第5話 秋月友火は人気者

「いってきまーす!」


 ファンアートをもらった翌朝、爽快な気分で目が覚めた私は、まるで遊びに行くかのように玄関を出て学校に向かった。


「友火! おはよう! 今日は朝からご機嫌だね」


 クラスメイトの咲間春陽さくまはるひが今日も元気いっぱいに声を掛けてきた。彼女はいつも元気な明るい性格で、クラスで一番仲が良い。


「おはよう春陽。私そんなに機嫌良さそうに見える?」


「うん、見える見える、だって見えるも何も……通学路をスキップしながら鼻歌を歌ってたよ?」


「え⁉︎ 私、鼻歌歌ってた? しかもスキップって……」


「うん、思いっきり聞こえたよ。ふふふーん、って何の歌か分かんないけど、可愛い歌声に他の学生たちも視線が釘付けだったよ。特に男子。面白いから暫く観察してた」


 通学路を鼻歌を歌いながらスキップなんて、考えただけでも恥ずかしいのに、実際に自分でしてたなんて……穴があったら入りたい……。


「は、恥ずかしい……よりによって他の生徒に聞かれてたなんて……」


「にゃははは、ごめんごめん鼻歌を歌う友火も可愛かったから大丈夫だよ!」


 フォローしてるつもりだろうが、どこが大丈夫だか分からない。


「もう、春陽も観察なんてしなくていいから早く声掛けてよね! 先に教室行ってるから!」


 周りからチラチラと視線を向けられてた事に気づかない程浮かれ、無意識に鼻歌を歌っていた事に恥ずかしくなり、小走りに通学路を駆け抜け学校に向かった。



〜 昼休み 〜



 私は春陽と昼食を摂りながら、お喋りに華を咲かせていた。春陽本人は自覚していない様だけど、彼女はクセ毛のショートで少しタレ目で可愛く、クラスの男子から人気がある。私達がクラスメイトの男子から注目されていると感じるのは、気のせいでは無いと思う。


「友火、今日は朝からご機嫌だったね? 何か良いことでもあったの? 通学しながら鼻歌なんて歌ってたし」


 朝の恥ずかしかった事を思い出させないで春陽!


 そんなことはお構いなしの春陽は更なら爆弾を投げ込んできた。


「ははーん……彼氏かい! 彼氏でもできたのか⁉︎ 友火はモテるけど男っ気無かったからねえ……いよいよ春が来たのかあ!」


 春陽が興奮した様子で机から身を乗り出す。


「ち、違うって! そんなんじゃないってば」


「まあまあ、友火くん……彼氏の事は隠さずにオジさんに聞かせておくれ」


「もう……何で彼氏とかの話になるのよ。彼氏なんて居ないってば」


「それじゃあ、気になる男性が出来たとか⁉︎ それはそれで事件だわ……。友火に想われる男性とか、どんだけ幸せなのよう!」


 春陽の興奮は収まらないようで、ある事無い事を言ってくる。


「春陽! 好きな人とかもいないから! 恥ずかしいから止めて!」


 周りの男子生徒から「おい……秋月に彼氏いないってよ!」、「気になる男子もいないみたいだし、アプローチすればワンチャンあるかも……」、「俺告白するわ」とか、ヒソヒソ聞こえてくるんですけど……恥ずかしい……。


「もう! 変な噂立てないでよね!」


 そんな面白がっている春陽を横目に私は溜息を吐いた。

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