魅力的な場所

 生まれてこのかた東京暮らしというのは、恵まれている一方で哀れなものだと思っている。松戸や行田が霞んで見えるくらいには中野や秋葉原、池袋に新宿(割と近いことは見過ごされている?)と、遊び場所には事足りる(それでも反対側に行くのが私である)。住むとなればそれなりの出費は覚悟せねばならないあたり、財布に優しい街とはいえないが。

 昔、母達と墓参りに行った帰りに新宿に寄って行ったことがある。大抵は少しお高めのレストランに入ってオシマイなのだが、稀に東急ハンズへ寄ることがある。魅力的な品々はそれだけで私の心をくすぐった。

 高級な文房具や色とりどりのバラエティグッズ。それと実験器具や、化石などの珍しいモノが沢山あるのだ。京王アートマンの比ではない。居間の棚にある袋(中に入っているのはゴム風船)の様子から、過去に母はここで風船を購入していったようだった。ウチには本もあるので、手順通りにすれば風船で簡単な花くらいは作れるだろう。

 私が今一番欲しいと思ったのはビーカーや試験管、メスシリンダーや集気瓶。そして上皿天秤。ビーカーに飲み物を注いで飲んだら面白そうだし、上皿天秤の上に小さいフィギュアを置けば楽しくなるだろう。と思っている。

 他にも、ユニバーサルデザインの鋏やホッチキスなどがある辺りは流石都心だな、と思っている。普通の店にこんな豪華な品揃えは期待出来ないからである。隅の方には画材コーナーもあり、豊富な数の画材が揃えられている。クレヨンや絵の具、スケッチブックにコピック。覚えている限りでもこんなに沢山あった。鉛筆は本格的な高級品が沢山揃っているし、現代人は滅多に使わないであろう封蝋などもある。だから来るたびに思うのだ、「ここに来て良かった」と。遊園地とはまた違った楽しさがあるのだが、同時に私の素顔が垣間見られる数少ない場所でもある(いつもの数倍すばしこくなる)。

 とはいえ、画材に限れば世界堂なども私お気に入りの場所である(というか、私がキャラクターイラストを描く時に必要な画材がいつも揃っているのは新宿の世界堂しかないので、事実上拠点の一つとして見ていいだろう。ちなみに一番近いのは府中あたりだが、扱わなくなる度に拠点を変えているので、今後どうなるかは分からない)。近所の大きな文房具屋もいいが、私はあまりにも見慣れたからだろうか。新鮮味を感じなくなってしまった。

 どうでもいいが、絵を描く時の鉛筆(4B、但しかわいいやつ)は近くで揃えている。学童用でも描ければいいからである。

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