先はまだ見えない

 もう何度このフレーズを聞いたことだろうか。「緊急事態宣言」という言葉は、私に窮屈で退屈で何の面白みもなく、鬱屈とした日常を齎した。私は抑圧されるのが大嫌いだというのに、いつまでこんな日常が続くというのだろう。都会の方に住んでいるからというのもあるが、自由になれないというのは辛い。今はお金がないからというのもあれば、暑いからというのもあるが、近いところにしか行けない。その上、夜には食べ物屋さんが軒並み閉まってしまうので、以前親友とともに出かけた私は酷い目に遭った(足が疲れているのに私は休めなかった)。

 少し前、父に勧められてPCR検査を受けてきたが結果は陰性だった。あれほど沢山どこかに行っている割に、何故大丈夫なのだろうと不思議に思ったことがある。いつも一人で外出しているのと、外出時には必ずお茶を持参していることが功を奏したのだろうか(どうもお茶にはコロナをある程度抑制する効果があるようだが、私が飲んでいるのは普通のだからあまり期待しない方がいい。外出中以外にもほぼ常に飲んではいるのだが)。

 「緊急事態宣言」はこれまでに四回は発令されているのだが、正直いってマスク着用が日常に溶け込んでいるというのもあって、私はあまり危機感を覚えなくなっていた。というか、これまでに一度も危機感を覚えたことはない。だから、ニュースで「感染者数が何人」と言われても、私にはどこか他人事のように思えた。一度だけならかなり効果があったものの、今は前ほど効果があるようには思えない。むしろ、前よりひどくなっていることは誰の目から見ても明らかで、いつまでたっても終わる兆しが見えないような気がしてくるのだ。軒並みイベントも中止かオンライン配信というのも嫌気がさしてくるし、暑いのにプールで楽しめないというのもヘイトを溜める原因の一つである。働き口も減りつつあるし、もうどこかで爆発してもおかしくはないと私は思う。

 もう、昔みたいに楽しい日常は戻って来ないのだろうか。行ったことがないところには行けないのだろうか。やったことがないことも出来なくなる(こればかりは単純に私の問題でもあるが)のだろうか。コロナ禍は私から沢山のものを奪っていった。

 日本だけでなく、世界中が終わりに近づいているような気がするのだが、気のせいだと思いたい。連日コロナのニュースばかりで辟易しているから、裏で流されているバラエティ番組がこの時ばかりは見たくなるのだ。

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