第34話 クラス分けの結果

 秋月と話しができた事である程度心の整理が付いた俺は、秋月と二人でクラス分けのプリントを配布している場所にやって来た。

 クラス分けを掲示板に掲示している学校もあるようだが、うちの学校では一人一人にクラス分けが記載してあるプリントを配る形式になっている。


「うわ、凄い人だな」


 学年毎に配布場所を分けてるといっても、ひと学年に数百人いるのでクラス分けのプリントを求めた学生でごった返していた。

 漫画でよくある購買にパンを買いに来た学生が群がってるような感じだ。


「プリントは俺が貰ってくるから秋月はそこで待っててくれ」


「うん、分かった」


 あんなゴチャゴチャしている場所へ二人で行っても仕方がないので、秋月に待ってて貰い自分一人で行く事にする。


「ええ! どうして私だけ別のクラスなの⁉︎」


 学生の群にプリントを取りに行こうと覚悟を決めた矢先、ザワザワとした喧騒の中から聞き覚えのある一際大きな声が耳に飛び込んできた。

 声が聞こえた方向に目を向けると、見慣れたショートカットの女子生徒……あれは春陽のようだが……何かいきどおっているように見える。


「春陽、どうした? なんか怒ってるように聞こえたけど?」


 俺は春陽に駆け寄り、事情を聞く。


「ふゆひとぉ……きいてよぉ……」


 春陽は怒っているというより、今にも泣き出しそうな雰囲気だ。


「春陽! どうしたの⁉︎ 何かあったの⁉︎」


 秋月も慌てて春陽に駆け寄り、心配そうに声を掛けてきた。


「ああ……友火もきいてよぉ……私だけ別のクラスになっちゃったんだ……」


「ええ⁉︎ ちょっとプリント見せて」


 春陽が持っていたクラス分けのプリントを見てみると……秋月、それに大介や誠士は同じクラスだが、確かに春陽だけ別のクラスだ。

 正直何と言ってもいいか分からないが、学校で決めた事なの変えようが無いのが事実だ。


「春陽……別のクラスになっちゃて残念だけど、転校する訳でもないし、そんなのに悲観する事も無いぞ」


 実際にクラスは違っても同じ学校だし。


「うん、隣のクラスみたいだし、いつでも会えるから大丈夫。クラスは違っても私たちはずっと友達だよ!」


「ともかぁ……ありがとう……」


 秋月と春陽は百合百合しく二人して抱き合っている。女の子同士だと簡単に抱き合えて良いよな。男同士だと……大介や誠士と抱き合う姿を想像したが……うん、無いわ。

 やっぱり美少女二人は尊い。イラスト化したい衝動に駆られるが、描いたら二人に何言われるか分からないから止めておこう。


「春陽、いつでも遊べるんだから、そんなに落ち込むなよ」


「うん……大丈夫! 隣のクラスだし、毎日お昼休みとか遊びに行くから!」


 ――おい! 毎日来るつもりか?


「いやいや、毎日来なくていいから。新しいクラスの友達も大事にしろよ?」


「冬人は私と別のクラスになって寂しくないの? 私は寂しいよ」


 さっきまで少し泣いていたせいか、春陽が潤んだ瞳で俺の顔を覗き込んで来る。クリッとしたタレ目の美少女の彼女に見つめられると、少し意識してしまう。

 普段意識していないが春陽もごう事なき美少女だ。彼女のそんな言葉にドキッとしてしまう。


「もちろん寂しいけど、俺と春陽は中学の頃から仲良くしていたし、クラスが違っても友達だぞ。安心しろ」


「友達か……うん、そうだね! 今は友達だけどいつかは……」


 春陽が何かよく分からない事を言っているが、少し元気になってよかった。


「あ、そろそろ始業式が始まる時間だ。二人とも体育館に行こう」


「あ、本当だ。もうこんな時間なんだ。春陽行こう!」


 こうして少し立ち直った春陽と三人で体育館に向かった。

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