第30話 これって水族館デートですか?①

 臨海公園に隣接する駅の改札前、デートと称した取材の待ち合わせで秋月を待ってるのだが俺は時間を持て余していた。


「さすがに三十分前は早かったな……」


 俺は待ち合わせの時間より三十分前に待ち合せ場所に来ていた。昔から、早め早めに行動するクセが付いていて、今日も早く来てしまった。デートが楽しみだったからじゃないからな? と誰にともなく、ひとり言い訳をしていると、後ろから不意に声を掛けられた。


「あれ? アンタもう来てたの?」


 秋月が後ろから覗き込む様に声を掛けてきた。初めて見た彼女の私服姿だが、制服姿しか見た事が無かったので新鮮だ。

 白いTシャツにフリルのついたチェックのスカート、袖にリボンのついた薄手の上着を羽織り、小さい黒のショルダーバッグ、あざとすぎない可愛らしいファッションは彼女の魅力を引き立ている。


 私服姿も可愛いな……


 つい意識してしまう。


「いや……な、なんか早く着いちゃって」


 少し見惚れてしまい声が上ずってしまった。


「本当は、デートを楽しみにしてたんじゃないの~?」


 秋月がニヤニヤしながら、何かムカつく事を言ってくる。


「そういう秋月だって随分と早いじゃないか。それにデートじゃないだろ? デートの取材じゃなかったか? お前も今日、楽しみで早く来たんじゃないの~?」


 こちらも負けずにあおってみる。


「そ、そう、デートじゃなかったわね、取材よ、取材。水族館が楽しみで早く来ちゃったの。決してアンタとデ、デートするから楽しみで早く来た訳じゃないんだからね! 勘違いしないでよね!」


 どこかのツンデレキャラのような台詞を吐き、デートじゃないとか言いながら、デートとか言ってて、相変わらず面白い奴だ。イジり甲斐がある。


「はいはい、小説の取材で来たんだよな。分かってるって。さて、お互いに早く来ちゃったけど、もう水族館はオープンしてるから行こうか」


 俺はさっさとこの場を離れる事にした。煽り合いをしていたら『痴話喧嘩か?』とか周りから注目されてしまった。秋月の私服姿はこの上なく目立つ。注目の的にされて恥ずかしい。羞恥プレイは好みじゃ無い。

 こうして待ち合わせから全くデートっぽくない雰囲気でデートの取材は幕を開けた。



 水族館は駅に隣接した公園の中にあり、公園内を数分歩いたところで入場口に到着した。チケットを購入し入場してから少し歩くと、目の前にガラス張りのドーム状の建物が見えてきた。


「おお、ここから地下に降りていくのか?」


「なんか地下迷宮への入り口みたいでワクワクするわね」


 異世界モノの小説を書いている秋月は、如何にもそれらしい台詞を吐きながら期待に胸を膨らませているようだ。


 ガラス張りのドーム状の建物の中にあるエスカレーターで下に降りると、目の前に巨大な水槽が現れた。


 入場して一番最初に目玉であろう巨大な水槽を展示しているのはインパクトがあり、これからの展示に期待させる上手いやり方だと思う。


「うわあ大きい……ねえ、みてみて! スゴーイ!」


「おお! でけぇ……アレはエイかな?」


「えーと……マンタじゃないかな?」


 エイもマンタも区別はつかないが、大きな水槽には他にも大きな魚が飼育されており圧倒的な存在感を示している。


 巨大な水槽を前に大はしゃぎする秋月は、まるで遠足に来た小学生の様だ。普段から子供っぽいところもあるが、今は完全に童心にかえっている。


「水族館の魚見て『美味しそう』って言うの日本人だけらしいぞ」


「あー、分かる! 水槽で泳いでる魚を見て、美味しそうなんて思うのなんて、寿司とか刺身で魚を生で食べる日本人ならではよね」


 水族館に行けば日本人なら誰でも話題にしそうな会話を交わしながら、順路を進んで行く。


 「ほら見て! 小ちゃいサメがいる! サメもあれ位のサイズなら可愛いね」


 水槽で泳ぐ魚を見て子供の様にはしゃぐ秋月は、美しさと可愛さを兼ね備えた完璧美少女だった。そんな彼女を見て俺は思う。さすが学園一の美少女と呼ばれるだけあるな……と。


 でも……チートとかハーレムの小説書いてるなんて誰も思わないだろうなあ。


 そう考えると残念美少女だよな……と思いながらも、ちょっと親近感が湧いてくる。ファンアートを描かなければ、こうやって一緒に水族館に来るなんて事も無く、身近にいて遠い、ただのクラスメイトだったかもしれない。こんな風に仲良く出来るのも、魅力的なキャラクターを書いてくれた秋月のお陰だな。感謝しておこう。


━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

近況ノートに友火の私服姿を、つちぐり様にデザインして頂きました。ラフイラストも投稿しましたので、よろしければご覧ください。

https://kakuyomu.jp/users/t_yamamoto777/news/1177354054893603769


また、近況ノートにイラストに関するアンケートを行っていますので、御協力をお願いします。

https://kakuyomu.jp/users/t_yamamoto777/news/1177354054893603871

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます