九話

 金曜日になり、俺はとリツは管理棟へと向かうことにした。

 管理棟に入るために必要なカードキーは、リツの手帳に書いてあったように、管理棟前の扉で入手することが出来た。

 カードキーを無事に用意する事が出来たので、やはり入る事を推奨しているかのように思える。


 管理棟へと続く扉の前に来ると、情報通り人影も監視カメラもなかった。


「ここまでは大丈夫みたいね」


「そうだな、先を急ごう」


 俺とリツは、無事を確認すると先を急ぐことにする。

 ここまでは大丈夫でも、いつ管理棟ミーティングから人が戻って来るか分からないだ。


 俺は、カードキーを使って扉を開ける。

 扉に入った先にも特に何もなく、やはり監視はされていないように思えた。


「誰もいないみたいだな」


「そうみたいね。このまま先に進みましょう」


 扉の先には、一本道の通路があり、所々に扉があるようだった。

 その扉一つ一つに、部屋の名前が書いてあるので、初めての人にも分かりやすい親切設計になっている。

 まるで、目的地に行こうとしている俺たちが迷うことなくスムーズに行けるようにしているみたいに......。


 暫く廊下を歩き続けていると、目的地である管理室にたどり着いた。


「どうやらここみたいね」


「そうだな」


 俺とリツは、内部の様子を慎重に伺いながら、誰もいない事を確認して中へと入る。

 室内には、よく分からない機器が置かれていたり、壁にはモニターがたくさん設置してあった。

 そして、部屋の中央には目的の物であるカプセル型の機械がある。


「ここまでは情報通りだけど、ここから先は何が起こるか分からないわ」


「これまで以上に慎重に行くか」


 俺とリツは、ここまでの道のり以上に気を引き締めた。

 この先は何が起こっておかしくなく、また記憶が消される危険すらある場所だ。


「ねぇタイチ、カプセルに入れば良いみたいだけど、どうしたら良いのかな」


「う〜ん、この際二人一緒に入ってみるとか?」


「それで行ってみますか!」


 あまり広くないカプセル型の機械のフタを開け、俺とリツの二人で一緒に入る。

 すると、空気の噴出音が聞こえてカプセル型の機械のフタが閉まった。

 次第に機械の中が眩しくなり始め、目を開けていられないくらいの光量を出し始める。


「眩しっ」


 ◇


 暫くすると、目が開けられないほどの光は収まり、周囲が見えるようになる。

 そこは、眩しくなる前と変わらずにカプセル型機械の中だった。


「ねぇ、何が起きたの?」


 リツがそう言うと、空気の噴出音が聞こえて機械のフタが開く。

 俺とリツはフタが開いたことで、衝撃を受けることになる。


「「えっ」」


 俺とリツは、互いにフリーズしているようだ。

 機械の中は暗くて分からなかったが、フタが開くことで目の前が見えるようになる。

 まず始めに視界に入ったのが、人型の機械だったのだ。


「タイチなの?」


「あぁ、リツのその反応を見るとどうやら俺を同じみたいだな」


 どうやら俺たち二人は、宇宙船プロトタイプから他の場所にワープしたのではないらしい。

 移動するにはしたけれど、機械を遠隔操作しているような状況だと思う。

 詳しい事は分からないが、宇宙船プロトタイプでは実用可能な技術だと言われている。


「まさかこうなるとはね」


「そうだな。機械の遠隔操作なんて初めての体験だ」


 そう言って、俺は周囲の確認を行う。

 室内を見た所、管理棟の管理室ではない場所にらしい。

 この室内は、壁にモニターがたくさんあり、映像を映しているようだった。

 よく見るとそこは、宇宙船プロトタイプの船内だ。


 他の場所にも目を向けると、俺とリツと同型機と思われる機械がたくさん置かれていた。

 そして、部屋の端には壊れた人型の機械が二機ほど置かれている。


「ねぇ、タイチ。この人形の機械をよく見てよ」


 リツは、壊れている人型の機械の方にいたので、近付く。


「どうしたんだリツ」


「この機械に表示されている文字がタイチに表示されている物と同じなのよ」


「なんだって!」


 俺は、リツに言われた人型の機械を良く見た。

 確かに書いてあるが、俺の視界からだと自分の体に書いている文字を見る事は出来ない。

 そこで、壊れているもう一機の方を見ると、リツに書かれている物と一致する。


「仮定だが、俺たちが前回ここに来た証拠かもしれない」


「同じって辺りそうかもしれないわね」


 俺とリツは、手帳に書かれていた通りに、一度ここに来たことがあるらしい。

 そして、何かが起こり失敗した。


「外の世界は楽しみたいけど、慎重に行こう」


「そうだね」


 そう言って、更に部屋の様子を見たが特に変わった物はなかった。

 俺とリツは外へと続く扉の方に行き、その扉を開ける。

 扉の先には誰もいなく、そこには左右へと続く廊下がある。


「タイチならこういう時ってどこに行く?」


「俺なら迷わずに右だな」


「そうよね......」


 リツはう〜ん、と考えている。


「私もこの場合って右に行くのよね。だけど、私たちは一度失敗してるから右は危険かもしれないね」


「それなら左に行くか!」


 俺とリツ、前回右に行き失敗した可能を考えて、廊下を左へと進む。

 廊下には、扉もなくただただまっすぐに続いていた。


 暫く廊下を進んでいると、行き止まりになり、そこには扉があった。


「とりあえず入ってみようよ!」


「そうだな。どの道、入らざるを得ないだろう」


 俺とリツは、警戒しながらも扉を開ける。

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