第2話 親と子に出来た壁
最近、母さんと父さんが言い争いをしている…。
車の止め方だとか、 お酒を買い忘れてるとか…
何れも下らない理由だ、 だが言い争いは何時も激しくて俺の部屋まで聞こえてくる。
「もう辞めてくれ…言い争うのは」
皆んな俺のせいなんだ…。
俺がいけないんだ。 俺がしっかりしてないから…。 俺が居るから両親はイライラするんだ…俺は…、
いらない子だったんだ…。
毎日行われる言い争いが心を更に蝕む。
もう辛い…、 俺の居場所は何処にもないんだ。
父さんの帰りも最近遅い。 このままでは家族が崩壊するのも時間の問題なのかもしれない。
そんなある日の事…。
17時過ぎ、下から何かが割れる音がした。
「一体何の音だ?」
俺は部屋から出て、 階段を降り、 音が聞こえてきた一階へ向かった。
そこには、 蹲り、 涙を流す母さんの姿が…。
俺は母さんの姿を見て言葉を失った…、 何故なら母さんのこんな姿は初めて見たからだ。
俺は重たい口をゆっくりと開いた…。
「…母さんどうしたの?」
何年振りだろうか、 自分から母さんに声を掛けたのは…。
俺の声に気付き、 涙は止まった様だが返事はない。
俺はもう一度、 重い口を開き、 母さんに声を掛けてみた…。
「…何かあったの?、 俺に何か出来る事はない?」
無反応だった母さんが、 二回目の俺の声に反応した。
そして母さんは俺に言った。
「上に行ってなさい」
母さんの言葉は、 何処か冷たくよそよそしかった…、 そして、 その母の言葉は、 俺の心を貫いた。
俺は、 やっぱりいらないんだ、 この家族にとって俺は不要な存在なんだ…。
情緒不安定な俺は、 一度マイナス思考になると歯止めが効かない…。 その上どうしようも無い俺は怒りにも似た…、 そして何処不安な気持ちに苛まれる。
なんだこの感情は?。
母さんの冷たさに怒っているのか?、 無力で情け無い自分に怒っているのか?。それとも…
相手にされなくて悲しいのか…。 だが、 自ら望んでこの環境を作ったんだ…でも…でも!
矛先の定まらない気持ちは抑えられず、 体を微かに震わし、 唇を強く噛んだ。
そして耐えきれずに俺は数年振りに声を荒げた。
今まで眠っていた感情が突然溢れ出した!。
「母さん…、 俺に出来る事は何もないって言いたいの?、 俺は不要な存在だって言いたいの?!」
「そこまで言ってないでしょ!、 怒鳴らないで!」
「母さん…」
俺は数年振りに母さんに怒鳴られた…。
母さんも怒鳴ってるじゃないか…。 なんだよ…
なんだよなんだよなんだよなんだよなんだよ!。
錯乱する俺…。 そんな俺に気づいたのか、 母さんは俺の腕を引っ張り二階に連れて行こうとする…。
「貴方は上に行ってなさい、 大丈夫だから!」
まただ、 俺は役に立たないんだ…、 だから母さんは俺を二階に…。
「大丈夫よ!、 大丈夫だから上に…」
うるさい…
「上に行って…」
「うるさい!」
俺は母さんの腕を振り払い、 声を荒げた!。
「お願い…お願いだから上に…」
母さんは俺の前で泣き崩れた。
俺が泣かしたのか?。 もう訳が分からないよ…。
頭が追いつかない、 溢れ出る感情に脳が処理しきれない…。
「うああああああああああああ!」
今の俺には、 叫ぶ事でしか感情を表せなかった。
治らない熱を握り拳に込め、 歯を食いしばった。
思考回路が鈍ってきた、 感情に身も心も支配されそうだ…
このままだと何をしだすか分からない…。
ふと母さんを見た…
すると母さんは俺に怯えていた。
まるで俺が母さんを気づつけたみたいじゃないか!
そんなつもりは無かったのに!
俺は居ても立っても居られなかった。
消えてしまいたい…
そして俺は無心で玄関まで走った!
「まって迅!」
俺は母さんの言葉を無心して扉を開けた…
靴も履かずに
何の宛もなく
俺は無心で走った…
「もう…この世から消えて無くなりたい。 俺の存在そのものを消したい…」
硬いアスファルトを、 素足で蹴りつける…
周りから見たら、 ただの変人だ。
だが周りなんて何も見えない…
他人の目線も、 景色も…
周りが何も見えない状態の俺は気づかなかった…
俺が今から渡る横断歩道の信号が赤だと…
そして、 トラックが近づいている事も…
俺は何も知らずに息良いよく飛び出した!
プオオオン!!!
急に鳴り響いた大きな音に、 俺は気づいた
そして音のする方に振り向いた!
視界が眩しい光で一杯になった。
急な出来事に頭が理解出来ない…
そうか…、 俺、 死ぬのか…
ドン!!!
俺はトラックに跳ね飛ばされた!
下らない人生だったな…
地面に激しく打ち付けられた迅は、 そのまま意識を失った…
打ち所が悪く、 迅は、 23歳の若さで亡くなった…。
異世界サバイバル! 〜ここでなら見つけられる気がする、生きる意味を!〜 @sin1206so
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