第13話 猿の社(ニ)

 月日神社は立派な拝殿があって賽銭箱も置かれていた。棺桶二つ分以上の大きさのものだ。汚染前には参拝客が結構いたのだろう。高い木々に囲まれた境内の周囲は草むらが多く身を隠す場所に困らなかった。リサと俺が隠れる草むらを重い雨が叩き動かしてもいる。人間が多くても喋る声はやはりない。呻き声や笑い声なら唐突に響く。物音はほとんどないが、ロシア兵士が羽織ったポンチョのフードをたたく雨音がリサと俺の動く音を消している筈だ。

 これは出掛けの駄賃だ。俺は書斎に引っ張りこんだロシア兵士の死体から装備一式をはぎ取ってきた。AN-94とガンベルト、それに自動拳銃。この拳銃の正式名称を俺は知らない。マカロフを野暮ったく近代化させたような形だ。まあ、見たところでは銃を撃ったことがある人間なら誰でも使えそうな拳銃だと思う。

 俺の服装をロシア兵のものに代えようかとも考えたが、それはやめておいた。この状況で変装をすると余計な警戒をされるだろう。ロシア人の死体から押収してきたこの武装は、リサと俺が今いる草むらへ隠しておく。境内から脱出するとき天乃河隊長へこれを渡す予定だ。銃が使える奴は多いほうがいい。

 毒きのこの効果があるていど切れていればの話だが――。

 集落住民の集団に紛れた天乃河たちが突っ立っている近くまで移動したリサと俺は、付近の草むらに身を隠して機会を待った。境内に集まった集落住民の服装はまちまちで一貫性がない。ナイロンの雨合羽を着ているものもいれば雨笠に蓑を羽織ったものもいる。今、俺の着ている組合の雨合羽がそこへ紛れ込んでも、すぐに溶け込んで背景と同化するだろう。数えるとロシアの兵隊は四十近くいた。しかし、それが集落の住民を警戒している様子はまったくない。

 これならいける筈だ。

 木は森のなかに隠せ、だよな――。

「――猿神様への供物くもつは、まだ到着せんのか!」

 百目鬼老人が怒鳴ると今までほぼ無反応だった集落の住民がざわついた。その百目鬼老人の両脇にいた軍服姿の男女が視線を交換した。言うまでもない。そこにいたのはハンナとペドロだった。

「お前らの隊は何をもたもたしておるのだ、同志ペドロ――?」

 百目鬼老人がペドロを睨んだ。

「プロフェッサー・ドウメキ。落ち着いて――」

 ハンナが軍帽の下で笑顔を見せた。

 仮面の笑顔だ。

「これが落ち着いていられるものか――くそ、今回は供物が三十しか揃わなかったのだ。ああ、この一番大事なときに猿神様のお怒りに触れたら計画のすべてが水の泡だぞ。忌々しい雨め――」

 百目鬼老人が雨粒を落とし続ける夜空を睨みながら歩き回った。

「いま来た!」

 ペドロが怒鳴った。

「供物だと?」

 俺は鳥居のほうへ目を向けた。ロシア兵の何人かと一緒に、松明を持った月日集落消防団が境内に入ってきた。俺たちがこの集落へつれてきた人間も鳥居を潜ってきた。ちょうど三十名、全員が老いた男女で全員が大農工場の作業服姿の定年組だ。定年組の列に道を譲るため境内にいた集団が左右に割れた。

 月日神社、

 供物、

 定年組、

 まさかのまさかだが――。

 不穏な考えに囚われていた俺の脇腹を、リサが肘でどすどす小突いた。境内にいた人の列がリサと俺の目の前まで迫っている。ロシア兵の視線はこちらへ向いていない。

 ま、尻は向けているね――。

「――チャンス到来だ。リサ、急ぐな、あくまでシレっと紛れ込めよ」

 この掛け声でリサと俺は草むらから境内へ出た。

 誰も俺たちを注目していない。

 潜入成功だ。

 リサと俺は薬で朦朧としている集落の住民の間を縫って天乃河たちの近くへ寄った。天乃河隊長も秋妃さんも宍戸も姫野も五体満足でそこにいた。ただ集落の住民同様、呆然と社へ視線を送っている。

