前のエピソード――こんな水曜日は嫌だ

　様々な情報が日々飛び交い、流行が早送りのように入れ替わっていく今日。都会は益々賑やかに、便利になっていき、反対に田舎からは人が出ていくこともある。私は生まれてこのかた便利なところにしか住んだことがないので、田舎のデメリットはあまり知らない。せいぜい買い物が今より不便になる、ご近所さんの距離が遠いくらいだろう、と思っていたのだが。

　世の中には「秘境」と呼ばれる田舎があるという。買い物に難儀するだけでなく、最寄りのコンビニまで歩いて二桁分だの、バスの本数がやたら少ないだの。一番のデメリットは、(ある程度偏見が含まれているとはいえ)「考え方が古いこと」だろう。この古い考えに苦しめられている人が今でもいることが一番の証。

　古い考えと一番結びついてはいけないものがある。それは常識と(個人の精神的な病みからくる)病理である。これを掲げる人とは上手くいく筈がないのだと、私は感じているからだ。沢山の世界を知るならば、やはり都会が一番だと思う。楽だからというのもあるし、優しい人や面白い人がいるから。

　「女は結婚して子どもを産むのが当たり前」「男なんだから強く生きなきゃ」という文句はもう聞き飽きた。それより、その言葉でどれだけ多くの人を傷つけているのか、当人は分かっているのか。

　私は「当たり前」「常識」の外側にいるから、「普通」がなんなのかよく分からない。街中で見かける人が「普通の人」なのか、それとも違うのか。結婚していれば普通なのか、大学を卒業していれば普通なのか。私にとっての「普通」は、流されて生きてきた結果に過ぎず、それ以上の意味を持たない。最初から最後まで自分の足で歩めたなら、苦しむこともなかっただろうか。

　私が選択できたのは人生のうちほんの少しだけ。それも、人より恵まれたところに生まれてきたからこそのものだった。なんだかんだで居場所があり、それなりにストレスはあるけれど楽しく暮らせている。田舎ではそうはいかないことは、元カレを含めた沢山の人から聞いている。

　誰しもが流されながら生きている。恵まれた環境にある人だって、流されている。時代によっては流されなければ生きられない人だっている。選択肢が多い時代であっても、流されるのは同じ。

　いっそのこと、全て放り出して逃げられたらいいのに。そう思ったことも一度や二度ではない。柵が多いから上手くはいかないかもしれないが、やってみたいことではある。

　結局、選択肢は目の前にあるものしか選べない。場所や時代が関係する箇所もあるかもしれないが、大半は本人の意思なのだろう。