第5話 絶たれたままの絆(ハ)
先導する内山さんが校舎の階段を上がるたびに胞子・放射線観測機を使った。
検出された胞子はなかった。
放射線もなかった。
俺は口と鼻を覆っていた耐胞子スポーツタマスクを外した。
横にいたリサもそうした。
ゾンビと名前がついていても、ゾンビ・ファンガスは乗っ取った身体を支配して活動する知能を持った菌類だから生きている。NPCの巣は、NPCが食い散らした食料やら、NPCの排泄物やらが散らばっていてひどい臭いがするものだ。深呼吸をしても汚物の匂いはしない。微かな人間の匂いが残って、その上へ学習机の匂いがかぶっていた。
学校の匂いだ。
その匂いを嗅ぎながら探索を進めて四階まで上がって、『3-3』と引き戸の上にプレートが突き出ていた教室に入ると、黒板には生徒が書いたらしい落書きが残っていた。リサがクリス・ヴェクターのフラッシュ・ライトを黒板に当てて、様々な色のチョークで書かれた元気な文字や可愛い絵をじっと見つめている。俺はリサの横顔を眺めていた。電灯のつかない教室は暗かった。
リサの感情が今の俺には見えない。
「どの教室も問題がないな、コノヤロー」
内山さんたちが教室へ入ってきた。
「団長、屋上にエリア全体の監視・連絡の班を待機させようか。この校舎はここらで一番、背の高い建物だから監視塔にはもってこいだろう」
島村さんが言った。
「そうだな、おい、下の
内山さんが室の窓際に寄っていった斎藤君と橋本へ顔を向けた。
「――団長、運動場は問題なさそうだ」
「万全だ!」
斎藤君と橋本は窓から運動場を見下ろしていた。
気になった俺も窓際に歩み寄って、
「内山さん、西に光が見えるよ。何かの照明みたいだ」
窓の外に一点だけ照明がある。
ここからさほど遠くない場所だ。
「黒神、ウチの班が使っている照明じゃないのか、コノヤロー?」
内山さんが俺の横にきた。
「移動をしている様子はないな――」
俺は顔をしかめた。
「あそこらのエリアの担当は山下の班だったよな?」
島村さんが教室の窓を開けて首を捻った。
窓からは冷たい夜風が吹き込んでくる。
「副団長、山下の班なら、もう下で合流をしていた筈だぞ――」
斎藤君が暗い声で言った。
「していた!」
橋本が吠えた。
「集落の人間が、まだあそこに残っているのか――どうする、内山さん?」
俺は内山さんへ視線を送った。
「――どうするって、黒神。今から行って確認をするしかないだろうよ、コノヤロー」
内山さんが踵を返した。
「まあ、そうだな――」
諦めたように言った島村さんが内山さんのあとを追った。
「まさか皇国軍の奴隷審査で弾かれた連中か――」
「だとすると――」
斎藤君と橋本が呻き声と一緒に並んで教室から出ていった。
「行くぞ、リサ」
俺は窓を閉めてまだ黒板を眺めていたリサへ声をかけた。
振り返ってリサが頷いた。
§
人工の光らしきものがあったのは中学校の西のエリアだ。
崩れ落ちていない新東名高速道路の高架下をくぐってすぐのところに照明をつけている家屋があった、二階建てだ。内山さんの指示で、そこに向かった四台のハンヴィーはすべ家の正面に乗り付けた。家の裏手は小さな山になっていて藪が深い。人員を割いて警戒するのは逆に危険だと判断したらしい。正面の道を東西でふさぐような形でハンヴィーが停車した。
「微量だが胞子の反応があるぞ」
「マスクを外すなよ!」
「手の空いてる奴は除菌剤を周辺へ散布しておけ」
「おーい、ミニガンの予備バッテリーはどこにあるんだよお――?」
「うお、
ハンヴィーから降りてきた内山さんのところの団員たちが、手早くNPC迎撃の準備を整える。細い道は東西がハンヴィーの車載ミニガンで塞がれた形になった。
