廃墟探検の夢

 突然だが、私は廃墟が好きだ。儚く、脆く朽ちてゆくあの様子。無機質ながらも色褪せ、命を失い冷たくなったあのがらんどうの風景。崩れかけ、忘れられた建物たちは、私の目に言いようのない感動と好奇心を与えてくれた。元々ノスタルジックなものや建物が好きな私だが、危ないとはいえ廃墟はその究極系だと思う。幾度目かの夏休みに車窓から見た大きなホテルの廃墟に胸をときめかせ、頭の中でオルゴールの曲を想像したあの日を私は今でも覚えている。インターネットや写真で見るだけだが、どの廃墟も魅力的で異世界に引きずり込まれたような感覚になった。

 中にものが散乱している廃墟は、何時頃までその施設が稼働していたのかの目安になるが、全くものがない廃墟も雰囲気が出ていていいものだ。まるでRPGのダンジョンにいるようで心地良い。ものが散乱していても、それはそれで趣があるが。こういった廃墟は、大抵自然の中に埋もれていて雑草だらけで蔦まみれである。それで崩壊が食い止められている皮肉な例もあるが、多くはない。

 日本では村や町が廃墟になっている例は極端に少ない(国土とかの問題もあるのか?)が、海外には町一つが丸ごと廃墟になったという例もある。ドイツにはかつてソ連軍の基地として使われていた町があったし、メジャーなところでいえばチェルノブイリ原発事故があったプリピャチなんかもそうだ。前者は取り壊しが決定していて、後者はゴーストタウンになっているが、それでもいつかは行ってみたくなる趣深い場所だ。下手な観光名所よりもゾクゾクするから。大体の観光名所は見ておしまい、しかも安全すぎるというのもありたまにはこんな風にスリルのある観光をしてみたいのだ。何より、小説や絵のネタになるから私はこの目で見てみたいと思う。

 廃墟といえば古城も見てみたい。ヨーロッパの城はとても絢爛豪華で、趣深いというから。それに私自身、ヨーロッパにはある種の憧れを抱いているというのもある。本場のアンティークドールが欲しいし、煌びやかなところに行きたい。何より自分の顔が西洋人だったならもっと自信を持てたのに、とも思うのだ(話が逸れてしまった、すみません)。それくらい魅力的に見えるからだろうか、古い建物の殆どがフィルターをかけたように見える。

 廃墟探検をするにあたって、写真撮影は必須である。理由は一度行った廃墟には余程のことがない限り行かないからである。廃墟との出会いは一期一会、思い出はカメラの中に収めておくのがセオリーなのだ。

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