第2話 俺氏、青春始めました

 これはどういう状況か。正直私にも分からない。


 俺は今まで人に見せなかった一面を全面☆解放した。だからか、何か思考までちょっと今までの知的な感じとは変わった気がする。

 しかし、今俺はそれ以上の問題に直面している。


 日は沈みかけ、黄昏時とでも呼ぶべき時間帯。俺は校舎裏に呼び出されていた。まあ俺はイケメンだし、性格もいい感じで貫いてたから告白を受けるのはよくあることだが、こんな状況は初めてだ。

 何を隠そう、目の前では、可愛い女子二人が戦争を繰り広げているのである。


「あなたねえ、奏斗さんは品行方正、そして貧乳なドS美女が好みなのよ」

「私は元気で活発で、そして巨乳なドM美少女が好みって聞きましたけど!」


 イケメンと自負している俺は中々だと思うが、自分で品行方正とか仰っていらっしゃる生徒会長には敵う気がしない。まだ遠回しに自分をドMと言っている後輩女子の方がマシなまである。

 あと、俺はドS好きでもドM好きでもない。れっきとしたノーマルな性癖の持ち主である。


「後輩のくせに……」

「先輩のくせに……」


 先輩のくせにって別良くない? ずっと思ってたんだけどいちいちセリフの内容真逆にする必要あるのかな。

 と、心の内を曝け出せる唯一の友人に本当の姿で接した結果変人と言われた俺がツッコミに回ってしまうほど変わった女子たち。


 事の発端は今日の朝まで遡る。


………………

…………

……


 もう理想を演じるのをやめた俺は、友達のしいきょうすけと共に変人を丸出しにしながら登校していた。

 もう俺がモテるのは終わったかなー、理想やめたしなー、と思っていたのだが、どうやらそうではなかったらしい。

 なんと、なんとである。


「靴箱になんか入ってる。何だこ————ハッ!」


 名前が書かれていない、放課後校舎裏に来てと丸文字で記されたそれは、間違いなくラブレターである。

 何度告られようとも、このスマホの時代、今まで直接告られたことはなかった。

 はい、勝ちゲー。思わず靴箱の前で踊りそうになるのを我慢して、放課後を待ち侘びていた。


 そして昼休み。外でバスケをしようと靴箱を開けたその時である。


「またラブレターーーーーーーーーーー!」


 つい叫んでしまった。

 そこには一言一句違わず、しかしきりっとした文字で、放課後校舎裏に来てと記されていた。何で朝ではない、と思ったが、それはそれとして。ふっ、勝ったな。

 しかし、俺は一つ、重大な問題が発生することを忘れていた。


 それはつまり————


………………

…………

……


 ————俺に告白する少女二人が、鉢合わせることである。


 と、回想シーンに突入したせいでだいぶ二人の会話が進んでしまったようだ。


「奏斗さんは絶対に貧乳が好きよ。顔に書いているもの」

「いいえ、奏斗先輩は私の爆乳をチラチラ見ています」


 おっぱい戦争でいがみ合う二人は、一つの結論に達したらしい。

 

「「あなたはどっちが好きなんですか!」」


 俺かい。とツッコみそうになったが、その結論は間違っていない。

 二人が話してるのは俺のおっぱいの趣味であって、それは俺の決めるべき問題である。


 しかし、こうなると困る。

 何せ俺は貧乳派でも巨乳派でもない。もちろん好きな人のおっぱいが好きとか気障なことは言わない。

 俺ははっきり言って————揉み心地のいい美乳派である!(ドヤ顔)

 という訳で、俺はこの二人にこう告げるほかない。


「見た目だけでは判断しかねる。おっぱいを揉ませてくれないか?」

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