第13話 咲間春陽(前編)

 私のクラスメイトに秋月友火という女子がいる。同じ女子から見ても、美人でスタイルも性格も良くて、男子からも女子からも人気がある。その完璧美少女が今、私の前方で鼻歌を歌いながら通学路を歩いている。


 その優れた容姿からタダでさえ注目度が高いのに、鼻歌を歌っている事で周りからの注目度は大変な事になっている。当の本人は気付いているのか、気付いていないのか。

 ちょっと面白いので、しばらく観察してみる事にした。


 人目を惹く容姿に、ごく自然で飾らない可愛い鼻歌は、通学中の男子から熱い視線を集めている。


「友火! おはよう! 今日は朝からご機嫌だね」


 そろそろ学校に近くなり友火に声を掛けた。


「おはよう春陽。私そんなに機嫌良さそうに見える?」


「うん、見える見える、だって見えるも何も鼻歌聞こえてるよ?」


「え⁉︎ 私、鼻歌歌ってた?」


「うん、思いっきり聞こえたよ。ふふふーん、って何の歌か分かんないけど、可愛い歌声に他の学生たちも目線が釘付けだったよ。特に男子。面白いから暫く後ろで観察してた」


「は、恥ずかしい……よりによって他の生徒に聞かれてたなんて……」


 無意識で男子の注目を集めてしまう友火、恐るべし。


「にゃははは、ごめんごめん鼻歌を歌う友火も可愛かったから大丈夫だよ!」


「もう、春陽も観察なんてしなくていいから早く声掛けてよね! 先に教室行ってるから!」


 ぷりぷりと怒って校門に向かって駆けて行く友火は、同性の私から見ても可愛くて羨ましく思う。少し天然ボケなところも彼女の魅力を引き立て、自然と人を惹き付けているんだと思う。私も彼女の事が大好きだ。そんな彼女が鼻歌を歌うくらい浮かれてる理由……なんだろう? 凄い気になる。お昼休みにでも聞いてみよう。



〜 お昼休み 〜



「友火、今日は朝からご機嫌だったね? 何か良いことでもあったの? 通学しながら鼻歌なんて歌ってたし」


 私は朝から気になっていた事を友火に聞いてみた。


「ははーん……彼氏かい! 彼氏でもできたのか⁉︎ 友火はモテるけど男っ気無かったからねえ……いよいよ春が来たのかあ!」


 そう、友火はあれだけモテるというのに、浮いた話は聞いた事が無かった。彼氏の一人や二人居てもおかしくはない。

 

「ち、違うって、そんなんじゃないってば」

 

 頭をブンブンと振って否定する友火。


「まあまあ、友火くん、彼氏の事は隠さずにオジさんに聞かせておくれ」


 彼氏じゃ無くて気になる男子とかかもしれないけど、どっちにしても気になるものは気になる。


「もう、何で男の話になるのよ。彼氏なんて居ないってば」


 友火は、変な噂を立てないでよね、と言いつつ笑顔で必死に否定してるが、自分で爆弾発言をした事には一切気付いていない様子だ。


 彼氏になれるチャンスがあるんだ! って息巻いている男子生徒がクラス内でザワついている。彼女の一挙手一投足が男子共が注目されている証拠だ。


 そんなザワついている教室内を見渡すと、冬人達数人のグループが目に入った。なんか凄く盛り上がってた。やっぱり友火に彼氏がいない発言で盛り上がってるのかな……? 


 なによ、はしゃいじゃって……


 ……なんか面白くない。


 盛り上がる冬人達を見て私は溜息を吐いた。


 友火の彼氏がいない発言により、浮ついた空気のままお昼休み過ぎていった。

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