「?」
ハンヴィーから降りたリサが俺のジャケットの袖を引っ張った。
「ああ、リサ。俺にも聞こえる。ディーゼル発電機でこの家の照明をつけていたんだな」
俺は二階の窓からも電気の明かりが漏れるその家を見上げた。赤い屋根の四角い家だ。南海トラフ大震災に耐えたものだから、その当時は新築だったのだろう。今は外壁が所々と剥がれ落ちていた。軒先にある
「突入するのは、島村、斎藤、橋本、それと――
家へ突入する人員を選んでいた内山さんが、寄ってきた八反田へ視線を送った。
「じ、自分だってやれるっスよ」
八反田はポンプ・アクション式のショット・ガンを持っていた。
「内山さん、八反田の代わりに俺がなかへ行くよ」
俺は声をかけた。
「家のなかはたぶん危ねェぞ、黒神、コノヤロー?」
内山さんは眉根を寄せた。
「まあ、俺は内山狩人団の傭兵だからね。危険なところで働かせてくれよ――」
俺は少し笑って応えて、
「――リサはついて来るな」
後ろにいたリサへは笑顔抜きで言った。
「ああ、リサちゃんは来なくていいぞ。危ねェからな」
内山さんが頷いた。
「!?」
カッと殺気立った様子のリサが手にもったクリス・ベクターのコッキング・レバーをガチャリと引いた。
どうしてもついてくるつもりらしい。
「――まあいいが、俺の背中を撃つなよ?」
俺はすぐに諦めて言った。
「どうしても来るのか、リサちゃん――」
内山さんが呻くと、
「!」
「!」
リサが二度も頷いた。
リサは仕事熱心なのだ。
あるいはだ。
リサはNPCを憎んでいるのかも知れない――。
「――ま、行くか。お前ら、後ろは頼んだぞ、コノヤロー」
内山さんが全体へ声をかけて照明のある家の玄関口へ向かったところで、
「あっ、なかから開いた――」
八反田が呻き声を上げた。
玄関の扉が内側から開いたのだ。
なかから明るい光が漏れてきる。
そこに人影が二つあった。
夫婦のようだった。
「皇国――の――ですか?」
男のほうが言った。
「ようや――私たち――助け――来て――のね!」
その横の女が声を出した。その言葉が両方とも途切れていた。表に出ていた団員の連中が玄関口に現れた二人へ一斉に銃口を向ける。それでも夫婦が悲鳴を上げるだとか、騒ぐだとかそういうこともない。静かだった。その家の電源を確保しているディーゼル発電機の音だけが聞こえる。
「ああ、いやいや皇国軍は違うんだ。ええっと――」
俺は手で後方の射撃を制しながら前に出た。
内山さんも無言で俺の横に並ぶ。
「――田辺さん。あなたたちは田辺さん夫妻だね。俺たちはNPC狩人組合の組合員なんだよ」
俺はブロック塀についていた表札へ視線を送って言った。薄暗くて表札の細かい部分までは読み取れなかったが、田辺さん一家はこの家に六人で住んでいたようだ。
「組――合員。NPC――狩人組合――の?」
田辺主人が、途切れ途切れの言葉で言った。上品なセーターの胸元にべったりと黒いものがこびりついていた。
「私たちを――
頬に手をやった田辺夫人もやはり途切れ途切れの言葉だ。田辺夫人はロング・スカート姿の上に薄手のカーディガンを羽織っていた。これもそこらじゅうが黒い染みで汚れていた。頬に当てた女の手の先にある爪が長くてぶ厚く鋭い。爪の先に何か黒いものがこびりついている――。
「――うん、そうそう、そうなんだ。皇国軍に頼まれて、俺たちは田辺さん一家を向かえにきたんだよ」
俺は笑って見せた。もっとも、マスクで鼻と口を隠してるから、外から見れば目元だけの笑顔なのだろう。
「良か――た!」
田辺主人の口から白く濁った唾液が大量に垂れ落ちた。
「子供たちも――保護して――もらえ――ね!」
