飛び込め、「世界」へ‼︎

 一昔前は、テレビのスイッチを入れた瞬間に(今もだろうか?)かっこいい役者が映っている、ということがあった。そこは架空の街であったのだとしてももう一つの現実で、刑事や大学生、小学生果ては盗賊にネットゲーマーに実業家までもが、思い思いに(実際のところは台本通りに)動いていた。いわば、皆が皆キューティーハニーみたいなものである(実際に似たような感じになる時もありそうだが)。テレビの向こうの役者達は、普通の人ならば問答無用で憧れるだろう(今は声優が近い立ち位置にいる)。

 一度限りのゲストで「しがない○○」の役をしていたのだとしても、調べてみると案外名の知れた人物であるということはあり得ることで(世にも奇妙な物語ではあのタモリでさえも、モブキャラとして出ていた時期があったという)、役者のことをネットで調べてみると新しい発見がある。大体コマーシャルに出ていたり、それ以外にも変わったところではアニメの声優や、番組ナレーション(声優の方が好みなのだが)として出ているケースもある。

 彼らは番組がリセットされる(=新番組が始まる)度に新しい世界に出かけているようにも見える。その都度メイクや衣装を変えて、別人として生まれ変わるのは異世界転生のようだ。幼い頃、チラッと見た映画でウルトラマンメビウス(の人間体)らしき人物がアクリル板越しに面会を受けていた場面を、朧げながら今でも覚えている。最近(といってもかなーり古いが)では、勇者ヨシヒコに登場する盗賊のうち一人が有名アイドルグループのメンバーであったり、YouTubeで知ったお笑い芸人が実は勇者ヨシヒコに出ていたり、というパターンもあったし、別のドラマでは、凶悪犯(7人殺害したらしい)だった人が、また別のドラマではいい人というパターンも中にはあった。

 さて、ドラマにはロケ地も重要である。たまに地元の街がロケに使われると(夜でも場所さえわかれば)ちょっと嬉しい。だが、大体は遠いところが殆どで、テレビの向こうの世界は改めて遠すぎるのだと思った。美しいところならいつか行ってみたい(ちなみに、一度下校中にコマーシャルかドラマ、映画かどれかの撮影があったが、当然ながらスタッフさんの手によって入ることは出来なかった)。

 ドラマの世界には稀に、荒唐無稽な装置が出てくることがあるなど現実離れした話も中にはあるが、大体の話が芝居とはいえ現実感があり、それが怖かったことはよく覚えている(原作付きがあっても同じだから、そういう意味ではアニメが好き)。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る