塩に貴賤なし パートⅠ

 どうも人間は味がないと碌に食べ物を食べようとはしないらしい。おにぎりについてもコンビニでは塩おにぎりが売っているし、ポテトチップスだってうすしお味が普通に売っているくらいだから。最低でも塩味やら甘味やらが必要ということからして、舌が刺激を欲しているのかもしれない。

 今日は今日とてうすしお味のポテトチップスをつまんだが、食感も相まっていつも通りに美味しい。使ってある塩は、おそらく「普通の塩」だろうがこの「普通の塩」には二種類ある。岩塩と海塩であり、それぞれ塩ではあるが全く違う種類の塩である。岩塩は地層から採れる塩の塊で、色が美しいものも中にはある(家に飾っている人も)。もちろん食用としてもちゃんと使えるが、専用のミルが必要になる。世界ではこの岩塩がメジャーで、海塩は少数派。海塩は海水から採れる塩であるが、日本は大半を輸入に頼っている(日本は狭い上に、雨が多いのでコストがかかる方法以外使えない為)。亜種に藻塩があり、神事などでも使われる。

 塩は味付け以外にも殺菌効果があるので、雑菌の繁殖を防ぎ保存する為に使われた(同じことは香辛料でもある程度できる)。塩漬け肉は冷蔵庫がない時代に重宝されたという(但し、中世ヨーロッパの塩漬け肉はそこまでおいしくなかったらしい)。日本の刺身も、塩と酢を使って殺菌していた時代が確かに存在した。

 しかし、今でこそ日本国内でも簡単に手に入る塩だが、昔は塩で年貢を納める地域が存在するほど貴重なものだった(似たようなことが北欧でも起こっている)。ついでに言うと、くさやはコレが原因で作られたし、シュールストレミングも同じような成り立ちである。ちなみに、くさや液は100年以上前から続くものもあるそうな。

 今回何故塩の話ばかりしたのかというと、次の回から塩漬け肉を作るからである。前から味が気になり、豚バラ肉を買ってきた。昔の人の気持ちを味わってみたくてチャレンジしようと思ったのである。その際、岩塩を使うか海塩を使うかで迷うだろうが、私は今回海塩を使うことにした。理由は岩塩を買うのが面倒くさいからだ(日本で売っている塩は海塩が多い)。また、スーチカー(沖縄での塩漬け肉)は海塩がいいというのもある。

 グローバル化が進んだおかげか、今では誰もが簡単に塩を手に入れられるようになった。その一方で塩が手に入りにくかった時代の料理は失われつつある(少なくとも一般的ではなくなった)。風情というものがなくなるのは寂しく思うが、ソレが時間の流れだよなとも思った。


パートⅡに続く

 

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