比べられた日々に

 私(に限らずどの家でもそうだったと思うのだが)は、小さい頃からずっと他人と比べられてきた。昔から出来ないことが常人より遥かに多かったせいか、今でも私は不器用なままである(一応言っておくと、自分の意思で会得しようとしたことは大体短期間で覚えている。お粥作りだって、興味を持ったから二ヶ月でマスターした)。母はかなりうるさい人で、ことあるごとに私と他人を比べたがる人だった。私はそんな母を嫌って家に帰りたくなどなかったのだ(うるさい以外にも怒られるのが怖いから逃げるというのもある)。

 だからだろうか、私自身も無意識のうちに人と比べる癖がついてしまった。興味があることであれば尚のこと(毎週最低一つはフルコンボを取る理由の一端はコレ)。好きなことに対して上がいるというのは、いいのかもしれないが憧れはやがて妬みに変わっていき、最終的には破局へと(負けるという事実が嫌いだから、相手をどんな手段でも叩き潰さないと気がすまない)。それならばどうすればいいのか、長い間答えは出てこなかった(薄々気づいてはいるが実行に移す勇気はなかった)。

 欲しいと思ったものは全部諦めないし、どれだけ時間がかかっても手に入れるというのが私のポリシーである。けれど人に勝てるものは今の私にはないに等しい(あるのかもしれないが、恐らく比べない方がいいものだろう)。元カレに勝って(できれば圧勝して)プライドをへし折り返すのが今の目標だ。けれど、十年分の壁が聳え立っている以上彼に勝つことは容易ではないだろう(彼曰く、私は勝ち組らしい。というのも、「自分を慕う異性がいるから」だそうな。確かに親友とは仲がいいが、一般的な「慕う」のイメージから離れているような気がする)。

 全てから逃げて自己完結するという選択肢もあったが、敢えて私はそれを選ばなかった。選びたくなかったのだ。興味ないことから逃げるだけならまだしも、私は元カレの作品にだけは負けたくなかったから。比べる方が悪いとはいえ、この感情は歯止めが利きそうにない。

 比べる相手がいるというのは私にとってはこの上ない不幸だと思う。その後の人生に影響を及ぼし続けるから。他人の完璧主義など私の世界には要らない。今の私に必要なのは、完璧ではなく自分の世界。ディズニーランドのように一生かかっても完成することのない自分の世界は、沢山の音楽を反映して作られている。私の記憶を引き出しそこから抜き出して書いているというのもあるが、かなり難しい(オリジナルは簡単な方)。答えは深淵の中にあるから。沢山の謎を散りばめたその先に。

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