第10話 ビックリカメラでお買い物(前編)

 反省堂で買い物中に春陽に偶然出くわすハプニングもあったが、彼女はさっさと帰ってしまった。


「春陽の奴なんか元気なかったし、そそくさと帰っちゃったな」


 いつも元気いっぱいの春陽にしては珍しく元気が無かったように見えた。体調でも悪かったんだろうか?

 

「うん、なんか慌てて行っちゃったね」


「それにしても、さっきのヒドくないか? 肘鉄食らわされた挙句、俺がラノベ買ったみたいになってるじゃないか」


 俺の趣味は中学の頃から春陽にバレてるので問題無いが、秋月の行動には問題があると思ったので抗議した。


「ごめんなさい……だって私の趣味は春陽にも話してなかったから……」


 あれ? 素直に謝ってきたな。本人も悪いと思っていたようなので許す事にしよう。


「まあ……そういう事なら仕方がないか……そういえば今日の昼休み、春陽に放課後ヒマ? って聞かれたんだよ。まさか同じ反省堂で買い物のお誘いだったとは思わなかったよ」


「春陽に悪い事しちゃったかな?」


 秋月は少し気にしているようだ。


「秋月と先に約束してたんだし気にしなくていいんじゃない?」


 春陽は別の日にでも付き合ってあげればいいだろう。毎日学校で会うんだし。


「そうね……それじゃあ本の会計してくるから、ゆっくり話せる場所へ移動しましょうか」


「あ、その前に、さっき話したビックリカメラに行かないか? 俺も買い物があるんだよ」


「ん、分かった、行きましょう」



 駅の反対側には大型の家電量販店ビックリカメラの他にも大型の店舗があり、かなりの人で賑わっている。

 人混みの中、秋月と二人で歩いていると周囲の男共から注目されているのを感じる。当然、人目を惹いているのは彼女で、俺は『一緒にいるあいつ何?』みたいな目で見られて微妙に居心地が悪い。そんな思いとは裏腹に彼女は何とも思っていないようだ。


 目的のビックリカメラに到着した俺たちは、先に買い物を済ませる事にして二階の文房具売り場に向かう。


「凄い商品の品揃え!」


 圧倒的な商品のラインナップを前に目を輝かせる秋月。


「ここで揃わない文房具は無いんじゃないか、って位の品揃えだよな。下手な専門店より品数多いんじゃないか?」


「あ、ちょっとこのメモ帳可愛い」


 手帳売り場で秋月がブサカワイイ? って感じのイラストが表紙に描かれたメモ帳を手に、はしゃいでいる。そういやライムトークでもブサカワイイ感じのスタンプを送って来たな。彼女の好みが少し分かった気がする。あからさまに可愛いを狙ったキャラよりも、人によって『なんかビミョーに可愛くない』そんなイラストが好みのようだ。そういえば春陽は『全力で可愛くしてます』みたいなスタンプが好きだったな。


「秋月、俺は画材コーナーで買い物があるから、ちょっと行ってくる。文房具売り場に居てくれ」


「うん、分かった。私も欲しい物があるから買い物してるね」


 文房具売り場での買い物を終え俺たちはモニター売り場に向かった。


「それにしても本当に凄いわね。電気製品だけじゃなく雑貨から何でも売ってるのね」


 モニター売り場に向かう途中にも旅行バックや美容器具等、様々な商品がディスプレイされいる様を見て秋月は感心しているご様子だ。


「ああ、最近は外国人観光客も多いから、それに合わせた品揃えにしてるんじゃないかな? もはや家電量販店じゃなくて百貨店だよな」


「私は電気製品ばかり売ってるイメージだったけど、これなら家電に興味が無い人でも楽しめるわね」


 上の階には本屋や安売り系のアパレルショップも入ってるし、レストラン街もあるし家族連れで来ても、ここだけで用事が済んでしまう充実ぶりだ。


「秋月、あっちに見たいものがあるから行ってみよう」


「うん、分かった」


 俺は広い売り場の一方向を指差し、今日の目的の一つであるモニター売り場に向かう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る