懐かしさは不意に
大学に通っていた時のこと、私は食堂でスペシャルデーを心待ちにしていた。その年に数回のスペシャルデーとは、インドカレーがメニューに追加されるというもので、食べ逃してしまえば次いつ来るか分からないので悔しかった。しかし、値段が少々高く尚且つ二日に分けてこのカレー料理は展開される。そこまでのお金はないので、私はどちらか一日分の食費を無駄に消費した覚えがある。たった一日だけだけど、カレーが楽しめるのならと思いながら私はシェフのカレーを心待ちにしていた。
街を歩いていると、たまにインドカレーの店を見かけることがある。どんなところでも。時にはフードコートの中や、ショッピングモールの中にもある。以前なら入ろうとしなかった私だが、今はあの思い出があるから普通に入れてしまう。それくらい、食堂のカレーは美味しかったのだ。もう普通のカレーでは満足出来なくなっているのかもしれないと、自分では分かっているのだから。ナンがくっついたカレーでなければ、特別な日には似つかわしくない。
というのも、ナンというのは本場のインドでは贅沢品で、日本でいうところの寿司に近いものだからである(普通はチャパティを食べる)。これにジュースがくっついてくればパーフェクト、といった感じだろうか。どんなファミレスよりも、どんな寿司屋よりも気分次第ではカレーの時というのが、一年に一回はあるから。
日本のカレーもいいものだが、私はインドカレーも好きだ。スパイスが効き、ヨーグルトドリンクがくっついてくるソレは、一人で食べてもみんなで食べても美味しいものだと思う。小学校や中学校の時の給食のカレーと同じで、ルウの部分だけでもおかわりが欲しくなる。無論、米や小麦と合わせれば至高というのは言うまでもなく。
ちなみに、本場のインドでは宗教的な理由から豚も牛も使うことはない。豚はイスラム教徒が避ける為、牛はヒンドゥー教徒が避ける為である。それ故に、羊や鶏などが使われる(タンドリーチキンもそんな感じなのだろうか)。出来ればアヒルも使って欲しい。雛か卵のうちから。また、ある種の薬膳料理でもあるからか、体調に合わせてスパイスが調合される。しかし、レストランではメニューが決まっているからそういった気分は味わえない。
全国各地にインドカレーの店はあり、日々美味しいカレーを提供している。まだ都心部のカレーしか味わったことがない私だが、いつか重箱の隅をつついてみたいと思う。
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