第5話 初めての魔法

「人間にも魔法は使えるのか?」


俺がサテラにそう訊くと、サテラは当然のように答えた。


「一概には言えないけど、身体に魔力が宿ってる人間なら練習すれば誰でも。なくても、大体の人間は外部から供給されたら使えるわよ。最大貯蔵量は人によるし魔力の操作の練習頑張らなきゃだけど」


キタ。


「よし、じゃあサテラが俺に供給してくれ。入れられるだけ入れてもらって構わない。ヤバそうなら言うから」

「ああ、そういうことね」


サテラは納得したように頷くと俺の胸に触れ、何やら詠唱を始めた。

同時に、なにか温かいものが俺の胸に流れ込んでくるのを感じた。魔力操作の練習をしなきゃいけないとのことだったので流れ込んできた魔力を身体の中で動かしてみる。


《スキル『魔力操作』を獲得しました》

《必要条件:『魔力操作』『魔法知識・火』を満たしました。『火属性魔法』を獲得しました》

《必要条件:『魔力操作』『魔法知識・水』を満たしました。『水属性魔法』を獲得しました》

《必要条件:『魔力操作』『魔法知識・風』を満たしました。『風属性魔法』を獲得しました》

《必要条件:『魔力操作』『魔法知識・土』を満たしました。『土属性魔法』を獲得しました》

《必要条件:『魔力操作』『魔法知識・光』を満たしました。『光属性魔法』を獲得しました》

《必要条件:『魔力操作』『魔法知識・闇』を満たしました。『闇属性魔法』を獲得しました》

《必要条件:『魔力操作』『魔法知識・空間』を満たしました。『空間魔法』を獲得しました》

《必要条件:『魔力操作』『魔法知識・無』を満たしました。『無属性魔法』を獲得しました》

《必要条件『火属性魔法』『水属性魔法』『風属性魔法』『土属性魔法』『光属性魔法』『闇属性魔法』『空間魔法』を満たしました。『全属性魔法』を獲得しました》

《『火属性魔法』『水属性魔法』『風属性魔法』『土属性魔法』『光属性魔法』『闇属性魔法』『空間魔法』『無属性魔法』が『全属性魔法』に統合されます》

《称号『非魔法世界で初めて魔法を極めたもの』を獲得しました》

《称号の効果により、EXスキル『魔導の叡智』を獲得しました》

《EXスキル『魔導の叡智』の効果により、『魔力増幅』『魔力量増加』『魔法発動円滑化』を獲得しました》


「…は?」


突如頭の中に流れてきたアナウンスのような声に困惑する。


「え、ちょっ雄二どうしたの!?雄二に注いだ魔力がいきなり増えてるんだけど!?」


サテラが慌てたように叫ぶ。


…てことは、多分『魔力増幅』とやらの効果の可能性が高い。それが発動しているということは、さっきのアナウンスのような音声が俺の幻聴の類という可能性が限りなく低いだろう。

即ち、俺は『魔導の叡智』などのスキルを本当に獲得したらしい。その辺の理由はいい。丁寧に説明されたからな。そんなことより、何故アナウンスが聞こえるようになった?魔力を手に入れたから?否。俺は気を失う前に聞こえたアナウンスを思い出した。あのときは魔力なんて持ってなかったからな。そして、その内容。今起きている状況と、今まで読んできたラノベの知識を全開にして考える。ラノベとかでよくあるパターンじゃないだろうか。つまり―――


「地球に魔物とかが出てきてカオスになるパターンじゃないか」



神界。


「おいゼウス!なんなんだあの人間は!?初めて見る魔法を改良して魔力を生み出したり、これから起こす災厄を予想したり!」


怒って怒鳴り声を上げるのは、立派な髭を持った白髪の老人。


「申し訳ありません最高神様!しかし、私はなにもしておりません」


そう言って土下座するのはゼウス。


「嘘を吐くな!言ってみれば、非科学世界の住人が『すまあとふぉん』とやらを解析して改良するようなことをやってくれたのだぞ!」

「…どうやら、あの星―――地球には魔法世界に非常に類似した世界を題材にしたラノベなる物語があるようで、彼もそれを愛読しているとのことです。それに加え、人間の中でも高度な知能を持っているようで…」

「情報から推理したということか…。仕方ない。災厄のレベルを引き上げ、あの日本とかいう国に集中させて確実に処理する」

「しかし、それでは災厄開始まで時間がかかるのでは?」

「仕方ないだろう。確実に潰すためだ」

「…わかりました。では、アスタルテの世界の災厄はどうするのですか?」

「お前の世界の災厄の準備があるからな。破壊神に任せる」

「ッ!?ですが、それでは世界の核すら回収できなくなるのでは?」

「仕方あるまい。上質な核だったが、リスクには代えられない」


そう言って最高神は災厄の準備に入った。

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