美波、流れ星に祈る
「……ぷっ、くくくっ、美波って本当面白いな。いい加減、俺を狼にさせてくれ。」
「はっ! キ、キスするんですか?どうしたら……!!!」
慌てふためいている途中で唇を塞がれた。
一平くんは、私の唇に自分の唇を軽く重ねた後、カサついた部分をペロリと舐めるように軽く吸った。
なんだろう、この、頭が沸騰する感覚。そして首から下はなんだか軟体動物になったみたい。
私は生まれて初めての感覚に体を支配されている。
(一平くんのキスって気持ちいいな。)
この人はこの半年、私を楽しませてくれたし、またこうして今も幸せな気分に浸らせてくれる。私にとって、なんて偉大な存在なんだろう。
(私、これ死ぬほど好きかも!)
そう心で叫んだ瞬間、一平くんはキスをやめ、私をぎゅっと抱きしめた。
一平くんの心臓の鼓動は大きく速い。私の心臓も、彼の体に反響して感じることができるのだが、それ以上の心拍数だ。
「俺、美波と付き合って良かったよ。」
なんと嬉しいお言葉。
一平くんにとって私は最初は『好きか嫌いかって言ったら好き』くらいの存在だったのだ。それが、確実に距離を縮めてきている。
私たちは向き合ったまま、再び夜空を眺めた。
「よし、次に流れ星が来たら、お願いしよう!」
「何を?」
「それは各自で考えてください。手短にな。消える前に言わなきゃならないんだったよな。」
「わかった。」
「それ見たら、もう今日は帰るべ。家の人心配するだろうし。」
「うん。」
私の願いは決まった。私も一平くんにとって偉大な存在になりたい。なれるよう努力する!
よーし、流れ星、特大のキラキラ星、来ーーい!
すると間もなくして本当に明るい星が流れた。
シューーっと伸びる弧は、明らかに今までのものより長く、光も強い。
私は心の中で必死に願った。
……願い事に気を取られていたけど、なんだな様子がおかしい。
……って、なになに? 火の玉? こっちに来たーー!!?
「美波、危ない!」
一平くんの声が聞こえた直後、辺りは眩い光に包まれて白くなった。隕石? のせいか周囲がちりちりと熱い。
(何が、起こった? ……そうだ、一平くんは?)
「一平くん? 一平くーん、どこ?」
私は立ち上がって一平くんが座っていた場所をよく見ると、草むらが焦げ付いている部分に、小さな隕石の欠片が埋まっているのを見つけた。
それはまだ煙を出していて見るからに熱そうだった。
それでも、一平くんの姿はない。
草は何かが転がった後のように一方向に折れ曲がっており、私は隕石の欠片から一旦離れ、その軌跡をたどることにした。すると、たどっていった先に予期せぬ物体を発見してしまった。
それは、私の身近には存在しない、まさしく未知との遭遇……。
それは、啼いた。
「オギャーー、ンキャー、ウンギャ!」
「ってか、なんで赤ちゃん……?」
本当に、なんでよ。
しかも、衝撃的なことに、その謎の赤ちゃんは、なぜか一式落ちていた、一平くんの衣服の中でモゾモゾ動いていた。
「まさか、一平くんなの? まさかね……。」
私は、恐る恐る、赤ちゃんのお股を観察した。
(……いやだ……男の子……。)
これから、どうしたらいいんだろう。
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