異世界サバイバル! 〜ここでなら見つけられる気がする、生きる意味を!〜

@sin1206so

第1話 孤独

俺はゆっくりと重い目蓋を開く…。


「何時だ…15時か…」


俺は深く溜息を吐く…。


「またこんな時間か」


毎日眠れずに深夜4時までスマホのRPGゲームをしたりスマホで過去作品のアニメを見たりしていた。 図に書いた様な駄目人間だ。 本当はこんな生活は駄目だと心の何処かで分かっている…。


「仕事を探そう、 ハードルが高いし…先ずはアルバイトから…」


だが俺には、 アルバイトでもハードルが高すぎた…。


スマホで求人サイトを見て回る…。 だが、 いつも電話の所で躓いてしまう…。


「とりあえず候補に入れるか…」


人付き合いが苦手な俺は電話越しでも緊張してしまう。


候補の欄がどんどん埋まっていく…。 


16時半過ぎ、 家の外から車の音が聞こえてきた。


「この時間は母さんか…」


俺の養親は共働きだ。 母さんは介護の仕事で父さんはゴミ収集の仕事だ、 二人とも若くはない…。 疲れ切った養親の顔を見る度に、 心が痛くなる…。


普段酒を飲まない母さんが最近お酒を飲み始めた、 父さんも飲む量が増えたか?。


そして、 俺を見る度に何も言わなくなった…。


俺は母さんとも父さんにも見られたく無かった、 こんな無様なすがた…。


二人が寝静まった後、 俺は二階に降りて冷えた飯を食い、 シャワーを浴びた。


そして俺は今日も眠れず、 スマホゲームをしていた…。


俺は駄目人間だ…


「生きている意味もない」


こんな時、 兄が生きていたら何と言うだろうか…




兄の名は葛木 海斗(かつらぎ かいと)


俺が8歳で兄が10歳の頃の夏休み、 兄に悲劇が起きた…。 


その年の夏はいまいち温度が上がらなかった、 その為、 セミの出現も遅く、 海水浴場も空いていた。 


そして、 その夏は別の話題でも有名だった…


少女5人、 少年3人を無差別で殺害した連続殺人鬼


大島 雄大(おおしま ゆうだい)


彼が処刑された事だ。


ニュースで見た雄大の顔は、 一度見たら忘れない。 額に大きな傷、 狂気に満ちた鋭い目。 多くの国民が彼を忘れないだろう…。





そんな夏でも俺達兄弟は元気だった。


その頃住んでいた所は、 森に囲まれた緑豊かな場所で綺麗な川が有名だ、 珍しい生き物も沢山いた、 その為、 俺達兄弟は川に夢中だった。


毎年夏は川が遊び場で、 毎日遊んだ。


この夏も例外ではなかった…。 多少の寒さなんてへっちゃらだ!、 そう兄弟で笑って見せた。




その夏のある日の事、 小雨がパラパラと降っていた。


だが、 遊び盛りな兄は俺を川に誘った。


「多少の悪天候でも大丈夫だって!、 川に行こうぜ!」


兄はこれぐらい大丈夫だと言い笑った。


俺も兄が言うなら大丈夫だと思ってしまった…。 


だが、 これが悲劇を招いてしまった。


雨の日は川で遊んでは駄目だと、 何時も母さんに言われていた俺達兄弟は、 反対される事は分かっていた為、 両親にバレない様に水着を服の下に着て、 そっと家を飛び出した。


俺達は川を知り尽くしている気になっていた。


川に着いた俺達は、 川辺の石原に服を脱ぎ捨てた。 そして川に入る。


いつものやり方だ。


兄が先に水に入り、 俺に向かって得意気に言った。


「川の水が冷たく少々肌寒いが最初だけだ…、 泳いでいたら体が徐々に暖かくなる筈だから大丈夫!」


俺はゆっくりと水に入った。 俺なんかよりも賢い兄。 兄の言う言葉は何でも当たった。


俺達はしばらく泳いだ。


だが、 今日は一向に暖まらない。 それどころか寒さが増してくる…。


兄は俺に言った。


「おかしいな…、 今日はもう帰るか?。 天気も悪くなったような…」


いつも強気な兄、 だが珍しく弱気だった。


だが、 俺は泳ぎ足りなかった。 兄が遊び盛りな様に、 俺も遊び盛りだった。


「まだ泳ぎたいよ!」


雨が徐々に激しくなってきた…。


「迅…やっぱり帰ろう!」


「大丈夫だって言ったじゃん!。 もうちょっと!、 兄貴が誘ったんだよ!」


俺は兄の言葉を無視して泳ぎ続けた…。


兄は俺を置いては帰れ無れず、 冷たい川の中を二人で泳ぎ続けた。


雨の激しさは急激に強くなった、 肌に当たると痛いぐらいだ…


これは危険だと幼い俺でも分かった。


「兄貴、 帰るよ…」


「よし、 早く帰るぞ!」


沖に向かおうと思った…


そんな時、最悪の事態が起きた!


凄まじい音と共に、 目の前に激しい水流が…!


鉄砲水だ!


雨の影響で、 堰き止めていた物が崩れ、 水が一気に押し流されて来たのだ!


「逃げろ迅!」


だが水の勢いに間に合わない!。 


二人はあっと言う間に水流に呑みこまれた!。


激しい水の勢いに二人は為す術が無く…


兄が必死で俺の手を握ろうとする…、 だが兄の手は虚しくも俺の手には届かない!。


俺達は激しい水の中でもがくが水面に出れない。


「もう駄目だ…」


激しい水流の中で、 俺はとうとう気を失ってしまった…。





目が覚めると俺は病院の天井を眺めていた…


生きている…、 だがまるで死体だ、 体が全く動かない…


だが耳だけはしっかりと聞こえる。


母の泣く声、 そして父の涙を堪えながら母を励ます声…


そして俺は聞きたく無かった…。


「兄が見つからない」





しばらく経っても兄が見つかる事は無かった…。 そして捜査期限も終わった…


兄、 葛木 海斗は…


死んだ。





「俺のせいだ…俺が…俺が…、 俺が殺したんだ!」


幼い俺の心には、 余りにも過酷な現実。


この出来事はニュースに取り上げられた。 そして地域でも学校でも話題になった…


皆んな言葉に出さなかったが、 視線、 態度、 その全てに違和感を感じた。


そして、 兄と泳いでいた近所の川には遊泳禁止の看板が建てられた…


その看板を見るたびに…俺は…


自分が許せなくなる…っ!




それから俺の心は、 閉ざされた…


晴れる事の無い闇の中に…。


母さんと父さんと喋らなくなり、 学校でも友達と喋らずに距離を置いてしまった。


気にした両親は引っ越しを試みる。

だが、 友達は当然の様に出来なかった。 そもそも誰とも喋る気になれなかった。 そして孤立は歳を重ねる度に増した。


進学すると陰キャだの根暗だの言われ、 罵倒された…。


そして学校を休むと母さんが泣いていた…、 独りでこっそりと…


だから俺は、 必死に耐えた。


文化祭だって参加した


嫌がらせにも耐えた


母さんを泣かせたくないから…




俺は無事に大学に上がり、 そして卒業した…


だが、 俺の心を更なる暗闇へと堕ちていた。 限界を既に通り越していた。 まるで、 空気が入り過ぎた風船だ…、 誰かに突かれたら破裂しそうだ。


大学を卒業した俺は、 ある企業に就職した、 だが人との間に壁を作ってしまい、 全く馴染めない。


そして周りは俺を嫌い、 遠ざかった…。


ここでも陰口か…




ある日、 上司に捕まっては説教された…


「お前が社内の空気を乱している!」



…もう耐えれない


もう嫌だ!!


とうとう、 溜まりに溜まった物が解放された!


「だったら辞めてやるよ!」





俺は会社を辞め、 家に引き籠った…、 二階の自分の部屋に…


締め切ったカーテン、 殷殷滅々とした薄暗い部屋


人と接する事のない世界で一人


そう…俺は孤独だ。


俺は、 これでいいんだ…これで…っ!












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