実感

 物凄いアクシデントやタイミングの悪さに見舞われた一月上旬が、もう少しで過ぎ去ろうとしている一方で、まだ正月というイベントが終わる気配はなく(少なくとも鏡餅がそのままになっている)、母方の祖母の家でもそれは同じだった。

 遅い時間に着いたそこで出た食事は手が込んでいて、かずのこや黒豆(好きなだけ取らせてくれる)、伊達巻も出てきた。おせち料理は数多いが、私としてはこれくらいで充分だと思う。寧ろ何故あそこまで食べなければならないのだろうか。それよりも、食卓の上にあるキムチ(一応手作り)や牛肉の方が気になってしまい、私はそれらに手をつけた。やはり、牛肉は滅多に食べられないせいもあるからか、脂が多く美味しく感じられる。国産の肉を購入していることは知っているが、無理し過ぎなのではないだろうか。牛革の財布を買ってくれた時もそうだが、祖母は他人に良く見せようとして必要以上に無理をしているように思う。

 風呂に入る直前に気づいたが、どうもこの家では洗濯板(靴下用に小さいのならある)でも使うのか、鮮やかな青緑色の(パッケージによるとリサイクルした油脂)洗濯石鹸(固形)があった。洗濯するなら液体や粉洗剤を使えばいいのに、と思いつつ私はその日風呂に入り、少しだけゲームをしてから一日を終えた(あまりに眠かったので)。

 翌日の昼間、何故か祖母の家にやたらでかいいちごが送られてきた。しかもこの家の住人では食べきれない(一日かかって食べ切れる?)量だからか、私は(お腹が空いていたので快諾したが)母に「片付けるの手伝って」と言われた。いちごの味だが、朝に食べた小さいのと比べると甘くて美味しい。程よい酸味もあり、何個でもつまめそうだった(が、吐くといけないので程々にしておいた)。スイートというよりかは、フレッシュと言う言葉がしっくりくるような食感。味わうのが久しぶりで感激してしまった。

 もう一つ、味わって良かったのが味噌汁。きのこと大根だけの簡素なものだったが、自家製の味噌と高級だしをベースにしたそれは、何度でもおかわりを繰り返したくなるくらいに美味しい。店屋もの、外食とは違うそれは温かみがあり、噛みごたえもある。さっぱりしていて、余計なものは何一つ入っていないからか、キムチを乗せたご飯とは相性がいいようだった(味が薄いのもあるが。ちなみに、味噌の色は給食の味噌よりも濃いが、味は薄め。味が濃い味噌汁の作り方は未だに知らないので、買ってくるしかない)。

 素朴な田舎の生活だが、私には合うのだろうか。疲れてしまうし、ストレスは溜まるので無理なのだろうか。慣れない限り分からないが。

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