気づかない、だから終わった

 どんなものにも必ず終わりは来るのだが、何かに対するこだわりが原因で終わりを早めてしまうことがある。何かに対するこだわりは大事だが、それをやり過ぎると破局が意図せずに訪れるのだ。別に趣味くらいなら(進むも退くも自由だから)まだいいし、ダメージも少ないのだが、公的なものになると人に迷惑をかけることもあるからか、「終わり」そのものが忌避されている傾向がある。けれど、それはある日突然訪れる。まるで浮かれた熱を溶かしていくように。あるいは泡沫のように。

 その廃墟は、私のいとこが住む北海道にあるのだが、バブルの真っ只中に作られたのだった。北海道といえば、クマが出るくらい辺鄙な土地というイメージがある。いとこが住んでいるところでも、油断は禁物(かもしれない)。昭和の末期、バブル期には沢山のテーマパークが全国各地に作られたのだが、無計画に造られた建物は当然の如く短い命を終えている。これから紹介する「グリュック王国」もその一つである。

 この王国もといテーマパークは、当時の社長が「ドイツに感銘を受けた」という理由だけで建てられたらしく、かなり本格的なものであった。開園のイベントでも駐日ドイツ大使、グリム兄弟の子孫などこれでもかというくらいにドイツらしく、そして豪華だった。しかし、開園の翌年から赤字が続き、結果的には2007年に閉園してしまった。これだけドイツっぽいならば逆にタイムマシンを使ってでも、一度は行ってみたい気もするが逆を言えば一度で満足してしまうということでもあるのだろう。遊園地の人達も負債を抱えていた事実に(社長以外は)気づかなかったようだし、どのみちこのパークの寿命はそれまでだったということだ。日曜日だというのに車が2台しか止まっていなかったということは、相当な赤字だったことが予想される。

 コロナ禍で世間は大変なことになっているが、それ以上に私自身の興味が別のところに移っている。テーマパークも楽しくていいが、物語を紡ぐことの方がメインだから、そちらを優先している。私は、私のこだわりが間違いではないと今は確信しているから、やっていることも正しいのだと思っている。けれど、少し間違っているかもしれない。そんな恐れと懸念が確かにある。けれども、楽しい自分の世界が作れるように、そんな願いを込めて私は東屋を作るのだ。

 ちなみに、私が目指しているのはかなり芸術的な境地だが、これが理由なのかファンは少ないがリピーターは多いという奇妙な事態に陥っている……。

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