俺よりすげえ奴に会う

 過去最大級に最悪の朝を迎え、私は烏山病院へ向かった(付き添いの母用に一本余分とはいえ、お茶を買って行ったので遅刻しかけたのは内緒だ)。

 私は生まれつき変(意外と突拍子もない行動を取ることもあるし、人と上手く関われない。私の中で勝手に千葉や神奈川まで行くなど当たり前に近い)である。どこかが昔からズレていて、その度に矯正されてきたから、自分の軸は持っていても特定の分野のみ(興味がないというのも大きい)。だから周りから「ああしろ、こうしろ」と言われるのが辛かった。

 で、私が変な理由は高校の時に判明した(正確には母の根回しもあり、かなり前から判明してはいたのだが)。叔母が私のことを「発達障害だ」と疑ったことから全てがゆっくり動き出したのだ。

 (陣内智則風に)まあなんやかんやありまして、私はこの度病院併設のデイケアに通うことになった。事前に見学していたから知ってはいたのだが、私は案外異端だったのだ。明らかに私より年齢が歳上なのに、私以上に無口(喋れない?)な人、割と子供っぽい人、苦しそうに歩く人、痛バッグ(超羨ましい)を持ち歩く人など色々な人がいた。

 私は、気になったこともあり板バッグの人に話しかけてみた。すると、彼女は(私とベクトルは違えど)オタクで、一回話し出すと止まらない人だったのだ。私がおずおずしていたからというのもあるが、彼女はすごい人だと感じた。

 というのも、その人はデジタル絵が描ける人なのだ。私はデジタルに癒えることのないトラウマがあるので、デジタルでイラストが描けるというのはとても素晴らしいことだと思っているから。スマホを見せてもらうと、ウマ娘やらFGOやらマギレコやらといったゲームを沢山インストールしていることが分かる。そしてその全てを「大好きだ」という一点において熱く語った。

 もう一人はデジモンを私より詳しく知っている人で、彼も彼でフィーバー状態になるとリアルに汗をかいてしまう人だった。だが、話していて楽しくはあった。そんな二人に私の絵を見せてみた。

 二人とも私の絵を見るなり、「下手だ」とは言わなかった。寧ろ、何故だか「引き込まれる」、「背景が描けてすごい」、「かわいい」など称賛の嵐だったのだ。片方は、私の絵に「このまま見続けたら明日の朝は、熱が出るだろう」とコメントしていた。そんなにすごい絵だっただろうか。私にとっては当たり前の域に入るのだが……。

 ちなみに、デジモンに詳しい人曰く「上からライト照らしただけでこうなるモンなんだね、すごい」らしい。上からライトは、(エフェクトが使えないのもあり)苦肉の策みたいな感じで生み出したのだが……。

 

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