004 黒猫との出会い ~04~

涼雅は飛び出したカイを追いかけるのに必死だった。見上げれば夜にも関わらず、神々しく光る白い龍はこちらを睨み続けていた。


「カイさっき、逃げてきたって言ってたけど、あの白の龍に追われてたの?」

「そう!たくさんの魔獣が襲われて、獅子種も襲われて、色々あって逃げてきた!今はとにかく着いてきて!」


カイの先導の元、涼雅は噴水がある大きな公園に辿り着いた。カイは公園の広場まで走っていくが、涼雅は公園入口で息を切らす。


「ウガッチ!何してるの!?早く!」

「ちょっと待て、息が」

「ほぉ、それがお前の契約者か」


涼雅の元に白い龍がゆっくりと寄ってきた。近づいてきたことで、その大きさに驚愕する。長い胴体をとぐろの様に巻いているおり、最大の大きさは分からないが、それでも5メートル以上はあった。


「ウガッチに近づくな!ライオンハンド!」

カイは涼雅に近づく龍に向かって猫の手を伸ばす。

「何だ?その力の無い魔法は」


龍は大きく鼻息を吹き、カイの魔法を消してしまう。

「人魔結晶石を契約に使ったのであろう?それでは勝てまい」

「くそぉ……」


「人間の世界まで逃げたのはよかったが、これで終わりだ。最後の獅子種よ」

「さ、さいごって!?」

「消えろ……」


カイの問いかけを無視し、龍は大きく息を吸い込む。涼雅は息を切らしながらもカイの元に行き、カイを抱え込む。

「ホワイトブレス!!」


掛け声とともに龍の口から白い炎が吐き出される。涼雅は咄嗟に行動した。

「ライオンハンド!!」


涼雅の目の前にカイが出していた猫の手は違い、黒色の大きなライオンの手が伸びた。白い炎を防ぐ様に黒いライオンの手がぶつかり合う。

「ナイスだよ!ウガッチ!」


カイはそう言うと、身を捩り、涼雅のすぐ下に着地した。

「初めての魔法だけど、獅子種の応用技をやってもらうよ!最強とまで言われた所以ゆえんの技を!」


「それは、どうしたらいいの?」

「ライオンハンドは魔法の中を操作出来るんだけど、白い炎の中にコアがあるからそれを掴んで!」


カイの相変わらずの説明下手に涼雅は、はぁ、と一息つき、カイの説明を自分の中で解釈する。

「コアっていうのが分からないけど、あの中を探ればいいんだね」

「白い炎はこっちで何とかする!」


そう言うと、カイは再び猫の手を伸ばす。それは白い炎に向けてではなく、空に向かって伸ばし、グッと掴む動作をした。

「魔力変換!変換するものは壁!」


伸ばした猫の手の先で岩壁が作り上げられ、そのまま岩壁が降ってくる。それはサッカーゴールほどの大きさで涼雅とカイを守るには十分なサイズであった。

「うわ、無茶するなぁ」

「ウガッチは早くコアを掴んで!これもそんなに持たないから!」


「分かった。やってみる。」

降ってきた岩壁は白い炎を防いでいるが、涼雅から出ているライオンの手は透過していた。


涼雅は目を閉じ、ライオンの手の操作に集中する。行きたい方向を念じるとライオンの手は、白い炎と同調するように性質を変えていき、進行していく。


「コアってどんな感じなの!?」

「塊みたいなの!炎の中にあるから!」

「えぇい、鬱陶しい!」


白い炎の威力が上がるのを感じ、涼雅は塊を探る。そして、ライオンの手が龍の口元に到達する辺りで、硬い何かを感じ取った。

「もしかして、これかな?」

「それ掴んで!」


ライオンの手を掴むように念じると、少しの抵抗感はあったが、ライオンの手はそれを掴んだ。その瞬間、吐き出していた炎から弾かれ、龍は一気に後退した。


「まさか、コアまで到達するとは……」

「掴んだらどうしたらいいの!?」


呻く龍にカイはニヤリとし、涼雅に言い放つ。

「跳ね返すことを念じて!」


涼雅は跳ね返すことを念じると、岩壁とぶつかり合っていた白い炎は、軌道を反転し、飛び散った。その炎は龍を包んでいく。


「ぐぉぉぉ」

白い炎は龍が見えなくなる程までに大きくなった。次第に白い炎は消えていき、龍の姿が現れる。所々に火傷のような後が見える。


「やったか!?」

「カイ、それやめて」


死亡フラグだから、と言おうとところで、龍が話す。

「そろそろタイムリミットのようだ。獅子種よ、次は必ずその命を頂く」


そう言うと、龍は透過していき、最終的には消えてしまった。

「助かったのかな」


その場で座り込む涼雅に、カイは尻尾を振りながら喜ぶ。

「ウガッチやるじゃん!すぐに応用技が出来るなんて!」

「なんとかなったね」

「これならもっとすごいことが、って、ウガッチ?」


涼雅は座り込んだと同時に仰向けで倒れた。

「あれ、体が動かない」

「魔力切れの代償じゃないかな?最初は魔力なんて全然無いからね」

「あぁ」

そうなんだ、と言おうとしたところで涼雅の意識は途絶えた。

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