(4000PV達成記念)心地良い暗闇の中へ

 ネットで何かの拍子に知り、最近リメイク版(完全版)が発売され、今でも「奇ゲー」として持て囃されているゲーム、ガラージュ。配信が始まるやいなや私は即座に購入したのだが、その世界観は不気味でありながらも、どこか芸術的である。人間は全く登場せず(そもそもの話、ガラージュの世界は主人公の人間が見ている精神の世界である)、いるのは古めかしくも魅力を感じさせてくれる機械達だけ。赤紫色に濁った汚水の中にいるのも蟹や蛙だけで、稀に変なモノが引っかかる以外は上手く循環していてバランスが整った世界だった。

 機械達の外見は一見すると奇怪だが、見慣れてくると可愛らしく見えるようになる。外見も行動も奇怪極まりない機械もいない訳ではないが、それすら愛おしく見えるのだからこのゲームはすごい。総じて、暗い世界だが心地良い世界だと私は感じた。

 その一方で、一部の女性キャラクターの扱いはとにかく悪い(というより、動けないのもあって弱い存在として扱われている。中には起き上がれない程弱っているのに暴力を振るわれている女性キャラもいた)。男性の方が自由なのだとされている(少なくとも、主人公の精神ではそうなっている)。私は見ていて初見では意味が分からなかったが、段々と意味が分かるようになってきた。そこで感じたのは、少なくとも怒りではない。悲しみと恐怖くらいは感じただろうか。全てを知った今は、それすらも過ぎ去ってしまったのだけど。

 沢山の謎を解き、「終わりの終わり」を見届けた後、再び「ガラージュ」の中を探索していくともうそこには誰もいなかった。みんな消えてしまった。ご近所さんに、エレベーターを直してくれた人、研究している人や、自分の嫁。それ以外の人もみんな消えてしまった。寂しい世界をあちこち彷徨い続けるうちに、一枚の紙切れを見つけた時。私はそれを拾い、書かれた字を目で追った。番屋の人が残したその手紙は温かさを感じるもので、プレイヤーへのエールでもあった。このゲームはコレでおしまいという訳ではなかったのだ。

 少なくとも今現在3週は周回しただろうか。まだまだ知らないこともあるが、それでもこのゲームは私の中に何かを残してくれた。決して美しい物語ではなかったが、それ故に心地よかったし、楽しかった。不安になりそう、と世間的にいわれているBGMでさえも私にとっては温かみを感じられる世界の一部としか思えなかった。

 とにかく考えさせられるゲームだったし、思い出に残った。青春の一部といってもいいくらいに。

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