理由は分からずじまい

特になんの取り柄もないと思っていた高校生時代、私が国語の授業で書いた文章が毎日新聞(の読者投稿欄)に載ったことは、大きな衝撃だった。クラスには30人以上の女の子達がいるのに、私(とあと一人)は何故だか載った(一応、先生によると朝日新聞コースもあったが、みんなと同じがいいので毎日新聞コースにした)。このことがきっかけで、私はそれまでなあなあにしていたライティングに、本格的に取り組めるようになった。

 あれから5年、私がカクヨムに登録してから1年と数ヶ月経ったが、何故か実力が(元カレと)同じにはならない。二次創作が壊滅的なのは変わらず、それどころか、新たな知識を得る度にオリジナルにより近づいていってしまう。元ネタが細かく散りばめられているせいで、誰も彼もが必死にソレを探すと思っていたのに。

 2年くらい付き合った元カレの方が、二次創作がうまくて羨ましいと思っていた。同人誌も書いていたし、ファンも沢山いて私にとっては憧れであると同時にアンチでもあったから、複雑な気持ちではあったのだが。私が持っていないものを沢山持っているから。なのに、何故私の方が先にランキング入りしてしまったのだろうか。コメントはあまり来ていないのに。

 羨ましいと思う一方で、相方からすれば「面白くない」ものだったらしく、師匠からすれば「毒にしかならない」というが、中学時代の友達から見れば「面白い」らしい(今学んでいる分野を扱っている、というのもある)。ちなみに私は読んでいて怒りしか感じなかった。指摘する箇所はあまりにも多すぎて、全ては書き切ることが出来ないが、それでも昔の私にとっては如何にアンチがついた作品だとしても、輝かんばかりの二次創作だったことは忘れないで欲しい。

 意外にも、彼のファンは皆「疑問を抱くことのない人」だったようで、寧ろ私の方が珍しいとまで言った。私は思ったことをそのまま口にすることが多いが、それをネットでもしているのが理由では無かろうか。しかし、文章の世界では違う。様々な知識と音楽、色や形を総動員してまで世界を作り上げていくのが私のやり方だ。自分にとっても読者にとっても楽しい世界を作りたいから、全ての力を注ぎ込まなければいけない。そうして、私の周りには「難しいことにも疑問を持つ人」が沢山やってきた。

 私自身は狭い世界で生きてきたつもりだが、時々外へ飛び出していく。沢山の景色を見て、沢山の声を聞いてきた。だからだろうか、今はニュース番組を見ていると落ち着くのだ。

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