第2話



ジーンが気がついたときにはもう遅く、周りには”とてつもなく恐ろしい魔女”として認識されていた。


気がつくのが遅くなったのは周りがどう思っているかとか気にしている暇もないくらい必死に迷宮、そうダンジョンを攻略していたからである。


そして悲しきかな、原因はその姿を人々はみて、恐れ慄かれていたのだった。


ダンジョンに行くまでは普通だったと思う。それまでは薬草の採取や公的施設の掃除やスライムの討伐など確実にこなせるクエストを受注して、経験を積んでいった。そこでギルドで騒いでいる冒険者たちと話し…てはいないかもしれない。


だいたいギルドでたむろっている人間の大半は酔っ払いか声のでかいヤツらだからだ。


ジーンは酔っ払いと声のでかいやつがあまり好きではなかった。でもそれ以外の冒険者とは差し障りのない話をしていた。それこそ有益なあそこの武具屋は質がいい、あのモンスターはどこが弱点だ、どこそこの飯屋が美味しい、とかたくさん話をしていた。今もまだ私が恐ろしい魔女じゃないと知っていて交流がある冒険者もいるが、悲しきかな情報屋との方が呑んだり話していたりする気がする。


閑話休題、ダンジョンに入れるようになってからというもの、ジーンはどうするか悩んだ。初層ならともかく、最階層まで到達した、ボスを討伐するのであればパーティーを組むのが定説である。


斥候、アタッカー、タンク、ヒーラー、テイラー、弓兵…、そのパーティー、階層のモンスター、条件によってどの役職をメンバーにいれるか決められる。


だがジーンはそれら全てが面倒くさかった。クランに入り、人間関係を築き上げ、連携を磨き、己の手の内をみせる。それらをやらなくてもいいのでは?と思ってしまったのだ。


とどのつまり、慢心である。慢心、ダメ、絶対。


それからジーンには神様から特典として能力をもらい、一人でダンジョン攻略を達成できるだけの力と知恵があったのも原因の一つであった。ここが二十一世紀じゃない世界だからと倫理観を若干捨てたコスパを考えたダンジョン攻略の仕方もよくなかった。他の冒険者たちの反応をみれば一目瞭然なのにジーンはダンジョンをクリアするためあるときは毒を散布したり、囮を使って階層を走り抜けたり、モンスター同士を争わせたり、卵を盗んでみたり、切り刻んだモンスターを使ったり、とまあ有りとあらゆる手を使って階層をクリアしていく。最下層もそんな調子でクリアしてしまった。


そんなわけで二十一世紀の倫理観を若干捨て、ダンジョン攻略をしてしまった結果ジーンは”とてつもなく恐ろしい魔女”と呼ばれるようになってしまったのだった。




もう、手遅れだなこれ。諦めて漂浪でもしようかなと考えていた矢先だった。一目惚れしたのである。この下りは割愛して結論から言ってしまえば失恋したのだが。


その結果、やっぱりこの世界きた当初に抱いた願望。つまり顔がいい子、侍らせるか!になったわけだが。前途多難である。



そもそもダンジョンを必死になって攻略したのだってお金欲しさだ。お金がなきゃ養えないし、そもそも自分も養えなければ他人なんてもっと養えるはずがない。それに顔がいい子を養うならばそれそうの維持費がかかる。維持費をケチるなんて持っての他。なんて色々やっていたら紆余曲折してしまったがここからがスタートなのだ。不名誉な二つ名がもう既にあるのだから、気にしたら負けである。


ジーンは未だにそういった用途で奴隷を欲していると思われているのだろう。まだリュウは精神耐性やら鉄鋼の肉体をもった奴隷の話をしている。少し鋼鉄の肉体をもった奴隷の話は興味があるがそれはそれ。


ジーンはジーンのためだけの楽園を作る。そのためにはまずリュウが魔法やダンジョン研究の為に奴隷を買いにきたという前提を崩さなければならない。ならば



「すみません、年端もいかなく、完全に身寄りがない奴隷を求めているのです。」


「…なるほど、そうでしたか!ならこちらのダンジョンにて見つかった麻痺耐性のあるこちらの亜人族の十歳などいかがでしょうか?」



あるえ?どうしてそうなった??

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