と顔を合わせても、そのたいていは『お前って誰だよ、顔も名前も知らねェよ』っていうくらいでな。俺は熱心に学校へ通ってなかったから――まあ、唯一合格したのがあんなクソ私大でも、文句を言わずに金を出してくれた、死んだ親父やおふくろには申し訳ない話になるんだが――」

 俺の声は自分でも驚くほど弱々しかった。

「?」

 リサが警戒心を顔に残したまま仕草で俺の話を促した。

「うん、当時の俺の友達は学校よりもアルバイト先に多かった」

 俺は言った。

「俺の友達ってのは同年代でも、色々とおかしな人生を選択していた奴らだったな。まあ、世の中のレールから外れた奴らばかりで、面白かったんだよ。そのたいていは男だった。男って生き物はな、女よりも馬鹿だから面白いんだ。その生き方って点でね。女と違って男は損得を無視する傾向があるし、それでなければ男は男でないからな――」

「?」

 リサが俺のジャケットの袖をくいくいと引っ張った。

 これは何かをおねだりするときにやるよくやる仕草だ。

「リサはアルバイトをしたいの?」

 俺は訊いた。

「!」

 リサが顔を左右に振った。

 俺はちょっと迷ったのだが――。

「リサは学校へ行きたいか?」

 結局、訊いた。

「!」

 リサがはっきりと頷いた。

「――リサも学校に通って同年代の友達がいっぱい欲しいか?」

 俺の言葉は喉に突っかかったあと、無理やりに出てきたような響きだった。

 リサはまたはっきりと頷いて見せた。

「そうか、名古屋居住区は学校が多いからな――」

 俺は弱く笑った。

 リサは喋れない。

 汚染前ならだ。

 日本には障害のある子供が通える学校だってたくさんあった。

 だが、汚染後に運営されている学校が障害のある子供を――リサのような子供を受け入れているという話を、俺は聞いたことがない――。

「そうだな、リサ。今回の仕事が終わったらさ、名古屋居住区の住民票を買おうか。金はだいぶ貯めてあるし――」

 しかし、俺ははっきりと笑顔を作って言った。

 人生には嘘を吐かなければいけない場面がたくさんある。

 今がそのときだと確信した。

 この嘘がバレると、リサからこっぴどく怒られるかも知れないね。

 それでも、構うものか――。

「――?」

 リサが首を捻って見せた。

 リサだって障害者が居住区の住民票を購入できないことを知っている。

「うーん、この場合、お前のほうは俺の奴隷として区役所に登録をするしかないな。組合と違ってお役所は融通が利かないからね。リサはそれでもいいか?」

 俺は柔らかく訊いた。

「?」

 リサは視線を上向けたまま顎をしゃくって俺の話を促した。

「うん、お互い、生きて帰れたら、そこでNPC狩人ハンターは廃業だ。居住区で暮らせば、リサだって学校に行けるだろ。もうね、見るからにヤバイだろ、この状況ってさ。これがたいていのNPC狩人の最後なんだ――」

 俺は声を出さずに笑った。

「?」

 リサが腕を組んでカクンと顔を傾けた。

「そうだな、NPC狩人を引退したら、俺は何を仕事にしようか――改めて考えるとゾッとするぜ。俺っていう男は銃を撃つくらいしか、できることがないぞ?」

 俺は呻くように言った。

 リサが肘で俺の脇腹をドスドス小突いた。

 それでもお前は何か考えろ。

 働かないと食っていけないわよね?

 リサはそんな態度だ。

 ああ、そうですか。

 まあ、それはそうですよね。

 じゃあ、何か考えますかね――。

「――ああ、俺は大型自動車の運転ができるね」

 俺は顔を上げて、

「中古のトラックを調達してさ、区外運送屋に就職するか。リサと俺とでトラック野郎をやるんだ。俺が運転をするから、お前は助手席で、道に飛び出てくるNPCを撃ちまくればいい。これでどうだ?」

「!」

「?」

「?」

 一旦は頷きかけたリサが首を大きく捻った。

「うーん、そうだよなあ。あの職業って――区外運送屋ってNPC狩人と危険がそんな変わらない気がする。いやむしろ、あっちの方がずっと危険な仕事のような――参ったぜ。俺には職業の選択肢がない。大農工場の社畜になるのは、ちょっとキツイよなあ?」

