【完結】小説投稿サイトの作品にファンアートを描いたら、学園一の美少女にやたらと相談されるようになった件

ヤマモトタケシ

小説投稿サイトの作品にファンアートを描いたら、学園一の美少女にやたらと相談されるようになった件

第一章 ファンアートを描いたら美少女と仲良くなりました

第1話 学園一美少女の人に言えない趣味

神代かみしろくん、このプリントを配ってもらえる?」


「ああ、秋月あきづきさん分かった」


 今、俺の目の前にいる秋月友火あきづきともかは、去年入学した時から学園一の美少女として大人気のクラスメイトだ。


「秋月さん、配り終わったよ」


「うん、神代くんありがとう」


 ニッコリと微笑む秋月さんは、可愛いハートの髪留めでワンサイドに纏めて一見幼く見える。しかし彼女の胸はクラスの女子の中でも圧倒的に大きい。そのメリハリのあるプロポーションに勝気な眼差し、可愛いと美人を兼ね備える完璧な美少女だ。


 そんな美少女と半年以上クラスメイトとして接しているけど、交流といえば先ほど交わしたようなホームルームでプリントを配るように頼まれたりと、学級活動での会話以外はした事がない。

 クラスメイトという接点はあっても、ハッキリいって話す事が無いのだ。まあ……オタクな俺のコミニュケーション能力が足りないってのあるだろうけど。大体の男子にとっては高嶺の花ではないだろうか?


 秋月友火とはクラスメイトなのに、アニメの中のヒロインのような、どこか別の物語の中の人間のように感じている。


 俺はマンガやアニメ、ライトノベルが好きな高校一年生のオタクだ。それに加えてもう一つ趣味がある。それは絵を描く事。特に美少女と呼ばれるキャラクターのイラストを好んで描いている。


 小さい頃から絵を描いていたけど中学生の時、美少女キャラのイラストを描いている事がバレて、クラスでオタク認定され揶揄からかわれた苦い思い出がある。だから高校に入学してからはバレないように学校生活を送っている。


 高校のクラスでは友達はいるし、ボッチでは無いけど存在は薄い。クライスメイトからの俺に対する印象はクラスで影の薄い目立たない隠キャな男子。

 中学の頃に悪い意味で注目されてしまったので、今のクラスでの立ち位置は理想的だと思う。


 そんな目立つのを避けている俺が、注目度ナンバーワンの秋月友火というアイドル的存在と、仲良くなるような事があるとは到底思えなかった。


〜 昼休み 〜


 教室の窓際の自分の席からボーッと窓の外を眺めていると、視線の先には中庭で昼食を食べている女子グループの姿があった。


 ――今日は暖かいとはいえ、よく真冬に外で飯を食おうと思うよな。


 そんな事を考えていると、後ろから一人の男子生徒が声を掛けてきた。


冬人ふゆひと、なにボーッと見てんだ? ああ……ボーッとしてるのはいつもの事か」


 失礼な発言をして覗き込んで来た長髪、痩身のチャラい男子生徒はクラスの友人の柳楽大介やぎらだいすけだ。一見チャラくて軽薄そうに見えるが、実際にはそんな事もなく友達思いの良いヤツだ。チャラくしているのは、その方がモテそうだから、だそうだ。モテてる様子は無さそうだが。


「あー、なるほど、我らがアイドル秋月が中庭で飯食ってんのか。そりゃ視線は釘付けだよな」


 窓の外、中庭の光景を見て大介は、一人納得したかの様に頷いた。


「いや、寒いのによく外で飯食うなあって思ってただけだよ」


「名前に“冬”って付いてるのに寒がりな奴だな」


「それって関係無くね? 名前に冬が付くからって寒さに強いわけじゃないからな。それに秋月だけを特定して見てたわ訳もないぞ」


 変な誤解をされるのも嫌なので、秋月の事は否定した。


「まあ、あれだ……秋月を狙ってる男はたくさんいるんだから、見惚れてたからって照れる事はないぞ。うん」


 大介は照れ隠しだと勝手に解釈している。


 これ以上否定するとムキになってると思われるし、大介が調子に乗って揶揄からかってくるのは明白で面倒なので弁明するのは諦めた。


「一年C組あきづきとも、容姿端麗、成績優秀、男子からも女子からも受けが良いときたもんだ。もっと、お近づきになりたいよなぁ」


 俺はオタクだからアニメやマンガに登場する二次元の美少女も好きだけど、現実の女子にも興味はあるし彼女だって欲しい。もちろん、とびきりの美少女である秋月友火に全く興味が無いわけじゃないけど、大介みたいにイチイチ気にしないようにしている。

