ソレはなんだか……

 色々と自分の身にはイレギュラーなことばかり起き続けているが、案外のんびり暮らしていけるんだな、と思っている今日この頃。

 本日のノルマが終わった後、私は事務所の隣の児童館でこんなことを頼まれた。どうも、この児童館では、今でも世界の貧しい子ども達のためにとペットボトルのキャップを回収しているのだそう。ソレを回収して、洗って干す、というのが今回のミッションだった。別に断る理由などないので、引き受けたのだが、これが予想外の結果に。

 回収ボックスの中には沢山のキャップが入っていたのだが、これがもうとにかく多い。沢山の子ども達がそれだけ日々訪れている証拠でもある。この児童館が地域で愛されているんだな、と実感した。と同時に、どんだけキャップ多いんだよ‼︎一部はプルタブの回収ボックスにまで入ってるよ‼︎という思いは確かにあった。それどころか、イタズラでもしたのか、プラゴミらしきものや折れた爪楊枝も混じっている。ソレをざるで洗って指定された場所に干しておく。コレを何回も繰り返すのだが、その途中では何故か缶のプルタブが混じっていたという事件があったり、思った以上に時間かかるモンなんだな、と実感したり。来る子ども達が少ない中、私は何ヶ月も洗われることのなかったペットボトルのキャップをせっせと洗っていく(水切りは思った以上に体力が要るプロセスだった)。

 そうして、全て洗い終わった後の感想は「あー、終わった」とか「疲れたー」とかではない。私はその中にある種の芸術性を見出してしまったのだ。まるで小さい頃に遊んだレゴブロックのように、テーブルの上がビビッドカラーで埋め尽くされているのだ。ポップアート界の巨匠である村上隆などの芸術家には、是非とも絵にして欲しいくらいの凄まじい光景だったのだ。シルクスクリーンなどの版画が一番似合いそうだ、などと考えながら笑顔で報告する。「終わりました」と。

 あのビビッドカラーを描くだけでも、充分絵になるだろうがキャップ達はいずれポリオ(小児麻痺。罹ると一生を特殊なカプセルの中で過ごさねばならない病気。回復したとしても、車椅子になる)ワクチンに変わり、世界の貧しい子ども達のもとへ送られていくのだ。なんだか淋しいな、と思いながらその場を後にした。

 ちなみに、缶のプルタブについてだが、聞いてみたところ、アレはどうやらまた溶かしてリサイクルされるようである。なんだか理屈がリサイクルビンみたいだな、と思った。

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