第21話 デート?のお誘い(前編)

「帰りどっか寄ってくか?」


 三学期の最終日、終業式を終え教室に残っている俺と誠士に大介が遊びに誘ってきた。


「俺はクラス委員の用事があるから、直ぐには帰れないな」


 誠士はクラス委員だから最後の片付けやらがあるようだ。


「俺も今日は教室の日だから無理だわ」


 大介と誠士は俺が教室に通っている事は知っている。気が許せる数少ない友達にはイラストの事は話している。あとは春陽と……秋月は……友達? なのか? キッカケがアレだったが気が許せるし、妙にウマが合うんだよな。大介と誠士と同じように秋月とはウマが合う。気兼ねせずに意見を言い合ったりできるし、以前感じていたような距離感も今は感じない。こういう感覚が友達なんだろうか? だとしたら、彼女の事をアイドルのような遠い存在のように思っていたのは、俺が勝手に壁を作って遠ざけていたからだ。今後はもっと視野を広げ、人との繋がりを大事にしていきたいと思う。


 そんな秋月とは教室へ行く前に待ち合わせをしている。昨日の夜、お願いがあるとメッセージを送ってきた。彼女の相談とかお願いを聞くのはなんだか気が重い。大体ロクな事が無いからだ。以前、話くらいは聞くと言った手前無碍むげにもできないので今日は相談を聞く事にした。


「そうか、じゃあまたな! 春休み中に連絡するから遊びに行こうぜ! 次も一緒のクラスになれたらいいな!」


 大介はそう言ってニカッと笑った。


「ああ、俺からも連絡するよ。誠士もこの後の片付け頑張れよ」


 二人に挨拶を済ませた俺は教室を出て秋月と待ち合わせの場所に向かった。





 このカフェで秋月と待ち合わすのは何回目だ?


 恒例の待ち合わせ場所となったビックリカメラ内のカフェの前に立ち、俺は溜め息を吐いた。過去の待ち合わせではイラストの事で問い詰められたり面倒事ばかりだった気がする。


 今日は一体何なんだろう? そんな事を考えながら店内に入ると相変わらず目立つ容姿の秋月は直ぐに見つかった。


「よう、待たせたな」


 購入したドリンクをテーブルに置き、秋月の前の席に腰を下ろした。


「で、今日はどうしたんだ?  お願いがあるって言ってたけど」


 そう俺が尋ねるが秋月は何かモジモジしている。


「なんだ? トイレに行きたいのか?」


「違うわよ!」


 デリカシーが無いわね、と怒られてしまった。


「え、あの、その……わ、私と、その……デ、デートしてみたくない? べ、別にアンタとデ、デートしたくて言ってる訳じゃなくて……その……」


 秋月の唐突なデート発言に彼女の正気を疑った。


「……秋月……お前、変な物でも拾い食いしたか? おかしな事を口走ってるぞ……」


「ちょっと失礼ね! 拾い食いなんてしないわよ! もう一回言うわよ。わ・た・し・と、デートしてみたくない? って言ってんの! 女の子に何回も言わせないでよね」


 秋月は半ばヤケになったのか大きな声だった為、周りから注目されてしまった。彼女のその容姿から、ただでさえ目立つというのにデートとか反感を買いそうな発言は止めて欲しい。周りの男共からの俺の対する視線が痛い。


「いや、別に? 面倒くさいし」


 また面倒な事になりそうな予感がする。俺の中でこのデートのお誘いは危険だとアラートが鳴り響いている。


「え? ちょっと! こんな可愛い女の子とデートできるのに面倒くさいって……アンタねぇ。だからモテないのよ」


「余計なお世話だ」


 やっぱり自分が可愛いって自覚はあるんだな。そして俺はモテないって認識なんだな……否定できないのが悔しい!


「それに何で『デートしてみたくない?』なんだよ。絶対何かあるだろ? ダマされないぞ」


「もう……分かったわよ。ちゃんと話すから聞いて」


 最初から素直に理由を話せばいいのに、と思ったが余計な事は口には出さない方が身の為だろう。


「分かった。大人しく聞いてるから」


 秋月は溜息をひと息吐いて発言の意図を話し始めた。


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ヤマモトタケシです。

この作品のボイスドラマを作りました!

詳しくは近況報告をご覧ください。

https://kakuyomu.jp/my/news/1177354054934102359

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