叫ぶように言った田辺夫人の両目はあらぬ方向を見つめている。瞳孔が向いているのは、俺がいる正面ではなくてそれぞれ左と右だ。
広範囲をより多く見るために――。
「ああ、そうなんだよ、だから、安心をしてくれ――」
俺は内山さんに目配せをした。
内山さんは小さく頷いた。
次の瞬間、俺はレッグ・ホルスターのリボルバーを引き抜いた。
「カァン、カァン、カァン――!」
乾いた銃声が夜空に響いた。
田辺主人の頭へ二発の鉛弾を叩き込んだのは、俺のS&W M686だ。
田辺夫人の頭へ一発の鉛弾を叩き込んだのは、内山さんのデザート・イーグルだった。
揃って頭を吹き飛ばされた夫妻は二人仲良く仰向けに倒れた。
「――ああ、団長と黒神さんがやったぞ!」
後ろにいた団員の誰かが叫んだ。
「あーあ、検疫もせずに強引だな。こりゃあ、組合員規則違反だよ」
島村さんがMP5の銃口を夫妻の死体から外して目元に苦笑いを見せた。
「無駄に手間取るよりずっといい」
斎藤君は夫妻の死体にAK47の銃口をまだ向けていた。
「だな!」
頷いた橋本君はKSGの銃口を開いた玄関へ向けていた。奥には照明のある板敷の廊下が見えた。そう広くはない。そこからNPCが飛び出してくる気配は今のところはない。
「こいつら――田辺さん夫妻ね。胞子感染者だよなあ、どう見ても――」
俺はリボルバーに弾を込めながら言った。シリンダーにあった空の薬莢は二つだけだ。
「まだ頭のなかでゾンビ・ファンガスが発育しきっていねェ奴らだなあ。一番、厄介な時期だ。非常手段も仕方がねェよな、コノヤロー」
内山さんが銀色のデザート・イーグル片手に笑った。
「今回は外見で判断ができたから助かった。感染したばかりの個体だと感染者テスタを使わないとわからないからね」
俺はシリンダーを銃身へ戻してリサへ視線を送った。リサは田辺夫妻の死骸を見つめている。夫妻の割れた頭から玄関先のタイルへ中身が流れ落ちていた。寄生したゾンビ・ファンガスが食い込んで半分は白くなった脳髄だ。直に見るとゾンビ・ファンガスが人間を蝕む過程がよくわかる――。
「俺、NPCになる前の人間を初めて見た――」
俺の後ろで八反田が呻いた。
「顔色が悪いぞ、
内山さんが自分の背中越しに八反田を見やった。
「だ、大丈夫っス。大丈夫っス」
そう言っているが、八反田の顔は真っ青だ。リサのほうがよほど落ち着いている。どうも、八反田はNPC狩人としての経験が足りていないようだった。NPC狩人はNPCだけではなくNPC化する前の人間も狩るのも仕事になる。
「しかし、黒神は銃を抜くのが早いなあ、コノヤロー!」
内山さんが目尻のシワを増やした。
「俺の数少ない自慢なんだよ」
俺は目元に愛想笑いを浮かべた。
「家のなかからNPCが飛び出てくる気配はないな」
島村さんは玄関口から家のなかを覗き込んでいた。
「ああ――」
斎藤君が頷いた。
「どうする、団長!」
橋本が振り返って怒鳴った。
「どうするって屋内も確認するしかないだろう、バカヤロー」
内山さんが田辺家の上がり
そのあとを島村さんと斎藤君、橋本が続いた。
「リサ、大丈夫か?」
俺は訊いた。
リサは俺の横で頷いた。
俺とリサも少し遅れて田辺家にお邪魔する。
土足で失礼、と――。
「団長、副団長、気をつけてな!」
俺の後ろで団員の誰かが言った。田辺家に入るとすぐ異常があった。耐胞子スポーツタマスク越しでも異臭がしたのだ。何かが煮える匂いだ。それは食い物の匂いだが、本能的に受けつけない匂いだった。少なくとも、たいていの人間は拒絶反応を起こす匂いだと思う。異常が漏れて出ている廊下の突き当りに先行した内山さんたちが固まっていた。彼らは躊躇している。声を出さずに呻いた俺が視線を送ると、リサの眉間が歪んでいた。リサも戸惑っていた。怯えているようにも見えた。
