第22話 デート?のお誘い(後編)

 秋月が話した事を要約すると、現在執筆中のラブコメでデートシーンを書くのに取材をしないと書けないらしい。一人では取材にならないから相手役として俺に白羽の矢が立った、という訳だ。


「話は分かった……が、何で俺が相手なんだ? 秋月とデートしたい奴なんて巨万ごまんといるだろ?」


「他の男子からは下心がありそうな、イヤらしい目で見られたりする事が多いから……二人きりで出掛けるとかは何か怖いの。今まで男子と二人きりで出掛けた事が無かったし……その点アンタは普段、そういう目で私を見ないで接してくるでしょう? それに二人きりで出掛けるような仲の良い男子もいないし」


 秋月は見た目も良くスタイルも良いから、そういう目で男子が見るのも仕方ないとも思う。彼女にとっては迷惑な話だが。

 ……にしても、彼女が一回も男子と二人きりで遊んだ事が無かったとは驚きの事実だ。


「まあ……俺にとって秋月は、面倒事ばかり持ち込んで来る認識しかない気がするな。今日みたいに」


「デートを面倒事とか、その歳でどんだけ枯れてんのよ……アンタは……」


 秋月が呆れた様に苦笑した。


「と・に・か・く! アンタは無害そうだから相手にうってつけ、だからデートするの! いい? 分かった? で、でも、デ、デートのだからね! か、勘違いしないでよね!」


 無害だからうってつけとか言わて喜ぶべき事なのか疑問だが、フリとはいえデート相手に選ばれたのは光栄に思うべきだろう。だからデートの、承諾する事にした。


「相談はいつでも受けるって言ったし、デートの取材に協力するよ」


「本当⁉︎ 良かった……受けてもらえなかったら、デートシーンを想像で書くしか無かったから……ありがとう」


 俺としては、秋月が面白い小説を書く為の協力をする事に断る理由は特にない。こうして喜んでもらえるし。


「で、具体的に何かあるのか? 取材したい場所とか」


「私、水族館に行きたい!」


 即答だった。


「それって、秋月が行きたいだけじゃねえか! 取材なんだろ? ちゃんと考えろよ」


「えーと……動物園でもいいよ? 私、生き物は魚類から爬虫類まで大好きだから」


「違う、そうじゃない! 秋月の行きたいとこじゃなくて取材が必要な場所の話だ」


「えー、じゃあ水族館でいい。動物園も行きたいけど、水族館の雰囲気は取材しないと書けそうもないから。あ、言っとくけど私が行きたいだけじゃなくて、ちゃんと小説にも書くからね」


 自分で行きたいって言ってるし。秋月って頭も良くて優等生だが少し抜けてるとこあるよな。だから美人で優等生でありながら、こうして接してみると身近に感じるのかもしれない。


「じゃあ、水族館って事で決まりだな。俺も水族館なんて小学校の課外授業で行ったきりだし、どこの水族館にするか……」


 俺はそう言いながらスマホで水族館を検索する。


「えーと……入場料結構高いんだな。二千円〜三千円くらいするし」


 俺はイラストで稼いではいるが高校生には三千円でも大きい金額だ。


「……あ、ここなんてどうだ? 近いし入場料七百円だって。臨海公園水族館」


 秋月にスマホを渡し見てもらう。


「……うん、ここにしよう。海沿いの公園内だしデートには最適かも。あ! 観覧車もあるんだ? これは乗ってみたいかも……」


 結局、水族館じゃなくても秋月が行きたいところが取材先になるようだ。


「取材なんだからな? 目的忘れるなよ」


「分かってるわよ……それにしてもアンタは本当にデートとか興味が無いの? フリとはいえデートなんだよ? なんか全然嬉しそうじゃ無いし、本当は私と出掛けるのは嫌?」


 急にしおらしくなった秋月は項垂うなだれ、上目遣いで俺の顔を覗き込み確認してきた。


「そ、そんな事ないって! 俺もデートなんてした事ないし、ちょっと恥ずかしかっただけで嫌なんて絶対ないから! そ、その……むしろ嬉しかった……かな?」


 美少女の上目遣いは反則だ。ドキドキしてしまい思わず目を逸らしてしまう。


「そう……なら良かった。私も楽しみにしてるからよろしくね」


 こうして秋月と初デート? をする事となった。まあ……本音を言えば凄く楽しみではある……かな?

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