新年だったらほど近い。

 12/30 11:25


 僕達の町はまあ田舎である。

 あるのはでっかい山と、山を下って平地を車で数時間で辿り着く日本海、それと山につきものの湧き出す温泉。

 夏はまあ暑い、暑いが他県の人曰く知れていて。それが結局冬になると暑さの代わりだと言わんばかりに寒く容赦ない雪も降る。

 なのでまあ子供の頃から雪遊びをするし、雪に触れている時間が増えればバリエーションが増えていく。

 雪玉を投げつけ合い、雪の塊を二つのっけて雪だるまを作り、雪だるまを巨大にするようにしてからは応用でかまくらのために雪を掘り、外人がスキー兼温泉の観光に来るようになった頃は雪だるまは派手に大きく三段積みへ。

 体育の授業でスキーを習い、暇を見て裏山から滑りスノーボードにも手を出した、けど僕はスピード感に魅かれて結局スキーに戻った。

 高校生でも三年間スキーを続け、日本一にはなれなかったけどまあそこそこ成績が良かったのだ。おかげで大学にも進学できて。結果、初めて僕は産まれた県を離れてこの春から東京に向かうことになる。

「……東京、まだこえーんだよなあ……」

 推薦が決まってから何とはなしに今までのイメージにしかない東京のイメージを固めるようにネットを使い自分の行く所を調べていた。

 これから住む街や治安の悪い場所、渋谷や原宿という有名な場所も今は現地に行かなくても様子だけは掴める。インターネットもSNSもスゲエな、と思っていると家のチャイムの鳴る音がした。

「はーい?」

 大声でいることを伝え、またパソコンに向かう。

「うっわ、なにこれ……東京都民大晦日暴れてんじゃん……田舎だけじゃねえの」

 車をひっくり返す画像にまたも独り言が漏れる。そこに被せるようにチャイムがまた鳴った。

「……あー」

 時計を見る。11時25分。

 約束の時間の五分前であることに気付きウェアの上着を引っ掴んで玄関へ向かう。

「……いいよ、どうぞ入ってー」

 少し大声を出しながら玄関の扉を開けるとそこには幼馴染で恋人がいた。

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