第3話 情報収集。

学生食堂、略して学食。


学食は昼ご飯だけではない。

営業時間は17時までだが、部活前の栄養補給だったり、おやつだったり、部活後に食べる用に弁当にしてもらったりと、なんだかんだ需要がある。


ので。


昼時程ではないが、こんな時間でもそれなりに賑わっている。

稲葉と神田は飲み物を手に食堂内を彷徨った。

部活動とは無縁そうな、おそらく喫茶店扱いで居座ってる女子のグループを見つけると、稲葉は人懐っこそうな笑顔を作って、声をかけた。神田はそのまま素通りし、少し離れた席に腰を下ろす。


「かわいい子はっけーん! ねーねー、相席いい?」

「え? あら、いいわよ。ねえ?」


派手なメイクを施した女生徒の言葉に、周りの子たちが一斉に頷く。

「この学校にこんなかわいい子たちいたなんて知らなかったなー」

「えーやだぁー」

「お世辞言っても何も出ないよー?」

「お世辞なんかじゃないってー。みんな超タイプだもんー。あ、誰か俺と付き合わね?」

「えー。やだー。彼氏いるしー」

「あっちゃー。ソッコーふられちゃったよ」


大げさに嘆く素振りに、笑いが起こる。


「あ、そうそう。君たち一年だよね? 一年にちょっとおとなしい感じの可愛い子いなかったっけ? キレイな黒髪ロングの。最近見かけないなーって思っててさー。知らない?」

「えー誰だろー?」

「あ、あの子じゃない? 小笠原さん」

「あ、三組の?」

「そうそうー。なんかー行方不明らしいよー」

「えーマジでー!?」

「こないだ校長室に親と警察来てたってー。あの子確か寮生じゃん?」

「えーマジかー。こわー」

「寮って確か学校の敷地内にあったよな? んじゃ、この学校内で行方不明になったって事??」

「かなあ?詳しくは知らないけどぉー」

「そっかー。なんかホント怖いなー。みんな可愛いから気をつけてー?」

「あはは、ありがとー」


俺そろそろ行くわー、楽しい時間をありがとー、と手を振りながらその場を離れた稲葉は食堂をあとにした。



時を少し戻して。



稲葉達から少し離れたところに座った神田は、コーヒー飲みながらさり気なく周りを観察した。

一年の小笠原の話が出た途端、少し離れたところに座っていた女生徒が不自然な動きを見せた。明らかに動揺しているようで、人目を避けるように食堂を出ていった。

神田はさり気なく立ち上がると、飲み物のカップを返却して、女生徒の後をつけた。





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