第1話 俺はやっと気づいた
五歳の頃から、イケメンと言われていた記憶がある。
近所のおばちゃんから始まり、小学一年の頃には結婚の約束をしてくれとまで言われた。中学生にもなれば告白の嵐だ。
周りの人間は皆、俺に羨望の眼差しを向けた。あるいは嫉妬し、根も葉もないような噂を流されもした。
そうしてこの青春から、学校という舞台から追い出されそうになって転校までしたこともあった。
だから、そんな経験をして、俺は歪んでしまったのかもしれない。
俺は周りの人間の求めるまま、求められるとおりの人間に、『理想』にならなければならない。
と、そう無意識下に思うようになっていた。
自分がどんな人間だったかなんてとっくに忘れたし、あるいは今求められているこれこそが自分なのではないかと思い始めている。
しかし、確実に言えるのは、俺は羨ましい人間なんかじゃない。
別に自分が可哀そうだとかそんなことを言うつもりはないが、少なくとも生まれ変わるとして俺が俺に生まれたいこと言うと、そうではない。
因みに、俺は今教室にいる。全員の視線を浴びている。
「お前、大丈夫か?」
友人のそんな何気ない一言で、凍り付いていた空気は突如熱を帯び、誰かのぷっと噴き出す声を皮切りに爆笑を生んだ。
「お前ただの完璧超人だと思ってたら、そんな面白かったのな」
「何か意外だわ、明日見くんが俺らと同じような悩み持ってたって」
「意外と人間っぽいって言うか、親近感湧いてきたかも」
たくさんの声が耳に届いて。今までにない距離で言葉が聞こえたように感じられて。嬉しくてたまらなくて。
そうしてやっと、当たり前のことに気づけた。
俺は、皆の求めるままの人間にならなければならないのではない。俺は俺の思うままに、素で振舞えばいい。
俺は、今まで傲慢だったのだろう。
自分が理想として求められているなんて。そんなの、一人お人間に背負えるものじゃないのに、そう勝手に思い込んでいた。
自分を嫌う人間は、必ずいるのだ。全員に好かれようなんて、そんなことは元からできるわけがない。
ならば。
俺は、
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