第4話 神々と災厄の始まり
―――世界には、大きく分けて2つの特性がある。科学技術が発展しやすいか、魔法技術が発展しやすいか。本来、全ての世界に於いてそれは片方に偏り、もう片方は時間と共に淘汰されることになっている。しかし、時々その性質が偏らず、両方が共存して凄まじい力を持つことがある。その力は、ときに神をも超え、神界にすら影響を与えることもあるとされている。当然そんなことになっては困るので、全ての世界を支配する最高神が定めたルール、それは――――
神界。
「おい、なんで俺の世界で魔法なんか使えてんだよ!」
と文句を言うのは地球がある世界の神ゼウス。今さっき、自分が管理する世界で災厄が始まるとのアナウンスを受けたのだった。
「あら、遂に災厄が始まるの?残念ね。あの星――地球?ができてから46億年だっけ?手に塩かけて育ててたのに…ププッ」
そう言って笑いををこらえるのはサテラのいる世界の神アスタルテ。
「そもそも、てめえの世界のエルフの奴が持ち込んだんだろうが!」
「知らないわよ。そっちじゃ魔法を使えないはずだったのに使えるようにしちゃったのはあなたの世界の人間でしょ?」
「くっ…っていうか、なんでこっちに来るんだよ」
「ランダム転移とかいう魔法の距離がちょうど良かったんでしょうね」
「巫山戯んな!あんだけ距離と方角が完璧に合うなんてどんな確率だよ!」
少なくとも、地球で『天文学的な』と言われるのより圧倒的に低いのは確定だ。
「そんなことより、もうすぐ『災厄』が始まっちゃうわよ?いいの?」
「…いいの?って言っても俺らにできることなんかねえだろ」
「…まあ、不干渉って最高神様に決められてるから、あなたの世界の人間がどうにかしてくれることを祈るしかないわね」
「神である俺らが祈るってのもおかしな話だけどな」
「……ッ!」
「ん?どうした?」
アスタルテが唐突に目を見開いて悲痛な表情をしている。
「な…なんで?」
アスタルテが受けたアナウンスはこう。
《非科学世界に於いて高性能電子機器の反応が観測されました。これより災厄を開始します》
「…っ。いたた…なにが…?」
サテラが転移魔法でエルフの里に帰還したとき、既に里は壊滅状態で魔人族も引き揚げた後だった。
とりあえず、いきなり襲われることなどはなかったためにサテラが安心していると、不意に頭に声が響いたのだった。
《非科学世界に於いて高性能電子機器の反応が観測されました。これより災厄を開始します》
直後、気を失った。
目を覚ましたサテラは、自分の衣服に何やら黒い板のようなものが混じっているのに気がついた。
「…これ、雄二が真剣な顔していじってた…?きっと、大事なものよね」
今エルフの里がどういう状況なのかは大体分かったし、雄二の大事なものなんだったら今すぐ返してあげないと困るかもしれない。
そう思ったサテラは、即座に転移魔法を再び起動し、雄二の部屋へと戻った。
「ぶげらっ!」
体が押しつぶされ、内臓が絞り出されるような感覚とともに雄二は目を覚ました。
「グッ…一体何が…」
「あら、雄二ごめんね」
「お前かああああ!!」
即座に身を返して逃れる。振り落とされたサテラが「きゃあっ!」とか言ってるが気にしない。
「はあ…なんで帰ってきたんだ?」
「あ、えっとね、これを間違えて持ってきちゃってたみたいで」
そう言ってサテラが差し出してきたのは雄二のスマートフォン。
画面を見ると、LINEの通知が来ている。
高田部長:おい遠藤、いつも時間の30分前には来てるお前が珍しいな。何かあったのか?今日はお前のプランの会議があるのは知ってるだろ?早く来いよ。お前がいないと話が進まないんだ。
「!?!?!?」
慌てて時計を確認すると月曜日の8時10分。出勤時間は8時30分。
「やべえ!絶対間に合わねえ…!」
困惑するサテラをよそにどうしよう、と頭を抱えていると、不意に天啓が降りてきた。
昨日サテラに魔法を習ったばかり。サテラは転移魔法で帰って、戻ってきた。ピンポイントで。即ち…
「おいサテラ。人間も魔法は使えるのか?」
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