 まあ……隠キャな俺には学園のアイドルに声を掛けるには敷居が高過ぎるだけなんだけどね。



◇ ◇ ◇



「あー! いいシーンが思い浮かばない!」


 私は趣味で書いている小説の最新話を執筆中で、大事なシーンに差し掛かっている。でも、さっきから筆が全く進まない。頭の中には色々なシチュエーションが浮かび上がるが、それを文字に起こすのは本当に難しい。


「なんとか夕飯までに最新話を投稿したいな……」


 さっきから文字を打っては消してをパソコンで繰り返している。


 ――あ! そうだ……この前、まとめサイトで見たアレ面白かったな……ちょっとアイデアをパク……お借りしようかな。オマージュよオマージュ。


 私は以前ネットで見つけた面白いネタを思い出しアイデアをお借りする事にした。


 四天王と呼ばれる敵の一人が、主人公の人間に戦いで破れるが、実は四天王の中で最弱である事から 『一番弱い奴を倒したからって調子に乗ってんじゃないよ!』的な使われ方をしている。

 これを続けていけば『四天王を倒したくらいで調子に乗るな。我ら死天王こそ魔王様の直属。四天王など下っ端に過ぎんわ!」という具合に、永遠に話を続けていく事が出来る最高のネタなのだ。


「さっさと書いてアップしようっと。更新間隔が開いちゃうとPV(閲覧数)が減っちゃうからね」


~ 一時間後 ~


『グアアアア!』

『奴がやられたようだな……』

『フフフ……奴は我ら四天王の中でも最弱……』

『人間如きにやられるとは四天王のツラ汚しよ……』


「やっと書き終わった~。誤字、脱字のチェックも済んだし後は投稿すれば更新終了!」


 連載している小説の最新話を書き終え、ふぅと、ひと息吐きチェアにもたれ掛かったと同時にドアをノックする音が聞こえた。


「はーい」


 右手に持ったお玉を振りながら、お母さんが部屋に入ってきた。


「友火、夕飯の支度が出来たわよ」


「うん、パソコン片付けたらすぐ行く」


「冷めちゃうから早く来なさいよ」


「うん、分かった」


 慌てて最新話を投稿し、ひと息吐く。


「ふぅ……なんとか夕飯までに更新間に合った。感想とかもらえるといいなぁ」


 連載している小説にPVとブックマークが増える事に期待しノートパソコンを閉じる。ブックマーク通称ブクマ。これが増えると小説を読んで貰えている実感があり執筆のモチベーションになる。


 感想、レビューは読者が小説に何かしら感じるモノが無ければ書かれない。だから感想やレビューをもらえると、その人の為だけにでも連載を続けようとしてしまう甘い果実。


 ファンアート……小説のキャラクター等をイラストにして描いてもらえるプレゼント。絵が描けないと出来ない事なので敷居がかなり高い。

 SNS等では『ファンアート? それって都市伝説でしょ?』と言われるほどレア。


 私も含めて小説を書いてる人は、何かしら読者からリアクションを求めていると思う。感想は貰ったことがあるが、レビュー、ファンアートは無い。


「ファンアート欲しいなぁ……イラストを描きたくなるような物語を書かないとね!」


「友火! もう準備出来てるから早く降りてきなさい!」


「は、はーい! すぐ行く!」


 再びお母さんからキッチンに降りてくるように促され、慌ててキッチンに向かう。


 ――ファンアート貰えるように頑張ろ!


 私は決意を胸に階段を駆け下りキッチンへと向かった。

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