「リサ、覚悟をしとけよ。これだってNPC狩人の仕事なんだからな――」
俺は言った。感情を抑えたこんだつもりだったがそれでも硬い声だった。リサは頷かなかったが、その鋭い目つきを見ると先にあるものを見る覚悟を決めたようだ。
最悪だ。
声が聞こえてきた。
「痛いよ、助けて、助けてよぅパパァ、ママァ――」
掠れた声だった。廊下の突き当りにある部屋の出入口から湯気が漏れている。先にあるのはおそらく台所だ。家のなかはすべてが明るかった。廊下の床に奥から何かを引きずった黒い跡があった。階段もそうだった。壁にも黒い染みがついていた。
「――どうする、俺が行くか、内山さん」
俺は内山さんの背に言った。
「いや、黒神、俺の団でやるぜ、コノヤロー。斎藤、橋本、お前らいけるか?」
内山さんは振り向かずに言った。
「――橋本、行くぞ」
「時は来た!」
「――三、二、一、行け!」
斎藤君と橋本が声を掛け合ったあと銃を構えて台所へ突入した。
「うあっ!」
「あっ、くそっ!」
すぐ二人の悲鳴が台所の外へ聞こえた。銃声はしなかった。一呼吸遅れて、銃を構えた俺たちは田辺家の台所へ入った。
「痛いぃい、痛いよぅ、パパァ、ママァ――」
その呻き声の主は黒ずんだ床に転がっていた。
「この子もくそっ、バカヤロー、コノヤロー!」
内山さんが呻いた。四肢が切断された男の子が床に転がっている。身の丈を見ると年齢は十歳以下。
おそらくこの彼は田辺夫妻の――。
「あの夫妻が『食料にしている途中』に、この子は胞子へ感染したのか――」
島村さんが呻いた。
「NPCは共食いをしないからな――」
俺は奥歯を噛みしめた。
「奴らの料理が鍋でまだ煮えてるぞ――」
斎藤君はコンロの上でコトコトと湯気を上げる鍋を見つめていた。
電気コンロはまだ熱を保っている。
「まさか――」
橋本が鍋へ歩み寄っていった。
「橋本、鍋の蓋を開けるな。そんなものは見る必要がないからな、バカヤロー」
内山さんが言った。もっとも血みどろになった台所を見るだけでも、そこで何が行われていたかは想像できる。流し台のあたりが特別ひどい。まだ肉の塊もまな板の上に置いてあった。大量の蠅がそこに飛び回っている。何もかもが腐りかけだ。腐りかけの明るい我が家で四肢の無い子供が母親と父親を呼びながら泣いていた。良く見ると四肢の切断口に白いものが蠢いている。
ゾンビ・ファンガスの菌糸だ。
人間なら出血性ショックで絶対に生きてはいられない状況だが、ゾンビ・ファンガスの菌糸の再生力がこのNPC化直前の子供の生命を保っていた。子供の外見だがこれはもう子供ではない。台所の床に転がっているのは化物だ。泣き声を上げ続ける口からは、のこぎりのようになった牙が見えた。垂れ落ちる涎は白く濁っている。それぞれあらぬ方向を見つめる眼球からは涙が流れ落ちていた。その涙だけは透き通っていた。
残した人間性は悲嘆のみ、か――。
悲嘆のみになった存在の近くで腰を落とした内山さんの背へ、
「内山さん、その子――いや、そのNPCの駆除は俺がやろう」
俺は言った。
「ああ、いや、黒神――」
内山さんが背中で呻いた。
「いいからいいから。世話になっている礼みたいなものだ。内山さん、危ないから、そこを退いて――」
俺はリボルバーの銃口を床の化物へ向けた。
立ち上がった内山さんが脇に避けると、
「パァン、パァン、パパパパァン!」
銃声が立て続けに鳴った。
俺はまだ撃っていない。
その俺に身を寄せているリサも違った。
内山さんが振り向いた。
「――ああ、斎藤君か」
俺は呟いた。
斎藤君がAK47を使って床にいた化物の頭を潰れたトマトに変えた。
「――終わったぞ、この悪魔め!」
