友達は「いる」のだろうか?

 今日はなにかと理由を付けて、どこにも行かなかった。本当はダラダラしていただけなのだが。春になってから一月が経つが、外に出られる日とそうでない日の差ははっきりしていた。そのせいか、過去にあった暗いことを考える日も少なくはない。

 一番よく思い出すのは高校の時。何気ない一言で揶揄われ、ひどい時にはすれ違い様に舌打ちされた(それだけではあるが、当時はクラスメイトともよく口喧嘩をしていたのでしんどかった)。だから休み時間は保健室にいることが多かった(ネタバレすると、卒業式にいじめっ子に反撃したが、痛手は殆ど負わせられなかった。せいぜい制服のカーディガンを伸ばしたくらいなので実質ゼロに近い)。

 保健室にある本は地味に面白いラインナップだったから、よく来ていた。そこで知り合った後輩も二、三人いたし、(処分するのに困った)菓子を気まぐれにプレゼントしたこともあった。

 ある日の昼休み、私は後輩の愚痴を聞いていた。曰く、「授業が騒がしいせいで理科の実験をさせて貰えない」のだそうだ。何故そこまで騒がしいのかは分からないが、ただ一つ言えるのは「後輩は全く悪くない」ということ。私は後輩を憐れに思い(実験は理科の醍醐味だとも思っていたので、経験出来ないのが可哀想だと思っただけ)、担当の先生に頭を下げて、「後輩に実験をさせていただきたいのです」と懇願した。先生も快諾し、その時はソレで良かったと思われたのだが……。

 なんと後日、後輩がまた泣きついてきた。というのも、彼女の友達は実験に参加したくなかったらしく、後輩に文句を言ってきたのである。この瞬間、私は後輩の友達事情を薄々察することが出来た。

 どう考えても私以上に友達事情が悪い。私も友達事情は悪い方だが、児童館の人(その中には今の上司もいる)や、児童館の友達がいない訳ではないので居場所が無い訳ではないことは明白だ。私は心の中で、「こんなの友達じゃないだろ。ただつるんでるだけじゃねーか。ペラい友情築き上げて何が楽しいんだよ」と呟いた。

 私自身、「本物の友達」以外は必要ないと今でもしっかり思う。上っ面だけメッキして友達面してもソレはただの遊び相手と同じだからである。最初はそれでいいのだろうけど、その先に踏み込めないということは意味がないのだ。信頼できる奴なら誘っても断れない訳がないから。

 後輩はその後どうしたのかはわからない。ただ、彼女にも(ジャニーズが好きという普通の人らしい感性はあるものの)心配なところはしっかりあって、然るべき機関に通っているならそれで良いのだが……。

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