「――くそ、猪瀬か」

 俺は天乃河隊長の肩へ手を伸ばしたところで動きを止めた。近くに松明を持った渡瀬が突っ立っている。猪瀬は俺の顔をよく知っている集落側の人間だ。騒がれると面倒になのは間違いない。雨合羽の下にあった俺の左手が背に隠したグロック短機関銃モドキを掴んだ。

「ああ、黒神、それに妹さんも神社へお参りにきたのか。それはいいことだ。しかし、どうした、顔が泥だらけだな?」

 猪瀬が言った。無精髭の生えた顔が笑っている。ぼんやりと表情ごと浮いてしまったような笑顔だ。

 猪瀬も一服盛られているらしい――。

「ああと――何度言えばわかるんだ。リサは俺の妹じゃないぞ」

 俺は拍子抜けしてどうでもいいことを言った。

「!」

 リサも猪瀬を見上げて頷いた。

「ああ、そうだったか――?」

 猪瀬は視線を落とした。

 それ以上は何も言わなかった。

 落ちた視線も上がってこない――。

「猪瀬も幻覚剤を盛られているな?」

 俺は顔を寄せて訊いた。

「え、黒神。幻覚って何のことだ?」

 猪瀬が呟くような声で返事をした。

「とにかく、俺はそこの天乃河たちをつれて帰るぜ。ここで死にたくなければ、猪瀬は静かにしていろ。わかったか?」

 俺は雨合羽の間からグロッグの銃口を猪瀬に見せた。猪瀬は拳銃を見ても表情を変えない。松明を片手にきょとんと俺を見つめている。どうも、これは放っておいても大丈夫そうだ。それでも猪瀬へ銃口を向けたまま天乃河たちへ視線を戻した。

 リサが天乃河隊長の背をバンバン叩いている。

「あっ、リサちゃん。君も俺たちのバンドのライブに来てくれたのか!」

 振り返った天乃河隊長がリサへ笑いかけた。キラッと眩しく輝くイケメン・スマイルだ。薬物の影響下でもこいつの笑顔は崩れない。

 俺は心底から呆れた。

「?」

 リサは眉を寄せた。

 不満気なリサを気にする様子もなく、

「あ、初対面だから紹介しておこう。これが俺の妹の春奈だ。うちのバンドのヴォーカルをやってる――」

 天乃河隊長が横にいた秋妃さんへ顔を向けた。

 兄は笑顔だ。

 しかし、

「違う違うの、兄さん。私、春奈じゃない、私は秋妃よ――」

 妹の秋妃さんは泣いていた。憂いの女の頬を濡らすのは降る雨よりも瞳から落ちる涙のほうがずっと多い。

「リサちゃんかよ。俺がファッキン・ベース担当の宍戸だ。シドって呼んでくれ!」

 宍戸が得意気に自己紹介した。

 リサはすごく怪訝な顔だ。

「まあ、宍戸シドは臨時のメンバーだけどな。補欠になるのか、この場合?」

 姫野が気の抜けた炭酸飲料のような笑顔を見せた。

姫野ヒメ、うっせえよ。補欠ってパンクな響きじゃねェだろ」

 宍戸がふにゃりと顔を歪めた。屋敷か輸送トラックに黒い丸眼鏡を忘れてきたらしい。目元を隠さないと小柄な宍戸は少年のように見えた。

「そんなの、どうでもいいだろ――」

 姫野はふにゃふにゃ笑っている。

「それはそうとよ、三久保ミックがさっきから見当たらないぜ」

 宍戸が辺りを見回した。

三久保ミック、まだ会場に来てないのか?」

 天乃河隊長が眉をひそめた。

「ライブ、もうじき始まるのに。どこへ行っているのかしら――」

 秋妃さんが泣き止んで顔を上げた。秋妃さんだけは組合の制服ではなく藤色のネグリジェを着ていた。その上に雨合羽を羽織っている。唇が青ざめて震えていた。しかし、彼女がその寒さを自覚している様子はない。

「おいおい、どいつもこいつもまだ完璧に薬がキマってるぜ。どうするんだ、これ――」

 俺は呻いた。

「!」

 背中越しに顔を振り向けたリサが右の拳を固めて見せた。

 これは迷える小羊を導く天使の鉄拳だ。

「ああ、ここは全員へリサちゃんパンチをくれたいところだが――」

 俺は顔をしかめて見せた。

「――!」

 腰を落としたリサが最初に狙いを定めたのは、一番近くにいた天乃河隊長のみぞおちだった。

「ああ、いや、リサ、駄目駄目!」

 俺は後ろからリサを食い止めた。

 ええい、放せ、放さんか!

 そんな感じでリサはぱたぱた暴れた。

「おい、リサ。落ち着いて聞けよ。この状況でリサちゃんパンチは絶対に使えません。天乃河たちがゲロを吐いて、のたうち回ったら、すごく目立つと思う。さすがにカンの鈍いロシアの兵隊さんたちでも、変に思って近寄ってくるだろうしな――」

 俺はリサの耳元で言った。それで納得したらしいリサは暴れるのをやめた。

「――ああ、もう、やっぱりこれは面倒だ。リサ、俺たちだけで帰っちゃうか?」

 俺は同じ態勢で伝えた。

「!?」

 ぶんとリサが勢いよく仰け反った。

「あっ、いたっ!」

 俺も悲鳴を上げて仰け反った。後頭部を使ったリサの頭突きが俺の鼻づらを叩いたのだ。ああ油断した。こんな危険な状況でリサが新技を披露するとは――。

 いや、時と場合を考えろ、この馬鹿たれめが。

 二人まとめてロシア兵に撃ち殺されたいのか。

 俺はリサを睨んだ。

 睨みつけてやった。

 リサは真正面から俺を睨み返してきた。

 リサの鋭い眼光は鼻を手で押さえて涙目の俺より迫力がある――。

「――ああもう、リサ、わかった。俺が何とかするから」

 俺はすぐ降参した。実際、いがみ合っている場合ではないだろう。手を外して見ると、そこに血はついていなかった。鼻血は出ていないらしい。ああいや、スポーツタマスク越しだから鼻血はやっぱり出ているかも知れないな――。

「――おい、天乃河、さっさと目を覚ませ。ここから逃げるぞ」

 俺は天乃河隊長の胸倉を引っ掴んで小刻みにビンタをくれてやった。

 目立たないようにだから今ひとつ威力不足だ。

「ははっ、痛いじゃあないか、黒神――」

 ビンタをもらってもイケメン・スマイルを崩さない天乃河隊長だ。

 くっそ、この野郎はこんなときまで――。

 俺はいよいよ頭にきて拳を握り固めた。

 こうなったらグーでぶん殴ってやる。

 その綺麗な顔を吹っ飛ばすほどのグーパンチだぞ。

 覚悟しろ、天乃河礼音――。

 俺が拳を振り上げた途端、秋妃さんががばっとしがみついてきた。とてもいい匂いがする、やわらかくて冷えた女の肉体からだだ。

 それでも表情を消した俺が視線を目を向けると、

「駄目、駄目よ、黒神さん。それ以上、兄さんを殴らないで。私が悪いの、悪いの。愚図でのろまで暗い妹だから――!」

 と、秋妃さんから懇願された。泣き腫らして赤くなった瞳にまたも涙が溜まっている。

 いや、妹のあんたのどこが悪いんだ。

 どこからどう見ても悪いのはあんたを虐めている兄貴の礼音だろ。

 本当によくわからない兄弟だ――。

 宍戸と姫野が「そうだ、そうだ」と頷いた。

 どいつもこいつも例の毒きのこでラリっている。あの毒きのこがここまで強烈な毒性を持っているものだとは考えていなかった。この状態の人間を強引につれて帰るのはちょっと無理があるよなあ。

 ここで俺は事前に立てた人質奪還作戦の半分以上を諦めた。

 リサも視線を落とした。

 うん、無理だよな、これ――。

 俺が天乃河隊長の胸倉から手を放すと、

「黒神、ちょっと待ってくれ」

 と、今度は横から猪瀬が声をかけてくる。

 ああもう本当にうるせェな。

 このヤク中どもが――。

「猪瀬、今は見ての通りの取り込み中だ。重要な話があってもそれはあとにしろ。さもないと、今すぐぶっ殺すぞ」

 にっちもさっちもいかない状況だ。

 俺は本当に本気で苛々している。

 リサだってそうだろう。

「黒神と黒神の妹さんは、どうしてここから逃げる必要があるんだ?」

 猪瀬が殺気立つリサと俺を交互に見やった。

「どうしてって――」

 俺は顔をしかめるしかない。

 季節は真冬。

 時刻は真夜中。

 氷のような雨の降る神社の境内へ幻覚剤を投与された人間が大量に集っている。それを武装したロシアの兵士が取り囲んでいた。どう考えても面倒事が起こりそうだ。まさか、お祭りだとか盆踊りだとかをやるつもりでもないだろう。そもそも、もうお祭りをやる季節でもない。汚染列島の暦は年の瀬だ。

 そこまで考えて俺はリサへ視線を送った。

 リサは二度頷いて同意した。

 うん、そうだよな。

 こんな危険な状況からは誰だって逃げたがるだろ。

 正常な判断力を失っていない限りは、だ――。

 俺は何も言わずに猪瀬を見やった。

 毒きのこでへべれけになっている猪瀬へ何を言っても無駄だろう。

 こちらが何か質問してもまともな答えは返ってきそうにない――。

「――月日神社だ」

 猪瀬が社へ顔を向けた。

 それは幽鬼のような顔と挙動だった。

 俺はその迫力に押されて社へ目を向けた。社の前に定年組が並んでいる。拝殿に向かって百目鬼老人が祝詞のりとのようなものを詠唱していた。その左右でハンナとペドロも社へ頭を下げている。外国人が――しかもロシア人が、日本の神社に頭を下げているのは滑稽な光景だった。こんな状況でなければ、俺は笑っていただろう。だが、俺は笑わなかった。境内に集まった集落の住民も笑っていない。ここにいる人間はすべて、社の光景をぼんやりと、しかし、身動きをせずに見つめている――。

「――黒神。あのお社は門だ」

 猪瀬が言った。

「何だ?」

 俺は渡瀬へ胡乱な視線を送った。そこにあった顔は芒洋ぼうように真剣だった。

 猪瀬は魂があってないような表情で、

「一霊四魂が高天原たかあまはらから現世へ顕現する為に使う門だ。人間のする不浄が過ぎたんだ。だからだ。門から荒魂あらみたまだけが現世へ――」

 俺へ語った言葉なのかどうかはわからない。猪瀬の視線はずっと社にある。声も態度も地についていない。猪瀬は現世から浮いていた。天乃河たちだって猪瀬と同じだ。顔を赤くしたリサが天乃河隊長の胸倉を掴んでぐわんぐわんやっている。揺さぶられてる当人は笑っているだけだ。