斎藤君は肩で息をしている。
長い前髪の間で彼の眼球が血走っていた。
「落ち着け、晴彦――」
電気コンロを止めて歩み寄ってきた橋本が斎藤君の肩に手を置いた。晴彦は斎藤君の名前だ。斎藤君が胸元のロザリオを震える左の手で握った。右の手から下がったAK47の銃口からまだ白い煙が上がっている。
「はっ、はっ、吐きそうだ――」
俺の頭の後ろから声が聞こえた。
振り向くと八反田が顔を真っ白にしていた。
青を通り過ぎて白だ。
「ああ、八反田もきてたのか。吐くなら外へ出てやれよ。家のなかは胞子が濃く飛んでるぞ。マスクを外すとゾンビきのこに感染するよ」
俺が忠告すると、
「うえぷっ――」
八反田はマスクをつけた口元を手で押さえて田辺家の廊下をドタバタ走っていった。
「――島村、すまねェがな」
内山さんが島村さんへ視線を送った。
「うん――」
島村さんは台所の出入口で頷いた。
「デジカメで記録を撮っておいてくれ。組合本部へNPC三体駆除の報告だ。俺は黒神とリサちゃんをつれて二階の様子を見てくるぜ、コノヤロー」
内山さんが台所から廊下へ出た。
俺とリサは何も言わずに内山さんの背を追った。
「うん、わかった――」
力なく頷いた島村さんが腰のポシェットからデジタルカメラを取り出した。
内山さんと俺とリサで二階を見て回った。そこは子供部屋があった。一階よりも部屋は綺麗だった。漫画本や学校の教科書が並んだ本棚がある。学習机の上に開いたままの計算ドリルもあった。使い古されてボロボロになったものだ。二段ベッドの下の段に携帯ゲーム機がひとつ置いてあった。汚染前の子供はこんな感じのゲーム機をいっぱい持っていた。今では珍しい。古い型のゲーム機のように見える。父親が持っていたものを、子供にくれてやったのかな。俺はそう考えた。子供が並んで映った写真が壁に飾ってあった。三人並んだ子供のうち真ん中にいたのは台所の床にいた彼だった。田辺家の二階にはここまでの生活の残滓があった。
俺も内山さんもリサも、無言のまま階下へ戻った。
「――黒神、この家ごと燃やしておくか。本気で胸糞悪いぜ、バカヤロー」
内山さんが狭い階段を降りながら唸った。
「もちろん、俺だって気分が良くないけどね。放火したら裏手に燃え移って山火事になっちゃうよ。とにかく、さっさと片づけて表へ出よう」
俺が言うと前にいたリサも頷いた。
「このあとはどうするかな。周辺をこのまま偵察するか?」
内山さんが階段を降りきったところで立ち止まった。
「どうかな、今回はあくまでNPC駆除の依頼だからね。それに生きたNPCがまだいるなら、俺たちを襲ってきている筈だ。表で発砲をしている気配は――」
俺は言葉を切って聞こえてくる音がないか確認した。振り返ったリサが俺へ頷いて見せた。こいつの聴覚は抜群で俺には聞こえないような小さな音も聞き取れる。
「それもそうだな、コノヤロー」
内山さんが頷いた。
「でも、この周辺には胞子が飛んでるみたいだ。だからきっと、この近くにゾンビ・ファンガスの苗床があると思う。NPCの死体が何個か――」
俺は言った。
内山さんは返事をせずに、
「おう、お前ら、記録は終わったか?」
台所から出てきた島村さんたちへ顔を向けた。
島村さん、斎藤君、橋本は揃って顔色が良くない。
「内山さん、夜遅いからこの周辺の調査は明日に回そう。暗いなかを動き回るのは
俺は少し笑って言った。
リサが一番先に頷いた。
大顎に手をやっていた内山さんが、
「そうだな、それが手堅いな、黒神、コノヤロー」
そう言うと、周囲の男たちも頷いて同意した。
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