 俺は訊いた。

「!」

 リサがむっと強く眉を寄せた。

 大農工場の社畜はリサもお断りらしい。

 俺だってそれは避けたい。

 あの労働環境はどうにもこうにも、ヒドすぎるからね――。

「考えるとさ。俺はNPC狩人組合を辞めると全然ツブシが利かないよ。まあ、俺は不器用なんだよな、昔からさ――」

 俺は愚痴った。

 リサがさもありなんとばかりにフンと鼻を鳴らした。

 我が大天使様は俺の能力を――特別、生活能力をあまり高く評価していないのだ。

 そんな態度を見ても、気分を悪くするわけでもない(こういうのにもう慣れた)俺のほうは、くるくる回るスロットのリールを眺めながら、

「リサ、俺って男はだな。どうも――汚染前も汚染後もだ。世間様と徹底的にソリが――意見が合わない。そういう性分なんだよな。随分と昔からだ。俺はどこにいても――自宅でも、学校でも、部活動の最中でも、バイト先でも、ツレと酒を飲んでいても職場でもだ。ずっと心の底でこう感じていた――」

 俺はリサへ目を向けた。

 同じ高さの椅子へ座っていても少し低い位置だ。

 そこからリサは俺をじっと見つめている。

「――どうもここは俺の居場所じゃないぞ、ってね」

 俺の発言にリサは何の反応も見せなかった。これは正解の対応だと思う。こんな取り留めもない、救いようのない気分は否定も肯定もしてくれないほうが、俺としてはずっと気楽だ。

 俺の天使様はとても賢いのだ――。

「リサ、正直に言うとな。俺は汚染後のほうが――サラリーマンを辞めて、NPC狩人になった後のほうが、ずっと楽しい気分で生きているんだよ」

 俺は笑った。

 リサは静かに頷いて見せた。

 俺は彼女へ頷いて返して、

「人間がNPCを相手に戦うってのはさ。ただただ生きるための必然であって、他に何のしがらみもないだろ。この仕事って――NPC狩人ハンターって、何かもが個人の裁量の範囲だから、最大限に自由だぜ。仕事中に起こることのほとんどは自己責任で片付くし、責任が及ばないなら、そこで自分が死ねばいいだけだからシンプルだ。社会や会社から片腹痛い、不可解な責任を押し付けられて、きゅうきゅうになる勤め人に比べると、NPC狩人はずっと気楽な商売なんだよ。区外で生きてきたリサには、ここらが理解をし辛いのかも知れないけどね――」

 しばらく沈黙したあと、

「!?」

 リサが肘鉄を俺の脇腹へ突き刺した。

「げふん」

 俺は呻いた。

「!?」

 もう一発だ。

「げふん」

 見ると真っ赤になったリサの横顔にある目が吊り上がっていた。

 何やら俺の天使様はたいそう怒っていらっしゃるご様子だ。

 俺の発言のどこがお気に召さなかったのか。

 脇腹を押さえて傾きながら、少し考えたあと、

「わかった、わかった。俺は気軽に死なないよ。通訳がいなくなると、リサだって困るだろうからな――」

 俺は回っていたリールを止めた。

「――!」

 顔を向けたリサがキッと俺を睨んだ。

「何だよ、まだリサは不満があるのか?」

 俺は肘鉄爆弾を警戒して身構えた。

「!」

「!」

「!」

 リサは俺の台のレバー上にあるボーナス告知ランプを人差し指でトントンやった。

 通常、この台はボーナス・フラグの成立を無音で告知することのほうが多い。

「ああ、俺の台もボーナスランプが光っているね――7、7、7、と――ほらまあ、こんな感じだよ」

 俺が777をセンターラインに揃えると、「パンパカパーン!」ファンファーレが鳴って台全体がピカピカと光った。

「!」

 ほほう、とリサが目を見開いた。

「どうだ、なかなか景気がいいだろ?」

 俺は笑った。

「――!」

 姿勢を正したリサがふんふんと鼻息も荒くスロット台のレバーを叩き始めた。

「リサだって回していれば、じきにボーナスがかかるよ。機械相手の博打は確立がすべてだ。だから、気合を入れても結果は変わらないぜ――」

 俺はそう言って、ぬるい缶ビールを全部飲み干した。

 気合を入れても結果は変わらない。

 不本意だが、リサと俺の運命もそうなった。

 あと少し生き抜けば救援が来る予定だ。

 そのあとは、まあ、運次第――。

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