 効果はあまりなさそうだな――。

「――猪瀬、それは百目鬼がやっているカルト宗教の話か?」

 俺は声を低くした。百目鬼直永は薬物と自前のカルト宗教を利用して月日集落の住民を洗脳しているのだろうか。洗脳した住民を集落を維持する労働力として使い共産的な共同体を形成しているのかも知れない。百目鬼という老人は生粋の共産主義者コミュニストだ。ロシア極東軍が月日集落の運営に協力しているところを見ると、これもあり得ない話ではないだろう。

 しかしだ――。

 近年のロシアは共産主義的ではなく、単独の指導者がやる強権的な政治体制――帝政主義的な傾向が強い。そのコントロール下にあるロシア極東軍が過去の亡霊のような体制や主張に――古い正義体系イデオロギー拘泥こうでいした作戦を計画・実行するとも考え辛い。

 百目鬼直永もロシア極東軍も何か別の目的で行動をしている筈だ。

 だが、それは何だ?

「――隠秘主義オカルト?」

 だいぶ遅れた猪瀬の返事だ。

「ああ、もう、うるせェな――」

 俺は呻いた。

「違う、黒神、確固とした現実だ。事実だ。お社の恩寵を受けた月日集落はNPCに襲われない。御魂に選ばれた土地から黒神と妹さんは逃げるのか。もったいない。やめておけ。月日集落にいればNPCも胞子も放射線も恐れることはない。汚染に恐怖することはもうない――」

 猪瀬が笑った。

 寒気のする笑顔だ。

 一体、何がおかしいんだ。

 俺は怒鳴りそうになった。

「俺たちは――人類は不浄だ」

 猪瀬が幽鬼の笑顔を俺に向けた。

 見るな。

 こっちを見るな。

 そんな目で俺を見るんじゃねェ。

 俺はそう思った。

 薬物の効果で広がった猪瀬の瞳孔に焦点が無い。

 NPCの眼球痙攣とは違うものだ。

 それでも俺は本能的に危機感を覚えた。

 リサは天乃河隊長を解放して俺の脇へすっと身を寄せた。

 祝詞を終えた百目鬼老人が拝殿にある鈴を――本坪鈴ほんつぼすずを鳴らした。

 ガラン、ガラン、ガラン――沈黙した境内に鈴の音が響く。

 涼し気ではない。

 神秘的でもなかった。

 何か致命的なものが壊れていく音のような――。

「不浄の呪いは――それは人間が持つ既存の概念だ。既存の概念に俺たちはずっと――生まれたときから――呪われている。不浄の呪いは――呪いは清められて人間は次の段階へ進化を進化だ。わかるか、黒神は進化という進化が。それは新たな――まったく新しい概念を人類が得る――進化だ。人間も人間の概念も進化が必要だ。この汚染下で人類の存在を維持するために必要な進化――ああ、まさか、黒神と妹さんは、神主様から猿神様のことを何も聞いていないのか?」

 猪瀬は熱に浮かされたように語っていたが、言葉の最後のほうで正気の表情を見せた。

「猿神って何だ?」

 俺は適当に話を促した。俺は社ではなく天乃河たちを気にしている。ほんの一瞬。ひとかけらでいい。天乃河たちの誰かが正気を取り戻せば境内の脇にある草むらへ引っ張り込める。リサと俺だけでは手が足りない。ロシア兵が境内にいる人間を警戒をしている。動くとき時間を掛けてはいられない。

「ああ、そうだよ、月日神社の猿神様だ――」

 猪瀬は社へ視線を戻した。

「このヤク中め、いつまでくだらねェ戯言たわごとを言っていやがる。猪瀬、それよりどういうことだ。ロシア人どもは何を警戒している――?」

 俺は境内へ視線を巡らせた。ロシア兵はすべて銃口を社へ向けている。ポンチョのフードの下にあるロシア兵士の顔が強張っていた。

 猪瀬の返答は当たり前のようにない。

 顔を歪めた俺はリサへ視線を送った。

 リサは眉を強く寄せて社へ向けて顎をしゃくった

 そこについていた雨の滴がぱっと飛ぶ。

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