八話
翌朝、俺とリツはそれぞれの仕事へと向かう。
昨日の話を続けたかったけど、仕事をしなければ怪しまれてしまうと思ったからだ。
俺とリツは、それぞれ仕事中に考えて後で話をまとようと決めた。
俺はいつも通り、最近担当している家畜の世話をしに。
リツは、ゴミの回収作業をするため仕事場はへ。
モォ〜
家畜の飼育スペースに着くと、牛が元気よく鳴いていた。
乳搾りから作業を始め、餌と水を家畜たちに与えて行く。
作業中は、昨日の話の事をよく考えてどうしたら良いのか解決策を見つけようとしてみる。
解決策を見つけようと、思考を巡らせてみるが、良い方法はなかった。
実際に見てもないものを何とかしようとしても、無理があるらしい。
それでも、実行日だけは何とかなると思った。
金曜日であれば、管理棟ミーティングがあるらしいから安全に侵入出来るだろう。
後のことは、帰ってからリツとの話し合いに期待するしかない。
色々と考えたが、あまり考えはまとまらなかった。
一旦考えるのを辞めて、仕事に集中することにする。
その後、作業もひと段落したので仕事を終えて家へと帰る。
◇
「ただいま」
「おかえりタイチ」
家に帰ると、今日もリツの方が早かったらしく、出迎えてくれた。
エプラン姿で出迎えくれたので、また料理を作ってくれたみたいだ。
「ご飯食べながら昨日の事話しましょ」
「そうするか」
今日の昼ご飯は、いつものネズミ肉の上に卵を乗せて焼いたものだった。
肉の風味に加えて、新鮮な卵のふわふわ食感がたまらなく美味しい。
そんな味に満足し頬っぺたが落ちそうになっていると、リツが話し始めた。
「いつ潜入するかは問題ないわ」
「金曜日だろ? 管理棟ミーティングがあるって手帳に書いてあったぞ」
俺は、昨日見たリツの手帳を思い出す。
俺はとリツが管理棟に入ったのは、どちらも金曜日だったのだ。
その理由は、先ほど言った通りで管理棟ミーティングがあるからだ。
「そう、金曜日。ただ、侵入することは出来たとしてもその後が問題なのよ」
「例のカプセル型の機械に入った後か」
金曜日の管理棟には、人影がなく監視カメラすら設置されていないらしい。
現に俺とリツは、管理棟に侵入することに成功し、目的地である管理室にたどり着いている。
俺の場合は記録がないので、出来たであろうという想像だが。
「仕事の間も色々と考えて見たけど、分からないことは分からないのよね」
「俺もだな。何がどうやらって感じだ」
「う〜ん。危険かもしれないけど、ここはぶっつけ本番するしかなさそうね」
俺が対策方法を考えられなかったように、リツも答えを見つけることが出来なかったようだ。
それも仕方ないだろう。
考えも答えが無いようなものを、どれだけ考えても分からない。
「出来る事と言えば、また記憶が消された時の事を考えてそっちの対策かな〜」
「具体的には?」
「手帳に書いてある事を別の場所にも記録するのよ。そうすれば、同じ事になっても安心よ」
「俺のサブメモリーにでも保存するか? これなら他の人には知られてないと思うぞ」
俺はそう言って、リツに左手首に巻いてあるリングを見せる。
このサブメモリーは、俺が自作した物で装飾品風のデザインをしていて、一目では何だか分かりにくいはずだ。
これならば、何かあった時でもデータの維持は出来るだろう。
「へぇ、手首に何かあるとは思ってたけど、そんな機能があったのね」
「撮影とかは出来ないけど、記録の保存だけなら出来るんだ。これを作るのには手間取ったよ」
元々は、メインメモリーが壊れた時にでも直ぐにデータを取り出せるように作ったものだ。
普段は、特に使い道もないのでデータのバックアップの保存などに活用をしている。
それに、このサブメモリーはネット環境にも繋がっておらず、俺の生体情報でしかログインする事が出来ない。
そう言った意味でも、安心出来るだろう。
「それなら、万が一記憶が消された時でも安心ね」
「あぁ、後は作戦を実行するだけだな」
「そうね。会話もひと段落したし、ご飯の続けを食べましょうか」
俺とリツは一旦会話を辞めて、食事に集中する事にした。
せっかくリツが作ってくれた料理が、冷えてしまっては勿体ないと思い、急いで食べ始めた。
他の場所には、美味しい食べ物はたくさんあるのだろうか。
このネズミ肉も悪くはないが、流石に同じ肉ばかりでは飽きてしまう。
地球と言う惑星があった頃は、多種多様な動植物が繁栄を遂げ、食料も豊富にあったらしい。
俺が新天地に行く方が出来れば、まだ見ぬ食材を食べてみたいと思った。
もちろんリツにも、美味しい食材を腹一杯になるくらい食べさせてやりたいな。
そんな事想像を膨らませていると、リツが大きな声で言った。
「あっ! カードキーどうしよう」
その後の話合いの結果、カードキーは金曜日までに何とか用意することにした。
これまでの事を考えると管理棟へと続く扉の前まで行けば、また入手出来る可能性は高い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます