第四章 七月その14
七月末。
学校での期末試験も終わり終業式が近付いていた。
「わへい君は数学成績いいですねー」
期末試験の結果が廊下に貼り出され、それを見ながら友利が呟く。
「数学は得意なんだよな…数学だけは」
僕の成績と言えば数学は学年十位以内には入るがそれ以外はイマイチだった。
「友利は文系得意なのな」
「いやぁ…たまたまです」
僕からすれば文系は大がつくほどに苦手で特に古文となると“古文?ナニソレオイシイノ?”くらいに苦手だった。
一方。
「黒崎ってすごいのな」
「僕はまぁ平均的だよ。数学はわへいに敵わず、古文は友利に敵わず」
でも全体的に勉強してるって凄いと思う。
「成績優秀。顔ヨシ。性格ヨシ。妹の面倒見ヨシ。シャチョサン、シャチョサン優良物件ダョ。モッタイナイョ。コンナイイ子イナイョ」
友利が怪しい(?)客引風に言う。
「確かに。お前が女の子だったら僕惚れてるかも」
「よせよ。照れるぞ」
「…男に言われて照れるなよ。野山先輩辺りが聞いたら喜んじゃうぞ」
「誰がBL妄想してはぁはぁ( ´Д`)してるって?」
後ろから野山先輩がぬっと出てきた。
「いや、そこまで言ってませんがね」
相変わらずのキャスケットを目深に被っている。
…暑くないのだろうか?
「ハナさん、伝達事項ですか?」
黒崎が聞く。
確かに、野山先輩が一年生の教室前まで来ているのは珍しいことだった。
「そ。今日一学期最後の部活だからな。カーリング場には行かないけど休み中のこと話すから遅れるなよ、出席しろよって部長からだ。他の一年坊にも伝えといてくれるか?」
「分かりました」
言いたいことだけ言うと、野山先輩は二年生の教室に戻っていく。
「夏休みも部活ってあるのか?」
黒崎に聞いてみる。剣道なら夏場も猛練習の日々だった。
カーリングってそういえば夏でもやるのだろうか?
「あるみたいだね。カーリング場は通年だし。それに」
「それに?」
「町の大会は八月から始まるんだよ。団体戦も。ミックスダブルスも。むしろ本格的にスタートするのが八月かな。抽選会の日程なんかはもう決まってるんじゃないか?」
そうか、いよいよ団体戦、ミックスダブルスの試合が始まるのだ。
僕にとっては初めての実戦となる。
ミックスダブルス。
リューリとまた練習しないと、と考える。
しかし躊躇う自分がいる。
そもそも連絡先を教わったけどまだ連絡を取ったことがない。
しかし、まだまだチームとしての練習は足りない。
夏休みに入るとリューリと会う機会も激減するだろう。
さて、どうしたものか、と僕は腕組みをする。
答えは、分かりきったことだった。
欲しいのは、理由。
それは自分でもよく分かっていた。
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