3 街を歩けば

 寒い風が吹く。

 腐葉土のベッドから起きた。

 上を見ると、また少し星空が変わっていた。

 星空は少しずつ変わっていく、

 きっと、この町を捨てた人にはわからない楽しみだ。

 星は美しく、一点を中心に回っていく、まわっていった先に、さらなる変化がある。そう思うと、とても楽しみだ。

 冷たい風が吹く。

 少し歩きたくなった。


「風の行くままに歩くのも、悪くはない」


 そんな気分だった。誰に聞かせるまでもない独り言。

 僕の心の赴くままに出てきた独り言が、気持ちよく風に溶けた。

 足を進める。心が躍る。

 冷たい風が、また吹く。

 それが共に踊ろうと誘っているような、ときめきを感じさせる。

 風に背を押されるような感覚と共に、僕は足を進める。心が、大いに踊る。

 もう何千、何万と、通い詰めたこの町だ。それでも、やはり心が躍る。自然もよく見ると変化をしている。巨木が倒れ、新芽が萌え出る。

 一人でこれを楽しめている自分がいた。きっと、この廃墟のような町で僕は救われていた。

 この町が無かったら、僕はきっともっと退屈だった。

 そう思えるほど、心が躍っていた。

 荒れた小道を歩く。冬だからか、雑草はない。

「ふぅ」

 吐いた息が真っ白だった。まるで雲のようだった。

 ふわりと漂って、呼気は霧散した。

 そして、また僕は歩く。

 あてもなく、ゆっくりと歩いてた。

「……そうだ、城跡の方に向かおう」

 この町には、ずっと昔にあった城跡があった。

 そこに生えている、古い柳の木が好きだ。

 古から、僕たちの愚かさを見ているようで。

 だから、気の赴くままに城址の方に向かおうと思った。

 ただ風の赴くまま、星の赴くままの、行動だった。

 だから、僕は知らなかったのだ。

 これが、僕を大きく変えるなんて。



          続く

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