第31話 これって水族館デートですか?②

「どうしたの? 黙っちゃって」


 最近気付いた秋月の魅力について色々と考えていたところ、不本意ながら彼女に見惚れてボーッとしてたようだ。

 

「あ、いや……秋月がキレイだなあって……」


 俺は秋月の目を見ながら、うっかり真剣な眼差しでそう答え……てしまった。


「え⁉︎ えと……私? 私が、キレイって言った……の?」


 ――し、しまったあ! つい、その時に思ってた本音をそのまま言ってしまった!


 唐突にキレイとか言われた秋月は、豆鉄砲を食った鳩の様に目を丸くしキョトンとしている。


「い、いや……え、えーと、秋月の見てた水槽がキレイだなぁって……言ったんです」


「そ、そうよね、と、突然何言い出したのかと思ったわ……」


 俺はどもりながらも、苦しい言い訳をしたが、納得? してくれた……らいいな……


「「…………」」


 俺の不用意な発言で微妙な雰囲気になってしまい、お互い気まずくなってしまう。


 ――き、気まずい!


「ほ、ほら、あの水槽のクラゲが光ってるぞ」


 このままオロオロしていても状況は変わらない、そう思った俺はこの気まずい雰囲気を誤魔化す為に、別の水槽に秋月の意識を向けさせる事にした。


「あ、ほんとだ! 行ってみよう!」


 とりあえず意識をクラゲに向けさせる事に成功したみたいでホッと胸を撫で下ろした。


「うわ! 何コレ? イルミネーションみたいに光が走ってる」


 目の前の水槽のクラゲは笠の頂上部分から下に向かって、放射状に光が走っている様に見える。神秘的な光景に目を奪われる。


 とりあえず、さっきのウッカリ発言で気まずくなった状況は脱する事ができた。クラゲさんありがとう。


 そんなハプニングもあったが、順路を進んでいくと屋外展示の直前にカフェレストランがあったので休憩する事になった。




 注文したドリンクと軽食を受け取り、テーブルに付くと同時に秋月が伸びをしながら満足そうに呟いた。


「はあ〜、凄い見た気がするけど、どの位見たんだろう?」


 終始大はしゃぎだった秋月は、かなり充実した展示を楽しめているようで何よりだ。


 パンフレットを見てみると、レストランが順路の中間くらいにあるみたいだ。今まで見てきた展示に見応えがあったせいで、たくさん見てきたように感じたがまだ半分らしい。


「パンフレットを見る感じだと、半分くらいかな?」


「本当? これだけ展示があるのに七百円とかお得だね!」


「ホームページとか見ると他の動物園とかも六百円とか安いし、税金で賄ってるんだろとは思うけどね」


「動物園もそんなに安いなら、今度行ってみない?」


 サラッと『行ってみない?』とか、付き合ってる訳でもないのに気を許し過ぎでは無いですかね? 秋月さん。

 まあ……取材の延長みたいな感覚なんだろうけど、俺は正直、美少女にデートに誘われたみたいに感じてドキドキしてしまう。


「あ、ああ……機会があれば行ってみるかな」


 こういう時に、恋愛経験の無い俺は気の利いた返事が出来ないので、冷静を装いつつ勘違い男と思われないように、『じゃあ、一緒に行こうか』と言わず、あくまで『一人でも行ってみるか』みたいな曖昧な返事をしてみる。


「小説の中で、そういうシーンがあったらお願いするかも。その時はよろしくね」


 うん、やっぱり取材デートの延長で、そう言ってただけだったようだ。変に勘違いしなくて良かった。

 それにしても秋月と俺の距離感がよく分からないな。相談とかで頻繁に放課後や休日に会ったりしてるし、取材とはいえデートもしてて、側から見たらカップルみたいな行動をしてるような気がする。


 うーん……まあ、秋月も友達みたいな感覚なんだろうし、深く考えるのは止めよう。

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