第4話 これが噂のファンアート

「はー、お腹いっぱい……ちょっと食べ過ぎちゃった」


 お母さんの作る料理は美味しいから、つい食べ過ぎちゃう。最近、体重が増えてきてるから気を付けないと。


 夕食を終えてリビングで寛いでいると、テーブルの上に放置していたスマホがブブッと振動し、着信音が鳴り響いた。確認すると『めざし』に、ダイレクトメッセージが届いた旨の通知だった。


 ――なんだろう? 作品に対する新着のコメントでも無く、作者にダイレクトメッセージが届く事は稀だ。ダイレクトメッセージの差出人は『Fuyuto』、本文の内容に目を通す。



『いつも異世界ハーレムを読ませて頂いてるFuyutoと申します。異世界ハーレムのキャラクターのイラストを描いてみました。Pixitに公開の許可を頂きたいと思い、ダイレクトメッセージを送らせて頂きました。イラストは今、非公開にしてありますが、以下のアドレスからアクセスすれば見る事が出来ます。パスワードは「fuyutoXXXX」です。


http://www.pixit.com/xxxxxx/xxxxxxxx/


返信して頂けたら幸いです。これからも更新を楽しみにしています。

それではよろしくお願い致します』



 ――えっ⁉︎ これって私の小説に絵を描いてくれたって事? スマホでダイレクトメッセージの内容を確認した直後、部屋に戻り『めざし』のマイページにアクセスする。ダイレクトメッセージに記載されている、イラストのページのURLのリンクを期待に胸を膨らましてタップしパスワードを入力する。


 うわあ……


 スマホに映し出されたカラーイラストを見て思わず溜息を漏らした。スマホに映し出されたイラストが想像以上のクオリティであったからだ。ライトノベルを好んで読んでいるせいで、そういった小説に使用されている挿絵のクオリティを私はよく知っている。『Fuyuto』のイラストは、それらに勝るとも劣らない出来の良さであり、驚きを隠せない。


「これが噂のファンアート……」


 まさかファンアートを貰えるなんて思ってもいなかった私は、喜びに身体を震わせた。小説のブックマークが増えるよりも、感想のコメントを貰うよりも何よりも嬉しかった。自分の小説の出来が良いとは決して思っていない。だから、続けて読んでくれている読者の存在は、連載を続けていく上でのモチベーションになる。それだけでもクリエイター冥利に尽きると云うのに、キャラクターのイラストまで描いてくれた熱心な読者が居た事に、原作者として至上の喜びを感じていた。


 ――どんな絵を描いてるのかな? 他の作品も見てみよう。


 私はベッドに寝転がり『Fuyuto』の作品へのリンクをタップする。カラフルなサムネイルがズラッと並んだ。サムネイルの小さな画像ですら、『Fuyuto』のイラストの上手さが分かる。サムネイルをタップし、ひとつひとつ作品を見て改めて思う。


 ――うん、やっぱり上手いなあ。女の子のイラストばっかりだけど、どれも可愛いし。


 『Fuyuto』の趣味嗜好をそのまま現しているイラストは、所謂いわゆる萌え系と呼ばれているカテゴリーで、R-18の成人向けでは無いが、R-15くらいの水着や下着チラリ位の際どい露出がある作品も多かった。


 でも……ちょっとエッチなイラストも多いかな……うわ、見えそう……


「ともかー、お風呂湧いたから入りなさーい」


 ピンク色に染まり掛けた思考を母親の呼び声が遮った。


「は、はーい、少ししたら入るねー」


 現実に思考を戻された私は、慌ててバスルームに向かった。



 脱衣所で部屋着を脱ぎブラジャーを外すし鏡を見る。


 ――うーん……なんか最近また大きくなった気がする。


 洗面の鏡に映った身体を見て溜息を吐いた。買ったばかりのブラジャーのサイズがすぐに合わなくなるという悩みを最近は抱えている。クラスメイトの女子に胸のサイズを羨ましがられる事が多いが、大きければ大きいなりの悩みがあるんだよ、と言いたくなるが納得して貰えなさそうなので、いつもは曖昧に返事をしている。


 ちゃぽん、と水音を浴室に響かせ、私は湯船に浸かりながら、イラストの事を考え溜息を吐いた


 ――はぁ……あんな素敵なイラスト描いてくれて本当に嬉しいな。


 自分の書いた小説に、イラストの挿絵があったらどんなに素晴らしい事だろう。そう考えて絵の練習をした事もあった。が、いざ描いてみると、その小学校低学年児が描いた様な絵を描き続け、心が折れた過去がある。


 絵を描く事は心が強く無いと、努力し続けるのは大変だなと実感したものだ。何事も努力無くして上達する事は出来ない。だから、努力し続けている人を尊敬している。別に絵が下手でもいい、小説が面白く無くてもいい。上達する為に継続して努力し、作品を完成させる事に意味があると考えている。そういう意味で数多くのクオリティの高い作品を完成させている『Fuyuto』と云う人物は非常に好ましく思えた。例え、それが萌え系の少しエッチなイラストであろうと。


 ――『Fuyuto』さんかぁ……どんな人かな? あれだけ上手いし、結構年上の人かな?


 入浴を終えてベットに寝転び、未だ見ぬ『Fuyuto』と云う人物に思いを馳せた。


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近況ノートにこの話のイラストも投稿しましたので、よろしければご覧ください。

https://kakuyomu.jp/users/t_yamamoto777/news/1177354054893603769


また、近況ノートにイラストに関するアンケートを行っていますので、御協力をお願いします。

https://kakuyomu.jp/users/t_yamamoto777/news/1177354054893603871

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