今更だけど

 昔々の話、精神病棟というと(今でも?)良くないイメージが付き纏っていて、あのチャージマン研!でも劣悪な環境は取り沙汰された程だった。やれ、患者を一箇所にまとめて収容しているだの、まともな衣服を与えないだの。ロボトミー手術なども行っていたらしく、それだけ精神病棟は恐ろしい場所だった。しかし、その中でも一際おそろしい「死の病院」があったのはご存知だろうか。

 朝倉病院というその病院は、院長が世襲制という古い経営体制(?)の病院で、息子が院長職を継いでからというもの、普通の病院から劣悪な病院へと変貌していった。というのも、自分に逆らう者は全員解雇、管理栄養士や給食の人達も解雇。残ったのは逆らうことをしない医師や看護師だけになったからである。当然ながら患者にはまともな食事を与えることはなく、院内では四十人以上が不審死しているのだった。ここまでの人権侵害をしておきながら、閉鎖した理由もまた酷いもので、患者からの医療報酬の不正受給が原因だというのだ。明らかに違うだろう、院長の不祥事で閉鎖するべきだったのではないだろうか。彼は未だに別の病院で勤務しているらしいが、真偽は不明。

 医者という者は本来人の命を救う仕事である。ましてや、精神科なら患者の精神を立ち直らせるのが仕事の筈なのに、何故患者を死亡させるのかが理解できない。身近なお医者さんがフレンドリーないい人ばかりだったからか、こんな事件がかつて日本にあったとは信じたくもない。どうしてそこまでヒトの命を粗末に扱えるのか不思議だ。

 朝倉病院はもう閉鎖され、跡地は廃墟と化した。廃病院にはラクガキがあったり、とんでもない荒れ方をしていたりという廃墟特有の「ひどい有様」だが、それを抜きにしても病院にしてはあり得ないレベルで怖い。その様はまるで監獄のようで、現役時代だった頃の方がマシだったのでは(五十歩百歩だが)とも思う。一番おそろしいのは、噂などという生易しいものではなく事実だということ。どうしてこんなことが出来るのだろう。私の認識がおかしいのだろうか?

 ちなみに患者は老人や元ホームレスなどといった訳ありの患者ばかりであったようだが、だからといって命を軽んじてはいけないと思う。今更ながら、この間祖母がつぶやいた「世界ってのはね、誰かを犠牲にして成り立っているんだよ」という言葉を思い出してしまった。彼ら弱者は、悪徳病院の踏み台にされたというのだろうか。こんな事実が転がっていることがとても悲しい。

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